4月25日（日） 2010 J1リーグ戦 第8節
湘南 1 - 0 仙台　（14:03／平塚／9,892人）
得点者：66' 阿部吉朗（湘南）
スカパー！再放送 Ch185 4/26（月）21:30〜（解説：川本治、実況：八塚浩、リポーター：児玉美保）
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湘南にとってはまだ1勝しか挙げていない現状、仙台は2連敗中、そして互いに昇格組であるという要素が、負けられないという両者の思いをいっそう強くさせ、ゲーム展開に作用したのかもしれない。一進一退の攻防となった前半は反面、互いにディフェンス堅く、ゴールまでの地図は水に落としたインクほどに淡いものだった。

手堅い流れであるなら、得点の可能性はセットプレーに見出される。仙台のプレイスキックは右足を痛めている梁勇基ではなく、今季リーグ戦初先発の太田吉彰に冒頭から託されていた。たとえば13分の太田のコーナーキックにはエリゼウがヘッドを合わせた。だがこれはGK野澤洋輔の正面を突く。31分のコーナーキックも野澤がパンチングで凌ぎ先取点を許さない。また35分にはこの日初めて梁がフリーキックを蹴り、最後は中島裕希が反転シュートを狙うも、枠を捉えきれなかった。

一方の湘南も、序盤からフリーキックを重ねて相手ゴールに近づいた。その数は仙台を上回る。かたやコーナーキックについては前半0本だった。振り返ってみると、あるいはこの「0」という数字が、虎の子の1点となる後のゴールを演出する綾だったかもしれない。
後半に入ると、梁や太田のクロスから仙台が押し気味に時計の針を進めていく。60分には梁の左コーナーに千葉直樹がニアで頭を合わせ、湘南ゴールを脅かした。しかし、この千葉の巧みなフリックオンも、「驚くような抑え方でよく止めた」と反町康治監督が振り返った野澤の鋭い反応により、湘南は難を逃れている。両チーム唯一のゴールが生まれるのは、その5分あまり後のことだった。

右サイドを攻め上がった臼井幸平の仕掛けから、湘南がこの日初めてとなるコーナーキックを得る。ファーサイドへ引く田原豊や阪田章裕とは逆に、ニアに侵入して坂本紘司のクロスに合わせたのは阿部吉朗だった。「練習した形を狙い通り試合で出すことができて本当によかった」そう噛みしめた渾身のヘッドが、力強くゴールネットに刺さった。

分析を重ねてセットプレーをコーディネートする曹貴裁コーチらスタッフの功績は見逃せないだろう。ひも解けば昨季に引き続いて村松大輔が千葉を封じ、また阪田がエリゼウを、そして中原貴之に対しては田村雄三が徹底した。

後半21分に先制を許した仙台は、フェルナンジーニョと関口訓充を相次いで投入し、攻撃に人数をかける。かたや湘南は終盤、島村毅を入れ、中盤を厚くして応戦した。強風が悪戯を始めた後半は、アゲンストの仙台にとってはクロスに合わせるのも難儀だったに違いない。それでも中原が強烈なミドルを放ち、フェルナンジーニョもシュートを狙う。だが野澤の好守もあってゴールには結べず、関口が切れ込んで放ったシュートを野澤ががっちりと抑えたところで、長い笛が響くのだった。

「セットプレーに沈んだ」と、仙台の手倉森誠監督は振り返った。ただ、前節の神戸戦を引き、内容に活路を見出してもいる。「守備での対応という点では、流れのなかでは十分修正し、表現できたところもたくさんある。一番いけないのは、自信を失ってそれぞれがバラバラになること。悲壮感を持つ必要はない。これを糧にやっていくだけです」。指揮官の言葉どおり顔を上げ、同じく昇格組との対戦となる次節のホームC大阪戦に向かいたい。

一方の反町監督は言う。
「我々の守備のリズムは悪くなかったと思う。全体的なクオリティとしては高くはないと思うが、最後まで湘南らしい粘り強い試合ができた。相手のプレスをうまくはねのけるようなボールの動かし方など、少しでも精度を上げられるよう努力していきたい」

個々がタスクをまっとうするなか先取し、最後まで粘り強いプレーを貫いた1−0の勝利は、スタッフの日々の支えと合わせて湘南の真骨頂と言えるだろう。攻撃のダイナミズムなど、まだまだ伸び白はある。引き続き地道な努力を重ね、次節は川崎Ｆに挑む。

以上

2010.04.26 Reported by 隈元大吾