今日の試合速報

J’s GOALニュース

一覧へ

【東アジアサッカー選手権2010 SAMURAI BLUE(日本代表) vs 中国代表】レポート:チャンスを決めきれない日本は、PKを止めた楢崎正剛に救われてドロー決着(10.02.07)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2月6日(土) 東アジアサッカー選手権2010
SAMURAI BLUE(日本代表) 0 - 0 中国代表 (19:17/味スタ/25,964人)
SAMURAI BLUEサイト
東アジアサッカー選手権を10倍楽しもう!twitter
----------

中国戦を前にした岡田武史監督はいわゆる試合勘というものについて具体的に説明している。すなわち「シーズンオフ開けのチームというのはプレッシャーに慣れていないのでプレッシャーに戸惑うか、それとも大きな動きができなくて戸惑うか、どちらか」の状態にあるという。それに対して岡田監督は「プレッシャーに慣れていないほうが怖い」と考え「狭いコートでの練習」を繰り返してきた。ところがそうすると今度はピッチ上で広い視野を持つことができにくくなる。狭い局面でのパスワークは磨かれるが、その一方でピッチの幅を広く使った大きな展開が出にくくなるのだ。そこでこの中国戦に向け、大きな動きが出るように改善して来ていたという。

大きな展開というとひとつには流動的なポジションチェンジが上げられるだろう。その点で見れば、この試合から先発に復帰した内田篤人(鹿島)の攻撃参加は戦いにダイナミズムを与えていたと言える。原因不明の嘔吐感から解放された内田が「まずは守備からと思っていたんですが、前が空いていたので」と積極的なオーバーラップの理由を述べる一方で、同じく攻撃に絡んでいた長友佑都(F東京)は、その理由について「この前のベネズエラ戦よりも前に起点ができた。それでサイドバックに時間ができました。この前よりは、やりやすかったです」と指摘していた。前線でのパスワークによるボール保持率の高さが、オーバーラップの時間を稼いでいた要因となったのである。
前方のスペースへの飛び出しに関しては稲本潤一(川崎F)のそれも見所を作り出しており、中国の守備陣に揺さぶりをかけていた。守備面でも献身的に走り回るとともに1対1の強さを発揮しており、その攻守にわたる活躍は日本にとって大きなオプションになりうるものだとの期待を持たせるものだった。

ベネズエラ戦とこの中国戦との違いは、岡崎慎司(清水)を1トップに据え、玉田圭司(名古屋)、大久保嘉人(神戸)をワイドに開かせたという点であろう。前回サイドハーフとして出場していた中村憲剛(川崎F)はトップ下のポジションで先発し、思う存分に攻撃に絡むこととなる。例えば1トップの岡崎について「もっと流動的にやれればいい。1トップで張っているということではないので」と話ていた。そして実際に前線の4人が絡むパスワークによってためを作り、それに対して両サイドバックオーバーラップするという流れが出来ていたのである。
ポゼッション率を高める日本の攻撃に対し、中国は守備の意識を高く持ち、早い帰陣を心がけていた。仮にサイドを破られたとしても、ペナルティエリア内に5人前後の選手が戻り、守備を固めていた。そうした相手を崩す方法のひとつとして、早いパスワークが上げられる。例えば19分の場面。中村からのパスを受けた岡崎がサイドをえぐりマイナス方向の速いクロスを入れる。中央に飛び込んでいたのは左サイドから絞っていた玉田だった。タテ方向へのパスと、流動性が生み出したチャンスだった。
同じような場面は、43分にも生まれている。サイドを突破した岡崎が中央に折り返し、これを中村が合わせようと試みた場面である。右足で打とうとして、左足に当たったという中村は「左足で止めて打てるくらいの間もあったかもしれない」と自らの準備不足を悔やんだが、形自体は作れていた。いずれにしても、どれだけ手数をかけて守られていたとしても、早い崩しが効果的だということを端的に示した場面だった。

冒頭に記した通り、この試合に向け岡田監督は大きな展開を意識しており、それが出たのが54分の場面だった。自陣から稲本が右斜め前のスペースにロングフィード。手前でカットしようとするDFの頭を絶妙に超えるパスを内田がトラップする。相手に帰陣の時間を与えない縦に早い攻撃は、ポストを叩いた内田のシュートで完結する。フィードもトラップも完璧だっただけに「キレイに蹴りすぎました」という内田のシュートがもう少しアウト気味に足に乗っていればという決定機だった。

試合を通じていくつかの収穫はあった。中村が話す通り「フィニッシュの形はあった。狙いとするところで決められていればベスト、という形は作れていた。最後の精度をもっともっと上げれば」という試合だった。それだけに、得点を決めきれなかったのが残念である。さらに言うと、事故によりPKを与えるなど敗戦の瀬戸際にまで追い込まれたことも反省材料であろう。どれだけ支配率を高めていたとしてもゴールを奪えなければ良くて引き分け止まり。勝つことは絶対にできない。楢崎正剛のビッグセーブによって救われたが、あれだけ攻めていたのだから、やはり着実に勝点3を手にしてほしかった。
前回がいつだったのか思い出せないようなサポーターからのブイーングが、重くのしかかる試合後だった。

以上

2010.02.07 Reported by 江藤高志
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/12/12(木) 12:00 Jリーグ審判レポート(シンレポ!)ホイッスル #9「手にあたってもとられない“ハンド”」