6月4日(金) 国際親善試合
日本 0 - 2 コートジボワール (19:20/シオン/人)
得点者:13' オウンゴール(CIV)、80' コロ・トゥーレ(CIV)
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イングランド戦に引き続き、コートジボワール戦のピッチには阿部勇樹(浦和)が立っていた。ポジションこそアンカーではなかったが、遠藤保仁(G大阪)とボランチとしてコンビを組み、その遠藤とコンビを組んできた長谷部誠(VfLヴォルフスブルク)がトップ下に入る事となる。阿部の中盤での起用は守備面の改善を期待したものであり、その阿部を起用したヨーロッパでの2試合の意味は重い。したがって、試合を論じる前にそもそも論を述べておきたいと思う。
そもそも、岡田監督は守備の基本を前からのプレスに求めていた。そしてそれは攻撃における切り替えの速さを生み出す合理的な考えでもあった。より高い位置で相手からボールを奪い、高い位置から攻撃へと転じる。そうして作られた守備戦術は日本代表の武器となった。アジアの中では…。
日本のプレスが通用する範囲については、筆者も誤解していたことを率直に述べておく必要がある。アジア最終予選の戦いの中で、日本は世界に出ても通用するサッカーを構築してきたのではないのかとの手応えを感じていたのである。しかしそうした考えを軌道修正しなければならない事態に陥る。そのきっかけが、東アジア選手権での韓国戦だった。
相手が前からプレスに来てくれた場合、対戦国がどこであろうと日本のプレスはそれに十分に対抗しうる力を持っているものと信じていた。しかし、実際は韓国のプレスを前に日本代表はあわてふためき、最終ラインに追い詰められた末に縦へのロングボールに逃げざるを得ない状況となる。
これは非常に重たい出来事で、コンディションの悪さという逃げ道があるにせよ、課題を突きつけられた形となったのである。ポイントはプレスをかいくぐられ、プレスをかけられたという点である。そうした現実によって、それまでに作り上げてきた価値観を壊された日本代表が直面したのが、セルビア戦で受けた鋭いカウンターだった。
チーム作りの仕上げの段階に入ってから見せつけられた戦術的な力の差は、そのままチームの熟成において転機をもたらすこととなる。それが守備を安定させる事の必要性である。ワールドカップ本大会を前にしてヨーロッパで行われた2試合に関しては、チーム作りの終点にあるべきだった。「前からボールを取りに行く」という岡田監督のサッカーの原点に立ち返り、作り上げてきた戦術的な到達点を確認する意味合いを持つ試合になるはずだった。しかし国内でのセルビア、韓国との2連戦がそれを許さなかった。阿部の2試合連続の中盤での起用は、プレスを武器とする日本における守備面での安定感をもたらすために必要なものだったのである。
冒頭に記した通り、アンカーとしてイングランド戦に先発していた阿部は、2ボランチのシステムを採用したコートジボワール戦でも先発し遠藤とともにボランチのポジションでプレーした。この布陣に関しては、守備面で相手に合わせるという意識の表れで、コートジボワールのシステムチェンジにピッチ上で対応できるような手当として、阿部を先発させたものと思われる。もちろん、守備を安定させるための手を打つ事自体は、それはそれで大事な事である。しかし、それによって今まで作ってきたチームの形をこのタイミングで変更せざるを得ないのであれば、それは大きな出来事であろう。
日本代表にとっての大きな変更は、長谷部のトップ下での起用である。そもそも攻撃が重視されるトップ下に、攻撃的な特性を発揮できる選手はいるのである。しかし、そうした選手の攻撃面での良さを採用するよりもまず、岡田監督は守備面の安定を優先させたのである。
このタイミングでそうした新しい形に挑戦せざるを得なかったのは、最終予選の場で高いレベルのサッカーを経験できなかったからであろう。また、アジア杯で敗退したことでコンフェデレーションズカップに出場できなかったことも世界を知ることができなかった一因となる。いずれにしても、このタイミングで世界のトップランクのチームの実力を知ることになったのである。そしてそれが本大会でなかった事が唯一の救いだとも言える。
