スカパー！生中継 Ch185 後05:50〜
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熱く燃えたFIFAワールドカップ南アフリカ大会が終了し、その熱狂が次はJリーグを襲う。改めてサッカーの楽しさを堪能した人たちに、身近にサッカーがある幸せを感じてもらう番となる。そして、J2の各クラブにとって、長い中断期間を経て昇格に向けて再び邁進するために、新たなスタートを切る大事な試合を迎える。「第二の開幕戦」と呼ぶべきこの試合は、様々な意味でサッカーに関わる全ての人にとって勝負の一戦となる。
中断前の16試合で挙げた勝点はわずか19。横浜FCにとって、ここまでの成績は全くの想定外だった。ここまで得点王を独走していた大黒将志を擁しても、勝ちきれない試合が続いた。そのチームが上向くきっかけを作ったのは第14節から出場したホベルト。彼の献身的な「チームを助けるために走り続けるプレー」が、岸野靖之監督が求めるサッカーの基盤を植え付け始めた。中断直前の3試合は、2勝1分という結果だけでなくその内容からも上昇の兆しを感じることができた。
そして、中断期間に入り、横浜FCは大きな変化に迫られることとなる。圧倒的な存在感を見せていた大黒の期限付き移籍が終了（Ｆ東京へ加入）し、シルビーニョもチームを去った。その代わりに、セレッソ大阪で活躍したカイオがアトレチコ・パラナエンセ(ブラジル)から（※注：7月16日の発表ではカイオ選手の登録が完了していないため、今節は出場不可）が、そして強化が求められていた左サイドバックに阿部巧がＦ東京から、それぞれ期限付き移籍で加入した。この選手の入れ替わりは、チームに大きな変化をもたらすことは間違いない。
大黒がいた時は、Jリーグレベルを超えた動き出しが相手DFラインに脅威を与えていたが、一方で引かれた時にはその持ち味は半減した。かたや、味方を使うプレー、味方から使われるプレーに持ち味のあるカイオは、大黒ほどの迫力はないかもしれないが、チームの攻撃に幅を与えることができる。そして、阿部が左サイドバックに定着すれば、高地系治を含めて攻撃的な選手の起用方法にも幅を持たせることができる。中断前の上昇カーブに、この新加入選手がフィットすれば、横浜FCに新たな勢いをつけることができる。まさに、「岸野横浜FC・ver.2」のお目見えとなるこの試合。「奇跡を起こしたい」（岸野監督）という言葉の出発点にするためにも、この柏戦の勝利は至上命題と言える。
一方の柏は、16試合で13勝3分。中断前を無敗で乗り切った。岸野監督が「穴がない」とため息をつくほど、調和の取れた完成度の高いサッカーを攻略するのは容易ではない。単に、ポゼッションがうまいだけではなくダブルボランチを中心とした守備は、攻撃の起点を簡単に作らせない。水野晃樹加入のニュースはあったが、この中断期間を経てもチームのベースはまったく変わらない。むしろ、中断前の完成度にさらに磨きを掛けているはずだ。そして、柏にとってもこの試合は大事。過去のJ2の歴史において終始、順風満帆で昇格したチームは稀であり、中盤から終盤に苦しい時期を迎えることがほとんどである。柏サポーターには2006年の昇格において苦労した経験が思い出されるに違いない。だからこそ、この試合でクオリティを落とさずに確実に勝利に結びつけることが、シーズンの戦いという意味で非常に重要となる。
「がっぷり四つでやっても、相手のほうが個人個人でも上だし、チームで戦う部分を高めないとだめ。選手の力が思いっきり出せるような統一感、戦略戦術でチーム力を高めて、相手の狙いをやらせないようにしないといけない」と指揮官が語るように、完成度の高い柏がゲームを支配する展開が予想される。穴がない柏を相手に、自ら穴を作ることは自殺行為となる。穴を作らずに、数少ないチャンスをいかに決められるか。まさにワールドカップで見たような緊張感のある試合になることは間違いない。久々の実戦となるだけに、集中力が勝敗を分ける大きな鍵となるだろう。
横浜FCにとっては、別の意味でも重要な試合となる。この中断期間に、横浜FCのホームゲームをボランティアで支える「ゲームスチュワード」のメンバーの訃報に接することとなった。この知らせを聞いた岸野監督は「これまで横浜FCの生き生きとした部分を、貴重な活動で支えてくれた。今度は、我々が勝利で返したいし、そのことを選手にもじっくり話したい」と力を込めた。サッカークラブの活動を支える貴重な活動への感謝を表すには勝利しかない。ぜひ、ニッパツ三ツ沢球技場で展開される、勝利への思いがつまった試合を見届けて欲しい。
以上
2010.07.16 Reported by 松尾真一郎
