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【J2:第14節 甲府 vs 岡山】レポート:ただいま「変態中」。満足を楽しめない理由はM体質からS体質への過渡期が原因(10.05.23)

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5月22日(土) 2010 J2リーグ戦 第14節
甲府 1 - 0 岡山 (16:03/小瀬/10,568人)
得点者:35' ハーフナーマイク(甲府)
スカパー!再放送 Ch185 5/23(日)深00:00〜
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順位表や星取表を見れば満足な気分でビールを味わうことが出来るが、もう誰も甲府が3連勝ということを強調することはないだろう。でも、なんとなく変な気分。昇格圏内にいることにも、ここ9試合を8勝1分で勝っていることにも満足しているが、なんか昇格圏内クラブの椅子の座り心地を楽しめていない。せっかくビジネスクラスの客になれたのにスカして座っていられないというか、コツコツ貯めたマイルでアップグレードした普段はエコノミー客というはしゃぎ方も出来ない。満足を消化できない不思議な気分。

J2に出戻った08年は多少傲慢な気分でスタート出来たが、すぐにそれが間違いだということを開幕戦のJ2ルーキー岐阜(1-1)に思い知らされた。今節も心の隅では「勝てる」と思って試合を迎えたが、それは傲慢ではなく、多少は揺るぎながらもチームに対する自信と信頼があったから。試合前、柏が大苦戦して富山に勝ったこと知ったときは、柏との勝点差を縮められなかった悔しさよりも、toto予想が当たってホッとした気分の方がちょっと勝っていた。呑気なのか不謹慎なのかわからないが、他の試合の結果に頼らなくても自力で何とか(昇格)できるというやや薄めの確信もあった。最近は片桐淳至から強気の言葉を聞くことが多い。「このまま11月まで負けない」、「今年のJ2のレベルならダントツでリーグを勝ち抜かないと駄目」という言葉を聞くと、「そこまでは…」と思いながらも「強気になりたい」という誘惑に駆られている。

今節も甲府は主導権を取れた。岡山はボールを奪うとシンプルながらもワンタッチではたいて、後ろから追い抜いていく選手を使って速い攻撃を見せたが、トップスピードでの技術やコンビネーションに難があるから脅威に感じた場面は少なかった。甲府は9分にハーフナー・俺様・マイクがGKと1対1でシュートを打った場面を最初に、決定機をちゃんと作っていた。27分のコーナーキックでは秋本倫孝が頭で合わせたのだが、真後ろからダニエルも秋本の後頭部に向かってヘディングをして、押された秋本はボールを叩きつけることが出来ずに決まらなかった。足らなかったのはダニエルの「譲り合い」の精神だけ。全体的に見れば前に急ぎすぎていたし、雑に見える部分もあったが、パウリーニョはフィット感が増しているし、片桐のキックの精度も良かった。振り返れば総じて甲府は良かったが何故か満足感だけは足りなかった。

前半35分のハーフナー マイクのゴールで甲府は先制したが、後半の立ち上がりは岡山に主導権を渡してしまった。それでも、悪いなりに決定機は作っていたし、去年まであった「そろそろやられる」という心の囁きはほとんど聞き取れないほど小さかった。これが今年の進歩であり、自信に繋がっている。
内田一夫監督は「(岡山の)サイドバックとサイドハーフの間のポジションでボールを受けようとしていたが、もう少し深い位置で相手(の守備)を広げることが出来ると相手のインサイドのスペースが開いてくる。そこにボールの入り口が出来れば違った展開になった。それが出来ないで中へ中へ、前へ前へと行く気持ちが先走りしていた」と話した。修正点は手の届く範囲にある。相手の守備ゾーンでボールを回して疲弊させることは出来なかったが、グループとしての連係がもう少し良くなればそう遠くない時期にその片鱗は出せるだろう。

岡山がボールにプレスをしっかりとかけてきたことも甲府の攻撃とそこからの守備が上手く機能しなかった理由。川原周剛は「相手が強いとある程度ポゼッションされても割り切っていけるから、ボールを奪ったときに一気にいける。逆に順位が近いチームの方が難しい」と話していたが、岡山は攻撃のスイッチを入れやすかったのかもしれない。カウンターのテンポが良かったから、岡山に大黒将志(横浜FC)がいれば甲府は失点していた。大黒がいなくても、トップスピードと一定のプレッシャーの中での技術の精度が上がればもっと点が取れるはず。喜山康平は「みんな手応えをつかみ始めたと思う」と話した。上手くいかなくても諦めないでその回数を増やせば上手く行くときがあるし、何度か上手く行けば成功体験が自信に変わって、落ち着いてプレーが出来るようになる。そうなれば、同じ1秒間でもそこで見えるもの、判断出来ることが増える。それだけでも精度は上がる。
去年、第3クールのアウェイ岡山戦(第50節)で桃太郎スタジアム(現・kankoスタジアム)に行ったときに岡山のサポーターやファンが純粋にJリーグの存在を楽しんでいるように見えてちょっと羨ましい気分になった。照れくさい言葉だけれど「(Jリーグを楽しむ)青春」がスタジアムの周りにいっぱいあった。温和なファンやサポーターがもうちょっと辛抱して、信じて信じて背中を押し続ければチームはゴールと仲良くなれるはず。

試合終了の瞬間は麺が素麺のパスタを食べたような気分だったけれど、冷静になると悪い試合ではなかった。1-0とGKが達成感を感じる最少得点差の試合だったが、この1点の差は大きな1点差という試合。決定機を全部決めてハーフナーがイブラヒモビッチ(バルセロナ)に見えたらもっと良かったが、楽しみは先にある。パウリーニョの質の高さもこれからゴールに繋がっていくだろうし、柏好文もブレイクスルーする雰囲気がある。昇格圏内クラブの椅子を楽しめないのは、追いかけられるよりも追いかけることに慣れているからだろう。長らく「M」体質だったので、追いかけられることを楽しめる「S」に体質を変える「変態」に成功すれば、背もたれに背中を預けて座れるのかもしれない。

以上


2010.05.23 Reported by 松尾潤
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