1月1日(金) 第89回天皇杯決勝
G大阪 4 - 1 名古屋 (14:02/国立/42,140人)
得点者:6' ルーカス(G大阪)、40' 中村 直志(名古屋)、77' 遠藤 保仁(G大阪)、86' 二川 孝広(G大阪)、89' 遠藤 保仁(G大阪)
★天皇杯特集
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名古屋にとっては10年ぶりとなる天皇杯の決勝に、勝つだけの要素は揃っていた。11月から無敗を続けてきたチームは、新布陣4−3−3をものにし、得意のサイド攻撃の破壊力をさらに増していた。準決勝では強豪の持つ粘り強い勝ち方で接戦をものにするなど勝負強さも披露。決勝の相手・G大阪とは今季2戦2勝と相性もよく、負傷と出場停止で準決勝を欠場した阿部翔平とマギヌンも戦列に復帰した。機運は最高潮、ストイコビッチ監督は勝てばJリーグでは初となる、選手と監督の両方で天皇杯を獲得する人物となる巡り合わせもあった。風は、名古屋に吹いていたはずだった。
だが、現実は厳しかった。結果から言えば1−4の大敗を喫した名古屋は準優勝に終わり、ストイコビッチ監督指揮下でのタイトルは来季以降に持ち越された。
試合は後半のある瞬間まで、互角の展開で進んでいた。前述したように欠場者が戻った名古屋はベストといえる11人をピッチに送り込んだ。中盤の逆三角形は吉村圭司をアンカーに、中村直志と小川佳純がインサイドハーフを務める。3トップはケネディを軸に、玉田圭司とマギヌンを両ワイドに配置。DFライン中央にはこれが名古屋ラストゲームとなるバヤリッツァと吉田麻也が入った。
キックオフからペースをつかんだのは名古屋。しかし先制点はあっけない形でG大阪が奪った。6分、スローインから細かくつないで一気にペナルティエリアに侵入すると、二川孝広、山崎雅人とつなぎ、最後はルーカスが流し込んだ。出鼻をくじかれた形の名古屋だったが、9分には阿部の目が覚めるようなサイドチェンジからマギヌンがクロスを上げ、ケネディ、中村とつないで最後は小川がシュート。さらに14分にはマギヌンのサイドチェンジから阿部が抜け出し、ニアで玉田が頭で合わせる。どちらもGK松代直樹に阻まれたが、失点以降も名古屋の勢いは止まらず、攻撃には徐々にゴールの匂いが強まっていった。
そのままオープンな攻防となった前半の終了間際、名古屋にとっては最高のタイミングで同点弾が生まれる。40分、この日も制空権を握り、攻撃の基準点となっていたケネディが玉田のクロスを折り返すと、「ジョシュア(ケネディ)のこぼれ球は狙っていた」という中村が倒れこみながら頭で押し込む値千金のゴール。自身初のタイトルに燃えていた男が、ここ一番で大きな仕事をやってのけた。
後半も開始早々から打ち合いとなる中、名古屋は46分と60分、G大阪も52分に決定機を迎えたが追加点はならず。いずれもビッグチャンスだったが、あと一歩のところでネットを揺らすことができない。シュートこそ打てないまでも、あわやという場面も次々と生まれたが、フィニッシュに持ち込む段階で両DFが体を張った守備で切り抜けた。73分には玉田がペナルティエリア内でDFに倒されたが、レフェリーは玉田にシミュレーションの判定。名古屋はチャンスを逃し続けた。
そして77分、試合を決めるスーパープレーが生まれた。縦パスを受けたG大阪の遠藤保仁がトラップで1人目のDFをかわすと、続くタックルもかわし、左足でミドルシュートを突き刺してみせた。今季のAFC最優秀選手の高い個人技の前には守護神・楢崎正剛の力も及ばず。ついに試合の均衡は破られた。
残り時間はあとわずか。この失点を受け、名古屋ベンチの動きは早かった。中村と吉村を下げ、三都主アレサンドロと巻佑樹を投入。すでに小川と交代していたブルザノビッチと三都主をボランチに据え、両サイドハーフに玉田とマギヌン、トップにケネディと巻を置く4−4−2に布陣を変更し、パワープレーに打って出た。しかしこれが、結果的に自分たちの首を絞めることになる。G大阪にとって守備力を度外視した布陣はむしろ好都合で、「(自分たちが)子供のようにやられました」と三都主が語るほどに時間を有効に浪費していった。必死でボールを奪いにいった名古屋だったが、バランスを崩した組織ではそれもままならず。その隙を突いてG大阪は86分、89分とカウンターで追加点を奪う試合巧者ぶりを発揮し計4得点。逆転を狙った特攻が裏目に出た名古屋は、拮抗した攻め合いから一転、完敗といえる大差をつけられる屈辱を味わう羽目になった。
ストイコビッチ監督は試合後、「名古屋のスタイルは出せた」と悲観はしなかったが、選手たちは連覇王者との差をシビアに感じていた。無念の途中交代となった小川は「グランパスの完成度は相手に比べて低かった」と言い、主将の楢崎は「相手がウチを怖がっていたのはケネディの高さだけだった」と、ともにG大阪が一枚上手であったことを率直に認めている。タイトル獲得への壁は、想像以上に厚かった。
現体制で初であり、チームにとって10年ぶりのタイトルと、来季のACL出場権。元日・国立の舞台で得られるはずだったものはともに逃した。思えばこの2年間は、タイトルに手が届きそうで届かないことの連続だった。しかし名古屋はその苦い経験を少しずつ自らの血肉に変え、トーナメントのファイナルに進出するまでに成長してみせた。月並みな表現になるが、この悔しさをいかに次につなげられるか。全53試合を戦った長いシーズンを終え、束の間の休息に入った名古屋の手には、早くも次なる成長への糧が握られている。
以上
2010.01.02 Reported by 今井雄一朗
J’s GOALニュース
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