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自らの左足と同様、柏木陽介は繊細な少年である。広島ユース時代には「練習についていけません」と森山佳郎監督の前で号泣した。公式戦初先発となったヤマザキナビスコカップ対千葉戦、42分で交代させられた柏木は、そのままシャワールームに飛び込む。「俺はあかん」。悔しくて、情けなくて、涙が止まらなかった。
そんな少年の転機となったのは、2006年6月、広島の監督に就任したミハイロ・ペトロヴィッチとの出会いだった。彼は、それまで一度もリーグ戦のベンチに入っていなかった柏木を抜擢。「陽介は広島のダイヤモンドだ」と絶賛し、柏木を満面の笑みで抱きしめた。
母子家庭で育った柏木にとって、自分を認めてくれる指揮官の存在は、まるで父親のよう。監督の笑顔が見たくて、彼は必死に走り、左足でタクトを振るった。時にすねた態度をとることはあっても、それは父に対する甘え。叱られることすら、柏木には嬉しかった。
2008年、広島は故障で出遅れた柏木不在を感じさせない圧倒的な力でJ2を独走した。「自分はチームに必要なのか」。強烈な危機感が気持ちの低下につながり、調子があがらない。しかし、ペトロヴィッチ監督は不調の柏木を、我慢に我慢を重ねて使い続けた。その厚い信頼が、2009年の8得点8アシストという結果につながったのである。
1月21日、浦和の一員として広島との練習試合に出場した柏木陽介は、試合後、広島の選手たちと談笑していた。そこに、ペトロヴィッチ監督がやってくる。
「ヨウスケ!」
広島の指揮官は、満面の笑みで彼を抱きしめ、頭を何度もなでた。広島では毎日のようにかわされたスキンシップ。《父》の変わらぬ愛情に、柏木は包まれた。だが彼には、今も「父」と慕う人物との別離を選んででも、守ってくれる大きな存在を失ってでも、やり遂げたい想いがあったのだ。
今はまだ、違和感を覚えさせる「赤」の柏木。もちろん、そのうち馴染んでいくはずだし、そうあってほしい。しかし一方で、27番の紫のシャツを着た陽介が、ペトロヴィッチ監督と笑い合うシーンを、今も思い出す。27番とは、いつも寂しそうだった少年がペトロヴィッチと出会い彼の愛に育まれて翼を広げ始めた時期の、柏木陽介の背番号だ。
以上
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■2010シーズンの幕開け!FUJI XEROX SUPER CUP 2010
2月27日(土)13:35/国立
鹿島 vs G大阪
★この試合のチケットは1月23日(土)10:00から発売開始!
2010.01.22 Reported by 中野和也
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