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【J2:第17節 福岡 vs 大分】福岡側レポート:これぞ、バトル オブ 九州。チームと、チームに関わる全ての人の思いを結集させて福岡が勝利をもぎ取る。(10.06.14)

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6月13日(日) 2010 J2リーグ戦 第17節
福岡 2 - 1 大分 (16:03/レベスタ/10,706人)
得点者:5' 高松大樹(大分)、18' 中町公祐(福岡)、87' 大久保哲哉(福岡)
スカパー!再放送 Ch185 6/14(月)後01:30〜
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 繰り返す自らのミスでカウンター攻撃にさらされ、決められてもおかしくないシーンをいくつも作られた福岡。「全体的にリズムのないゲームだった」。篠田善之監督が振り返ったように、技術・戦術面から言えば課題が多い試合だった。しかし、それはサッカーのひとつの側面に過ぎず、それだけでサッカーの試合の価値が決定づけられるわけではない。「最後は勝ちたい気持ちの強い方が勝つ」。サッカー選手であれば誰もが口にするこの言葉こそ、サッカーの試合の価値を決める重大な要素だ。そしてこの日、福岡は勝利への執念を見せた。それは自らの誇りと意地をかけた「バトル オブ 九州」の名にふさわしい、そして、J1昇格に向けての強い気持ちを表わした試合だった。

 試合は厳しい立ち上がりだった。開始直後の5分に、内田昂輔がゴール前に送りこんだ右からのCKを高松大樹に鮮やかに頭で合わせられ、その後も大分のカウンター攻撃の前に何度もピンチにさらされた。高松、森島康仁の2トップの力も、チェ・ジョンファンの突破力も、そして大分がカウンター攻撃を狙ってくることも、全ては予想通り。しかし、そのどれにも対応できずに厳しい時間帯が続く。
 そんな流れを中町公祐が変える。18分、久藤清一がゴール前に送ったCKにスルスルとペナルティエリアへ入り込むと、DFとDFの間にできたスペースでドフリーでヘディング。ゴールネットを揺らす。右手でガッツポーズを作り、大きな声で吠える中町。その顔に浮かぶのは笑顔ではなく気迫あふれる表情。この試合にかける思いが伝わってくるゴールだった。

 そして後半、チャンスもあれば、ピンチもある一進一退の攻防の中、気迫あふれるプレーで仲間に勇気を与え続けたのが神山竜一だった。46分、2列目から飛び出してフリーになった井上裕大が放ったシュートを見事にセーブ。さらに64分には、再び井上が放った強烈なミドルシュートを指先だけで弾いてゴールを守った。
 その気迫に後押しされるように、途中交代の選手も続く。俊足を活かして長い距離を走ってボールを追いかける田中佑昌の姿はスタンドに大歓声を巻き起こし、久藤に代わってピッチに立った鈴木惇は、絶対に勝つという強い気持ちをプレーで表現する。そして、疲労がたまってくる時間帯にも拘わらず、誰もが随所で体を張ってゴールを守り、そして大分ゴールを目指した。

 87分のPKは、そんな思いが引き寄せたものだった。「どちらに蹴ろうか、めちゃくちゃ迷った」という大久保哲哉が選択したのは得意な左側。このPKにGK下川誠吾は反応したが、ボールは脇の下をすり抜けた。「いろんな人の思いだったり、勝ちたかったし、自分も点が取りたかったし。時間帯からみて、あれを決めるか決めないかで全然違うんでプレッシャーはかかりました。でも自分でとったPKだし、絶対に決めてやろうと思って蹴りました。相手はデータ的に自分が左に蹴ることは分かっていたと思うんですけれど、最後は気持ち」。全ての思いが結実したゴールだった。
 そして、最後の締めは神山竜一。時間は45分+3分。森島が放った完璧なシュートに誰もが目を覆ったが、鋭く右へ飛んでスーパーセーブ。その余韻が冷めやらないうちに、試合は2−1のまま試合終了のホイッスルを聞いた。

 戦っていたのは選手たちだけではない。ホーム側バックスタンドに陣取るサポーターを中心に、スタンド全体でチームをバックアップ。4年前に大分に喫した悔しい思い。おらが町のチームに対する誇り。そしてJ1に復帰したいという強い気持ち。彼らもまた12番目の選手として力の限りに戦っていた。この日の勝利は、まさに全ての力を結集してもぎ取ったものだった。
 これで福岡は5月から7戦負けなし。連勝を5に伸ばし、3位の千葉に勝点差2と迫る4位で前半戦を折り返した。4連敗という苦しい時期も経験したが、自分たちのスタイルを信じ抜くことで勢いを取り戻したチームは、目標である3位以内に向けて好位置に付けて中断期間へ入る。

 しかし、大久保哲哉は気を引き締めることを忘れない。「これから先に苦しい時期は絶対に来るし、このまま行くほど甘いものじゃない。まだまだ反省すべき点はあるので、乗っていけているところは維持しながら、地に足をつけて取り組んで行きたい」。
 福岡はまだ何も手にしていない。そして、今の順位は将来を保証するものでもない。最も大事なことは全てが終わったときに3位以内にいること。そして、福岡に関わる全ての人たちとともに笑顔でシーズンオフを迎えることだ。それを実現すべく、福岡のチャレンジは続く。

以上

2010.06.14 Reported by 中倉一志
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