仙台 0 - 0（PK 3 - 2）浦項 （18:00／ユアスタ／8,921人）
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前後半を終えて両チームに得点がなく、試合は規定によりPK戦へと突入。ワールドカップで日本全土を震えさせたあの「儀式」が目の前で展開されるとあって、スタンドはにわかに沸くことに。
とその前に、親善試合なので内容を深く振り返るのも野暮なことかもしれないが、90分間の戦いを振り返っておこう。
仙台も浦項も、共に4-4-2で始めた試合。動きの良さを見せたのは仙台だった。1トップに入った中島裕希が素早い動き出しで前線にてボールを引き出せば、立ち上がりから関口訓充が鋭いドリブル突破で相手DF2人の間を割ってペナルティーエリアに侵入。さらには速いテンポのパス回しと選手間の見事な連係によって奏でられる美しいカウンターなど、仙台のサポーターに多くの見せ場を提供した。
直前までのグアムキャンプで、フィジカルの再鍛錬とパススピードの向上を図っていた仙台。その成果が見られる前半だった。
しかし後半に入ると一転して、浦項がゲームを支配する。システムを4-1-2-3とでも言うべき形に組み替えてハーフタイム明けから試合に臨むと、浦項の持ち味であるショートパスでの崩しが機能し始める。仙台がキャンプ疲れからか、足が止まり球際で競り勝てなくなったことも影響し、浦項の波状攻撃は終始続くことに。
59分には、今季ACLのラウンド16で鹿島をアウェイで沈めるゴールを決めたジョアン モッタがゴール前で決定機を迎えるが、仙台のDF陣が何とか体を張ってシュートを阻止。76分にはショートコーナーからゴール前に入ってきたボールに、岡山一成がかつて仙台でゴールを重ねた光景を彷彿とさせる形で、絶好のタイミングで飛び込んできた。だがこちらのヘッドは枠をそれ、浦項も試合を決めるゴールを得ることができない。「あれを決めていれば僕がヒーローだったのに」と言う岡山の願い、叶わず。
こうして双方、中断中のミニキャンプで疲労していた体に鞭を打って、死力を尽くした戦いは、0-0のまま終了。冒頭の通り、本日のメインイベントとなったPK戦へと突入する。スタンドの何人かが持ち込んでいたのであろうブブゼラの音が、日本代表のPK戦の記憶をさらに呼び起こし、ユアスタの緊張感は最高潮に（ただブブゼラ、もし集団で吹かれてしまったら、試合に影響を及ぼすほどのノイズとなることは明らかであり、何より近隣に迷惑となることは間違いない）。
このPK戦で、仙台に1人のスターが誕生した。試合の後半から仙台のゴールマウスに立っていた桜井繁が、そのままPK戦でも大事な役目を務めることになったのだが、先攻の浦項、1人目のジョアン モッタのキックをいきなり触り、左ポストへと当てて外させる。
さらにドラマ（？）は続く。1-1で迎えた後攻仙台の2人目には関口が登場。ゴール右下を狙ったキックは浦項GKシン ファヨンがセーブするが、キックの前にGKが前に飛び出していたという主審の裁定で蹴り直しに。これを見て、センターサークルから、キャプテンマークを巻いた岡山がたまらず飛び出してくる（が、返す刀でイエローカードを受ける）。やり直しのPKを関口は冷静に決めた。
その後は両GKの美技が続く。浦項の3人目、ファン ジンソンの右下を突いたキックを、桜井は完全に読み切ってセーブ。仙台も4人目に登場の高橋義希が放ったキックをGKがはじいたことで枠に当たり外れるが、ここで決まらなければ仙台の勝利が決まるという浦項の5人目、パク ヒチョルの左下へのキックも桜井が完璧な反応で止めて試合終了。試合中に肩を負傷していた桜井だが、それを気にしてか忘れてか、仙台の選手たちが抱きついていく。
試合前に、この試合を定期交流戦とする調印もなされた日韓親善マッチ。記念すべき初回は、ホームの仙台が勝利した。
最後に、この試合の見せ場はPK戦だけにとどまらなかったことを記しておこう。
試合後、両チームの選手、スタッフがピッチを1周したのだが、大方の予想通り、その列はバックスタンドの仙台サポーターの前で止まる。スタンドから投げ込まれる、カラフルなミニサイズの野球バット。岡山が音頭を取って、久しぶりの「ユアスタ劇場」が始まる。聞けば浦項でも同じく劇場が行われているとあって、両チームの選手も違和感なく溶け込む。ズバー、ズバー、おっかやま。そしてゴールがなかったため試合中には歌われなかったシャンゼリゼ…楽しかった1日は、歌声と共に暮れていった。
以上
■再開後の仙台ホームゲーム初戦
7月24日（土）J1 第14節 仙台 vs 新潟（19:00KICK OFF/ユアスタ）
