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新春特別企画 ギラヴァンツ北九州 横手敏夫社長インタビュー「100万人のチカラでJ1昇格!」(10.01.02)

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インタビューに応える横手社長

2009年11月30日、Jリーグに37番目のクラブが誕生した。ギラヴァンツ北九州(2009シーズンまでの名称はニューウェーブ北九州)。福岡県北九州市という独特の地域風土の街に根を下ろすクラブは、これまでのJリーグにはない位置づけで新たな歩みをスタートする。「100万都市の小クラブ」。どのようにしてJ2を生き抜いてゆくのか。横手敏夫社長に話を聞いた。

Q:ギラヴァンツ。思い切った名前をつけたなという印象もあります。決定の過程は?

「イタリア語の造語なんです。北九州の市花ひまわりを意味する「Girasole」に前進を意味する「avanzare」を合わせた。2009年の4月に1ヶ月間、チーム名を公募をしましてね。市内のみならず関東地方などからも応募が集まり、これを大学教授、クラブ、市民などで構成する5人の選考委員で選定していったんです。

実は当初、別の名前で決定していましてね。ところがこれがすでに登録商標として登録されており、選定作業は振り出しに。応募作品の中からは単独で選考委員のイメージにはまるものがなく、そのなかから造語を作り出すことになった。「Girasole」のイタリア語読みは「ジラゾーレ」です。「ジラヴァンツ」というアイデアもあったのですが、これではインパクトに欠けると。「Gira」の部分は英語読みにして「ギラヴァンツ」が完成しました」

Q:聞き慣れれば、ちょっとワルっぽくていいのでは、という声もあります。周囲の反応は?

「北九州っぽくていいでしょう! 私も当初は「なんて名前をつけたんだ」と言われた。太陽に向かって前進するひまわりのように、世界に向かって行こうという思いが込められているんです。個人的には「ギラ」と呼んでいただき、親しんでいただければと考えています」

Q:11月30日にJリーグの鬼武チェアマンから正式にJリーグ入会決定の報を受け取りました。その際、「身の引き締まる思い」という言葉を強調していました。実際にホームタウンからは喜びの声が挙がる反面、他地域のファンからは「Jに弱小クラブが増えるのか」という視線もあるでしょう。

「確かに。市民クラブがJ2に行くということは、たくさんの課題があるわけです。特に資金的な問題ですね。J1を見ていただいても分かるでしょう。市民クラブよりは、スタート時点で大企業がバックアップするクラブの方が強い戦力を抱えていることが多い。だから我々は、徹底した「身の丈経営」で行くことを考えています。すべての経費は収入の範囲内で賄う。そうやりながら、収入を伸ばしていく方法です。子供が少しずつ背を伸ばしていくように、着実に収入を伸ばしていきたい。

そのためには、新スタジアムの存在が重要だと考えます。現在の本城陸上競技場のアクセス、施設では多くの集客を見込むのは難しいことは事実。新スタジアムが完成し、スタジアム入場者数のベースアップが見込めるようになって、次のステップに移っていきたい」

Q:「人口100万都市に生まれる小クラブ」。ギラヴァンツは、そんな位置づけになりそうです。経営規模(4億円前後)は、J2でも下から2番目くらいになりますね。

「そうです。市民の「はやく強くなれ」という声との間に葛藤が生まれるかもしれない。よく言われる北九州人の気質として「せっかち」「熱しやすく冷めやすい」というものがありますからね。ただ「身の丈経営」というのは、希望を捨ててほしい、ということではない。甲府、山形といったクラブは6億円規模の予算でJ1昇格を経験している。鳥栖も8億円規模でJ1昇格を争うまでになった。そういった事例を参考にしながら、クラブを潰さないことを最優先に考えるわけです。

これからは育成部門を整備していき、地域の皆さんにも馴染み深い地元出身の選手がトップチームに昇格し、活躍できるようなクラブの土台づくりを考えています。北九州に出来たプロチームを本当に愛して下さるのなら、J1昇格まではじっくりと待っていただきたい。そう考えています」

Q:一方「100万都市」という点は大きなポテンシャルでもある。これをどう生かして行きますか。

「まだ発揮できていませんね。むしろこれからの課題でもあると思います。北九州市はそれぞれの伝統がある旧5市(門司、小倉、戸畑、八幡、若松)が合併して生まれた街で、いまだに「北九州」という名前に燃えないという一面がある。クラブもそういった風土の影響を受けていますよ。北部の門司区の人は、「遠くの(ホームスタジアム)本城競技場までは見に行けない」と言う。新スタジアムもどこに建設するかで、各地区の住民のみなさんが運動している状況ですし。だからむしろギラヴァンツを通じて、100万都市がひとつになっていく機会を作りたい。ホームゲームの試合会場は旧5市の人たちが集まり、お互いが交流できるようなお祭りの場にしていきたいですね。

鬼武チェアマンをはじめとしたJリーグの幹部からは、新スタジアムに大きな期待をかけてもらっています。近い将来、クラブ自前ではないにせよスタジアムの建設計画があるクラブはほとんどない。それも、専用球技場を造るというところはね。ヨーロッパ型の店舗や結婚式場などが入った複合施設にしたらどうか、という提案も受けました」

Q:来季はアビスパ福岡との福岡ダービーが行われます。同県内の先輩クラブについて、どうご覧になっていますか。

「私自身、昨年のクラブ社長就任以来の「研究材料」ですよ。Jクラブとして経験が豊富ですので、色々と参考にさせていただいていますよ。試合では、県内ライバルとして熱いたたかいを行いますが、興行面ではお互い協力しあわないといけませんね。アビスパとの「福北ダービー」は大いに盛り上げるでしょう。お互い、1時間あれば行き来できますから。ちょっとくらいなら、ファンの感情がヒートアップしたっていいじゃないですか。北九州の人間は熱いですから。私も地元の人間として、それをよく知っていますから」


インタビューを終えて
37番目のクラブの「見どころ」は、外に向けた華々しいものではないかもしれない。しかし、その存在意義はホームタウンに向けて強く発信されていくだろう。横手社長の言う「旧5市の感情」をつなぐものとして。そして、華やかな発展を続ける隣町・福岡に勝つこと。これが、「鉄冷え」後にやや元気のないホームタウンをどれだけ勇気付けるだろうか。この2つが達成された時、「100万都市のポテンシャル」は外に向けても発信されていく。

(取材日2009年12月7日:インタビュアー 吉崎エイジーニョ)

・横手敏夫氏プロフィール 
昭和20年生まれ。北九州市出身。長崎大学卒業後、物流会社の山九株式会社に入社。以降、同社一筋で約40年を過ごす。曰く「社長経験もなければ、サッカー経験もない」ため、2度ほど社長就任のオファーを断った。しかし、クラブ側の情熱に説得され08年10月にクラブ代表取締役社長に就任。
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