という事で試合に入ろう。
コートジボワールがトップコンディションだったのかというと、懐疑的にならざるを得ない。ただ、日本代表も高地で追い込んできた影響が出たのか、走りの量と質の両面で通常の代表のレベルからは見劣りしていたのは間違いない。その結果、パスコースは限定され、攻撃のスピードが遅れる。日本代表が1本だけでもパスの選択を誤り、横、もしくは後ろに出しただけで、コートジボワールは守備ブロックを形成して日本を待ち構えるのである。
攻撃に関してはトップの岡崎慎司(清水)にしても、トップ下の長谷部誠にしても、ほとんどボールを引き出す事ができなかった。大久保はサイドを使えていないとしきりに訴えるが、全般的に日本代表に縦への推進力は見られなかった。いずれにしても日本代表は試合を作ることができなかった。テンポアップさせる事ができる選手がピッチ上にいなかったのである。そういう意味で、後半に投入された中村俊輔(横浜FM)と中村憲剛(川崎F)の両選手の働きは、まずまずの物があった。時間の経過とともに次第に輝きが薄れてしまったのが残念ではあった。ただそれにしても、中村憲の見せた攻撃へのスイッチは彼が高いレベルの攻撃力を持つことを示していたし、後半開始直後の49分に見せた中村俊のFKは相手GKを慌てさせた。
しかし、コンディションの影響があったのか、それともコンビネーションの問題があったのか、徐々に日本代表の動きはバラけはじめ、組織的な攻撃というものが出せなくなってしまった。相手がどうであれ、良さは出せなかった。
試合の方は、前半13分にドログバのFKが闘莉王にあたり、オウンゴールに。さらに試合終了間際の80分のFKの場面でコロ・トゥーレに押し込まれ、2-0となる。その一方で、日本代表は流れの中で形を作る事ができず、1点も返すことができなかった。
すでに書いたことだが、日本がそうであるようにコートジボワールもコンディション的な問題があったのか決して効果的に試合を組み立てていたわけではない。前半15分に闘莉王と交錯し負傷交代したドログバがそのままピッチを去ったことも、試合の組み立てに影響を及ぼした可能性はある。ただ、イングランドと同様に悪い状況で悪いなりに結果を出してしまうところが世界のトップランクのチームの力なのだろう。
なお試合終了後に行われた45分間のみの練習試合では、41分に永井謙佑(福岡大)が香川真司(C大阪)からのパスを受けて抜け出し、得点。1-0で試合を終えている。
ちなみに負傷交代したドログバは右腕の骨折と診断されており、そのニュースが全世界を駆け巡ることとなった。また後方からひどいタックルを受け、67分にピッチを去った今野泰幸も靭帯を損傷する事となった。激しいぶつかり合いの帰結ではあるのだが、本大会直前に負傷によって一流のフットボーラーがワールドカップへの出場が危ぶまれる事態に陥るのは、いちサッカーファンとして切ないものがある。
以上
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【SAMURAI BLUE(日本代表)試合予定】
■2010FIFAワールドカップ南アフリカ グループE
2010年6月14日(月)23:00(日本時間)/ブルームフォンテーン
SAMURAI BLUE(日本代表) vs カメルーン代表
※この試合はNHK総合テレビにて全国生中継!
2010年6月19日(土)20:30(日本時間)/ダーバン
SAMURAI BLUE(日本代表) vs オランダ代表
※この試合はテレビ朝日系列にて全国生中継!
2010年6月24日(木)27:30(日本時間)/ルステンブルグ
SAMURAI BLUE(日本代表) vs デンマーク代表
※この試合は日本テレビ系列にて全国生中継!
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2010.06.05 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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