12月13日(日)2009Jユースサンスタートニックカップ 2回戦 横浜FM 3 - 1 大分(13:30KICK OFF/MM21/600人)
得点者:69'松本 翔(横浜FM)、78'片桐 瑞貴(大分)92'関原 凌河(横浜FM)、99'小野 裕二(横浜FM)
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高円宮杯全日本ユース(U-18)優勝をはじめとして、JFAプリンスリーグ関東3位、日本クラブユースサッカー選手権(U-18) ベスト8など今年1年を通じて安定して結果を出してきた横浜FMに対して、九州の誇り・大分がどんな戦いを見せるのかに注目した一戦。1回戦(2−0@西が丘)ではHondaの粘りに手を焼いた大分だが、2回戦の相手には自らが粘りを発揮する必要があった。
立ち上がりは前からプレスをかけて横浜FMを押し込む時間もあったが、15分を過ぎた頃には徐々に横浜FMに決定機を作られるようになった。ただ、試合間隔が空いていた横浜FMもあと1本、2本のパスの精度やコンビネーションが足りず、技術の高さを決定機の数に反映することができなかった。それだけに、大分にもチャンスがあり、ショートカウンターが決まれば横浜FMが焦るのか、前へのパワーが強くなるのか見てみたくなる展開のまま後半に入った。
後半の立ち上がりに大分は一度決定機を作ったがそれ以降はマリノスタイムが続く展開。横浜FMの選手の多くはトラップの技術、相手との距離感、ファーストタッチのボール置き方などのボールの持ち方が上手いから、タメを作り、かわすことが出来るので大分は後手を踏むことが少なくなかった。付いていくべきときに付いていかなかったときは決定機に繋がるチャンスをプレゼントすることもあったが、殆どの場合で大分の選手はサボることなく粘り強くアプローチをし続けて技術の差を埋めていった。
U-17代表の松原健(DF)をケガで欠いたことは残念だったが、GK・穴見健伍が味方のミスを飛び出しのよさでカバーし続けていた。また、穴見個人にとっては、実戦でこれだけピンチを迎えることは経験値を上げる意味で悪くはないし、キックの精度が高い穴見は未来の大分を支える人材。攻められることは悪いことばかりではない。
横浜FMは最初の交替カードで松本翔を63分に投入。ベンチに下がった塩田光が細かいボールタッチでスルスルとボールを動かして大分のディフェンスを疲れさせていたが、松本はキレのよさとスピードが魅力のドリブルをする選手。そして、その松本は入って6分目に右サイドからドリブルで切れ込んで、左足でゴールのファーサイドにボールを蹴り込んだ。
先制ゴールを許した大分はフレッシュな選手を投入して同点ゴールを狙う。前線からの4人プレスは衰えることなく、横浜FMのディフェンスラインを慌てさせる。それが78分の片桐瑞貴のゴールに繋がる。藤田恭輔が上げたクロスはGKが飛び出してクリアされたものの、不十分で片桐が落ち着いたヘッドでカバーに入ったディフェンダーの頭上を越える軌道でボールを流し込んだ。追いつかれた横浜FMは、小野裕二のドリブル突破などでチャンスを作り続けたがあと1本のパスの精度や決定力の不足、大分の必死の守備に阻まれてゴールを割ることができなかった。後半のロスタイムはカウンター合戦の様相になったが、どちらもゴールを決めることが出来ずに10分ハーフの延長戦に突入する。
延長戦前半、横浜FMは途中出場の保田隆介のアシストを受けた関原凌河が大分のディフェンスラインの裏を取ってこの日3本目のシュートで勝ち越しゴールを決めた。同点に追いついた勢いで延長を戦いたかった大分にとって痛い失点。7分後にはショートカウンターで松本から逆サイドで攻め残り気味だった小野裕へと繋がれ、ダメ押しとなる3点目を決められてしまう。横浜FMにとって残り時間は、長い長い延長戦となったが諦めない大分の攻撃を凌いで2冠の道・準々決勝(vsG大阪@ベアスタ)に進んだ。
横浜FMは試合間隔の問題以外に、ケガ明けや発熱などで熊谷アンドリュー、天野純らを欠いて難しい戦いになったが、それでも勝って次に繋げたことは強さの証明。右肩上がりになる流れを作ることは出来そうだ。対して、大分はトップチームが苦しい状況にあるが、ユースの選手は「自分たちがトップチームを支える存在にならないといけない」という自覚でモチベーションを高めて粘り強く戦うことが出来た。
2年生以下の選手は来年、J2で自分たちに出場のチャンスがあることを感じており、意欲が高いことは充分に感じることが出来た。第2の梅崎司(大分ユース出身。現・浦和)という期待を持っても良さそうな横山卓郎(2年)と角野翔汰(2年)のツートップはプレッシャーが強い中でも能力を発揮できた。技術・フィジカルのもう一段のレベルアップとJリーグでの経験を積めば2年後、3年後の大分を支えるエースになれるかも知れない。
また、同点ゴールを決めた片桐は大学に進学するが、「後輩には『大分を支えてほしい』と言いたい。僕らのようにトップチームに昇格できずに大学に行く選手も、4年後にはプロとして大分に戻ってチームを支えたいという気持ちが強くなっている」と話した。彼らの話を聞いていると、財政問題はクラブにとって大ピンチだが、このピンチを育成組織の選手がチャンスと捉え、何年か後には「クラブのピンチが俺たちのチャンスになった」と言える時代が来るような気がする。今年のJユースサンスタートニックカップではその第一歩を見ることが出来たのかもしれない。
以上
2009.12.14 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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