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岡山のゲームがなかった先週末、5月30日（日）。岡山の人たちはシーズンの苦楽から一時解放され、無邪気な心で日立台の柏vs草津と、たぶん、国際親善試合の日本vsイングランドを見ている。そこで開幕戦からの無敗記録を更新し続ける柏レイソルが、決しておとぎ話の中の無敵のヒーローではなく生身の人間の集団であることを知り、その後、イングランド代表に挑んで善戦するサムライ・ジャパンの姿に岡山の選手たちを重ね合わせたことだろう。
14試合無敗の柏だが、思いどおりに進められたゲームは、第12節・岐阜戦（2-0）と第13節・徳島戦（6-0）くらいだと言われている。その後の第14節・富山戦、前節・草津戦では、守備的に入った相手からバイタルエリアの自由を奪われて苦戦。しかし、そんな時に必ず出てくるのが、ネルシーニョ監督の魔法のような一手だ。システムにアレンジを加え、新しいタイプの選手を投入して、相手が対応できるようになるまでの間に崩しにかかり、決定機をものにしてきた。
「攻守においてコレクティブな柏は、思いきってぶつかってみたい相手」と話す岡山・影山雅永監督。飛び出す選手と下りてくる選手が明確に機能するスタート時の3トップ、状況に応じて投入される若手フォワード、半端ではない精度でボールを奪ってつなげる大谷秀和と栗澤僚一のダブルボランチ、脅威的な強さを誇るパク・ドンヒョク、近藤直也の両センターバック、高い得点能力を持つ小林祐三、橋本和の両サイドバック。柏は全体を見渡して、やっぱり隙を見つけられないチームだが、それよりも、精度の高い個人技をチームプレーにまとめることで勝点を積み重ねてきたという事実こそが、もっとも恐るべき点だ。
岡山のMF喜山康平は、「柏は、後がしっかりしていて、前は自由に伸びやかにやっている印象。逆転やロスタイムの得点で勝つ、本当に強いチームだと思う。ただ、こちらも怯むのではなくて、自信を持って『質』を追求していこうと2週間、準備をしてきた」と言う。ちなみに喜山の盟友、林陵平も柏の「伸びやかな」前線の要員である。今節の出番が期待されるボランチ、福本尚純は「押し込まれる時間は多いと思うけど、守備を機能させることでリズムは生まれるはず。自分に出番があったら、ゴールという目標を持ってプレーしたい」。左サイドバックの野田紘史は、「相手のことを考えすぎず、やっていきたい」と話す。2週間のまとまったトレーニング期間を過ごした岡山は、ケガで離脱していた福本、キムテヨンが戻り、チーム内のポジション争いが激化するなど、わるくない状況だ。
ネルシーニョ監督は、草津戦後に「どのチームも我々に負けをつけたいと、最善の準備以上の準備をして、最善の力以上の力で戦ってくるため、毎試合難易度が上がっていく中で戦っていかなくてはならない」と話している。いずれにせよ、岡山にとって中断前の大一番。チームとしてやろうとしていることが出せるか否かが大切なゲームではあるが、「善戦」と呼ばれるゲームは期待したくない。内容よりも結果を、1ゴールよりも複数ゴールを、ただ純粋に求めることでたどり着く、岡山の姿も美しいにちがいないと思う。
以上
2010.06.04 Reported by 尾原千明
