5月5日(水) 2010 J2リーグ戦 第11節
鳥栖 0 - 0 岡山 (19:03/ベアスタ/5,489人)
スカパー!再放送 Ch185 5/6(木)22:30〜(解説サカクラゲン実況君崎滋リポーターヨンヘ)
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同じものを複数の人が見た時に、その評価が分かれることがある。価値観やその人の期待度によって、差は出てきても当然である。その評価を互いに論じ合い価値観を共有することは、互いの立場を知る機会にもなるし、その人の立場や求めるものを理解する上でとても重要である。今節の鳥栖vs岡山の一戦は、この試合に関わった人たちが、互いにその評価を論じ合うには格好の試合だったといえる。
90分間を走りきった選手たちを讃える人もいるだろう。無得点試合で、物足りなさを感じる人もいるだろう。17本のシュートを放った鳥栖を叱咤激励をする人も、シュート5本に終わった岡山の堅守を賞賛する人もいるだろう。
試合後のスタンドから聞こえた拍手とため息には色々なものが詰まっていると感じた。
互いに中2日で臨んだ試合。疲労の色は隠せなかった。
だからこそ、相手にプレスをかければ判断を迷わせたり遅らせたり、ミスを誘発する可能性があったわけで、そこをアスリートの本能で感じた両チームの選手は試合開始から激しいプレスをかけた。鳥栖は、激しい当たりと数的優位な状態でボールを奪いに行った。岡山は、守備ブロックを高く保ち、中盤と前線からボールを追わせた。その結果がスコアレスドローとなり、勝点1を分け合う内容だった。
しかし、立場が変わると試合内容の評価は大きく分かれるものである。松本育夫監督(鳥栖)は、珍しく会見で声を荒げて試合内容を振り返った。「自分の感覚でプレーをしている。チームにとっての必要なプレーができていない」と容赦はなかった。結果を求められる指揮官としての立場もあるだろうし、この試合に求めたものの高さを計り知ることができる。
対した影山雅永監督(岡山)は、「お互いに消耗戦になるのかなと…(中略)…タフに90分間を戦ったなという印象」と、ある程度の満足感を得ていたようである。
確かに、鳥栖は17本のシュートを放ち無得点で、岡山は5本しか打てなかったことを考えると、このような評価に分かれてしまうだろう。しかし、連戦の中でこれだけハードワークを見せた選手に「勝てずに残念」や「負けに等しい」との評価も酷な気がする。鳥栖は個の力とアイデアで岡山ゴールに迫ったし、岡山は組織的にその攻撃を耐えていたのだから、互いに目指したサッカーはある程度できたとも言えないだろうか。
鳥栖は、ボランチの位置に下地奨が入って岡山の運動量のある中盤を潰し続けた。あれだけ中盤の位置で守備ができれば、ディフェンスラインも押し上げやすくFWまでの距離を短くすることができる。だからこそ、MF長谷川博一や金民友の個人技が光った。両サイドMFが動いた分だけ、両サイドDFが攻撃参加しやすくなるスペースも時間もでき、丹羽竜平も日高拓磨も頻繁に岡山陣内に攻め込むことができた。あとは、岡山のゴールにボールを突き刺すだけだったが、シュートの位置が遠く、得点までには至らなかった。
岡山は、出場停止の近藤徹志に代わって野本安啓がセンターバックに入った。判断力とカバーリングに優れる野本は、高さのある鳥栖のFWを抑え、決定的な仕事をさせることはなかった。後藤圭太も頭を切るアクシデントを乗り越え、最後まで積極的にラインを統率し無失点で試合を終わることができた。あとは、前線がシュートを放つだけだったが、鳥栖の早いプレスに最後の壁を突破することはできなかった。
ただ、この試合に関しては、両チームともよく走り、ボールを動かし、ハードワークを最後まで見せてくれたので、90分という試合時間の長さを感じさせることはなかった。筆者の立場から感じた感想は、「目を離すことができないスピーディーな試合」ということである。
ボールは自らの意図で止まることも動くこともできない。そのボールを動かすのは、選手の判断であり技術である。パスの出し手と受け手の意図が合致しないとパスは有効に機能しない。相手を追い込むのか、いなすのかは、選手の目で見えた状況判断にゆだねられる。スタンドからは、スペースや相手の位置、味方のフォローなどはよく見えるのだが、選手目線では全てを把握するのは容易なことではない。
それでも、ボールをゴールまで運ぶことができるのは、日頃の練習と勝利に対する執念なのだろう。サッカー観戦をするたびに、その難しさと努力に頭が下がる。そのくせ、終わってみれば次節に目が行ってしまい、あれこれと勝手な予想を述べる自分がいる。
連戦で疲れている選手には申し訳ないが、サッカーを観る側の論理と心境とはそんなもので、次節の試合日が待ち遠しい。選手の皆さん、本当に申し訳ない。が、本当はプレーしている選手も楽しんでいるだろう。
サッカーは、プレーしても観ても楽しいものである。
以上
2010.05.06 Reported by サカクラゲン
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