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【J2:第13節 柏 vs 徳島】レポート:下部組織出身の若手が躍動した柏が無敗を継続。徳島は大敗で連敗を喫する。(10.05.17)

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5月16日(日) 2010 J2リーグ戦 第13節
柏 6 - 0 徳島 (16:04//7,010人)
得点者:5' 茨田陽生(柏)、35' 工藤壮人(柏)、55' 茨田陽生(柏)、60' 工藤壮人(柏)、90' 武富孝介(柏)、90'+3 田中順也(柏)
スカパー!再放送 Ch182 5/17(月)18:00〜(解説戸塚哲也実況桑原学リポーター川上直子)
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「最初から集中力、気持ち、プレーの質において前半で支配して、試合のボリュームを高められた。技術的にも戦術的にも上回ることができた」と柏・ネルシーニョ監督が勝因を語れば、徳島・美濃部直彦監督は柏の選手個々の技術と判断力の高さを挙げたうえで、徳島の選手たちに生じたいくつかのミスと、なにより「挑戦するという強い気持ちで戦わなければいけなかった」と敗因を述べた。だが、その要因を呼び起こしたすべての鍵はゲームの立ち上がり、わずか数分間の攻防に存在していた。

開始から2分を過ぎた頃、徳島MF青山隼のバックパスをGK日野優がキックミスし、それを柏MFレアンドロ・ドミンゲスが拾った。青山がすぐさま戻り、レアンドロ・ドミンゲスからボールを奪い返したものの、青山から左サイドバック平島崇へのつなぎに対して、柏は茨田陽生、小林祐三が立て続けに高い位置から連動したプレスを仕掛けてさらに奪い返した。この一連の流れは得点にこそ至らなかったが、徳島のミスと柏の圧力が重なったことによって「前からプレスに行けずに、チーム全体としての守備が徹底されていなかった」(三木隆司)というように、徳島の選手の間に「前から行く」と「引く」という守備意識のギャップを生み出してしまう。柏はわずかに生じた破綻の糸口を見逃さずに、田中順也とのリターンパスから橋本和があっさりと左サイドを突破。フリーで駆け上がった橋本は落ち着いて中の状況を見極め、グラウンダークロスがファーサイドまで抜けてきたところを茨田が詰めて先制した。

「早い時間帯に失点してしまい、下を向いてしまった」(津田知宏)。「1点目でプランが崩れてしまった。もう10メートル前でラインを設定したかった」(三木)。ゲームへの入り方が悪かった徳島。しかもそれを修正する前に生まれた5分の柏の先制弾が、メンタル面と戦術面で追い打ちをかけ、歯車を大きく狂わせたことは、津田と三木のコメントが物語っている。さらに35分にはペ・スンジンに引き倒された工藤壮人が、そのPKを自ら決めて柏が2−0とリードを広げた。
もうひとつゲームのポイントを挙げるならば「マッチアップさせながらゾーンじゃなくてボールに対してプレッシャーに行けるように」との意図から、美濃部監督が前半途中から4−1−4−1へシステム変更し、対応策に出た以降の時間帯だろうか。もし1点差で耐え凌げば、システム変更が奏功した徳島が落ち着きを取り戻す可能性もあっただけにPKで点差が開いたこと、または前半終了間際の43分に訪れた徳島の最初のチャンス、津田の落としを柿谷曜一朗がミドルシュートを狙った場面で柏GK菅野孝憲に阻まれ、1点差で前半を折り返せなかったことが、後半の戦いに影響を及ぼしたのは否めない。

流動的に空いたゾーンに顔を出し、パスをスムーズにつなぎながら徳島がボールを奪っても、柏は素早い攻守の切り替えと球際の競り合いで強さを見せつけ、セカンドボールを圧倒的に支配。徳島陣内で攻撃を展開するハーフコートゲームの様相を呈し、後半に入っても柏の優位は動かなかった。2点のリードがあるため柏は大きなリスクを冒さず、全体でゆったりパスを回しながらボールを動かし、アタッキングサードに入った途端にギアをトップへと上げる。55分、工藤のスルーパスから徳島DFラインに生じたエアポケットへ飛び出した茨田が加点して3点目。さらに60分には、カウンターでレアンドロ・ドミンゲスから茨田へ。茨田は徳島DF3人を引きつけてから左へ流すと、それを工藤は右足インフロントの引っ掛けるようなシュートでゴール右へと流し込んだ。意気消沈した徳島から、終了間際にも小林のクロスに武富孝介、橋本の突破に田中と、両サイドバックが完全に組織を崩して2点を追加。柏が6−0で大勝した。

徳島はJ1経験のある選手を多く揃えており、6−0という大差がつくほど柏と徳島の間に大きな差があったとは思えない。したがって、立ち上がり“数分間”のせめぎ合いから受けたダメージ次第では、実力からは測ることができない一方的な結果を招くと、サッカーの奥深さをも同時に知った思いである。だが徳島が前節終了時点で4位につけ、昇格レースに加わっていることは揺るぎない事実。津田は前線でタイミング良い動き出しを見せており、必ずしも柏の守備組織に対抗できる術がなかったわけではない。三木が「良い時は全体の意思統一ができている」と話していたが、その「良い時」の姿を再び取り戻すことが、連敗脱出へ向けた鍵になるだろう。

そして開幕から12戦無敗を継続した柏は、フランサと大津祐樹という2枚看板が欠場していても、工藤、茨田といった下部組織出身の若手が台頭し、チームには競争意識を高める良い循環が生まれている。だがまだ3分の1を終えただけで、何も手にしたわけではない。それを肝に銘じ、ここまでの無敗や今回の6−0という結果には惑わされず、今後の戦いへも決して気持ちを緩めてはならない。

以上

2010.05.17 Reported by 鈴木潤
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