3月7日（日） 2010 J2リーグ戦 第1節
岐阜 2 - 1 富山　（13:04／長良川／4,050人）
得点者：33' 黒部光昭（富山）、60' 嶋田正吾（岐阜）、70' 押谷祐樹（岐阜）
スカパー！再放送 Ch181 3/8（月）23:30〜（解説：森山泰行、実況：加藤義久、リポーター：鈴江晴彦）
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新生・FC岐阜の門出は、プレシーズンマッチの名古屋戦と全く同じメンバーでスタートした。同じ【4-4-2】のボックスの富山に対し、岐阜は倉田安治監督就任から積み上げてきたゾーンディフェンスがしっかりとはまった。立ち上がりから目立ったのは、ルーキーながら開幕スタメンを勝ち取ったMF山内智裕だ。ゾーンディフェンスの肝となるファーストディフェンダーのプレッシングだが、センターにボールがあるときに、彼がうまくアプローチをして、後ろのスムーズな連動を引き出していた。

守備にリズムが生まれたことで、徐々に攻撃も形が出来始める。16分にはFW押谷祐樹のボールキープからの落としを、FW佐藤洸一が強烈なミドルシュートを放つが、これは富山GK中川雄二のファインセーブに見舞われる。そして21分、岐阜にビッグチャンスが訪れる。中央のMF橋本卓が右サイドのMF菅和範へ展開すると、菅の縦パスを受けた押谷が、PA内で倒されPKを獲得。これを押谷が蹴るが、またしても中川のファインセーブに阻まれた。

この中川のビッグプレーが流れを一瞬ストップさせた。PK失敗の影響からか、若干岐阜のサッカーがトーンダウンした隙を富山は見逃さなかった。33分、カウンターからFW石田英之が左サイドを突破。グラウンダーのマイナスセンタリングを送ると、スリッピーなピッチでボールが加速し、中央で構えたDF吉本一謙の目測を誤らせ、ファーサイドで待ち受けていたFW黒部光昭の下へ。富山がカウンター1発で先制に成功した。

だが、「こういうことはあまりあってはいけないけど、サッカーではよくあること。そこから精神的にガクッと来てしまった。戦術的な問題ではなく、流れの中でガクッときて失点をした。でも、これでふっきれて、機を見て総攻撃をかけようと決意することが出来た」と倉田監督が語ったように、岐阜は規律に乗っ取った組織的な守備を続けて、すぐに落ち着きを取り戻し、リズムを再び掴む。
すると富山はリードこそしていても、後半に入っても前半同様にパスが思うように繋がらず、単調な攻撃に終始していることを見た倉田監督は、素早く動く。56分に山内に代えMF嶋田正吾を投入。嶋田を右に、菅をトップ下に置く【4-1-3-2】にシフトチェンジ。するとこれがずばり的中する。
嶋田と西川はワイドに開くことなく、2人とも中に絞り気味のポジションを取ることで、橋本と菅のポジションを固定させ、守備時には彼らがボランチラインに落ちて3ボランチを敷いてゾーンディフェンスを構築し、攻撃時にはトップ下のラインまで上がって3シャドーを形成した。このシフトコントロールがスムーズに行くようになったことで、岐阜の攻撃は分厚いものとなり、富山に容赦なく襲い掛かった。
60分には中央を突破した菅のスルーパスに抜け出した嶋田が、GKとの1対1を冷静に沈めて同点に追いつく。64分のビッグチャンスには、GK中川の2つのビッグセーブに阻まれるが、70分にはカウンターから佐藤のパスに抜け出した押谷が、PK失敗の汚名を見事に返上する技あり決勝ゴールを流し込んだ。
その後、84分に押谷に代えてDF田中秀人を投入し、【4-4-1-1】の守備的布陣で相手いなすなど、戦況を見て、土台がぶれない範囲内で戦い方を変えるという『倉田カラー』が色濃く出たサッカーを展開した岐阜が、富山に逆転勝利を収めた。

敗れた富山は、全体的に思うようなサッカーが出来なかった感は否めなかったが、昨年より攻撃時のアタッキングエリアに関わってくる選手の枚数と、バリエーションは格段に増えているだけに、あとはうまく守備とのバランスをすり合わせていく作業を、これからしていかなければならない。昨年のベースが残り、かつ変化が見られただけに、これからが楽しみなチームだ。

一方、最高の形で開幕戦を飾った岐阜。試合後のヒーローインタビューで、PKを外した押谷をいじるなど、明快でウィットに富んだ受け答えで、スタンドから大きな歓声を浴びるなど、開幕戦でサポーターの心をガッチリと掴んで見せた倉田監督。まだ36試合の最初の1試合に過ぎないが、開幕戦である程度の手ごたえを共有できることは、非常に重要なことである。この重要なミッションをまずはクリアした『新生・FC岐阜』。この手ごたえをより確実なものにしていくために、勝利の宴は今日までで、次の大分戦に気持ちを切り替えていかなければならない。

以上

2010.03.08 Reported by 安藤隆人