今日の試合速報

ACLE MD2
ACLE MD2

J’s GOALニュース

一覧へ

【第89回天皇杯準々決勝 仙台 vs 川崎F】プレビュー:仙台にとっては、2010年J1の前哨戦として、相手に申し分なし。熱狂のこの地から、タイトルへの渇望強める川崎Fは無事に帰還できるか。(09.12.11)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
12月12日(土)第89回天皇杯準々決勝 仙台 vs 川崎F(13:00KICK OFF/ユアスタ)
-試合速報はこちら-
----------
2009年のJ2において、仙台はリーグ制覇、そしてリーグ最少失点を記録。さらには順位表にこそ表れないのだが、警告と退場の数が非常に少なく、2年連続となるJ2のフェアプレー賞受賞(本来、J2のフェアプレー賞に賞金はないのだが、2年連続の受賞ということで、誠にありがたいことに、先日のJリーグアウォーズではチェアマン特別賞とともに、クラブに250万円もの賞金がもたらされた)も果たした。6日の優勝パレードでは3万人もの市民がチームを讃えるために市内へと集まるなど、この一週間仙台は祝祭のただ中にいた。
しかしそれとは別にめでたい出来事が、まだもう1つ残っている。「冬のこの時期、週末に公式戦があるという幸せを、選手たちにも感じてほしい」という手倉森誠監督の言葉が示すとおり、仙台は天皇杯でもJ1の大宮、F東京を続けて破り、見事にベスト8へ進出。そして迎えた準々決勝、川崎Fとの戦いの会場は、ピッチの改装を終えて再び使用が始まった7月8日の対草津戦以降、最終節の愛媛戦までの14試合、遂に一度も仙台が敗れることのなかった(12勝2分無敗)、ユアテックスタジアム仙台である。
チケットも大半が早々に売れたという。ユアスタで仙台が戦う今季最後の一日、仙台は最高の一年だった今季のカーニバルをさらに続けるべく、この街の盛り上がりそのものをもって、川崎Fを総力で迎え撃つ。ただ一方の川崎Fも、今季ヤマザキナビスコカップでは準優勝、リーグでも2位という流れを経て、残されたタイトルを目指し、仙台で散るわけにはいかない。

この戦いにおいて、見るべきポイントは少なくない。その中でもまず注目なのは、「J1最多得点クラブ」川崎Fの攻撃力と、「J2最少失点クラブ」仙台の守備力というマッチアップだ。
リーグ戦において、ジュニーニョ17得点、鄭大世14得点、レナチーニョ9得点という3トップを並べ、その後方には彼らの得点力を切れ味鋭い縦パスで引き出す日本代表・中村憲剛が並ぶ。その上ボランチの谷口博之まで8得点というのだから、川崎Fとの対戦を控えたチームの守備陣や監督の食欲も減退するというものだ。彼らに自由にやられてしまっては、それこそ試合後のユアスタのピッチ上は、草木も枯れた冬の荒野さながらの光景となることだろう。
しかし、リーグ最少失点という素晴らしい成績が示すとおり、組織だった守備からの素早い攻撃をモットーとしてやってきた仙台の選手たちは、川崎F攻撃陣のラインナップを見て胃を壊すような「草食系男子」ではない。
仙台ゴール前を固めるGK林卓人、センターバックのエリゼウ、渡辺広大という面々の顔を、選手名鑑をお持ちの方はぜひご覧になってほしい。どうだ、強そうだろう…というのは真実を含んだ冗談だが、そんなことはさておき彼らを土台に、リーグ終盤戦で好調を持続した富田晋伍、千葉直樹の両ボランチ、それだけでなく前線のFW陣までもが献身的な連携を見せる守備は、放り込み、カウンター、ポゼッション、2列目からの飛び出しなどなど、様々なパターンの攻撃に対してもしっかりと対応し、シーズンを過ごしてきた。
川崎F攻撃陣への具体的な対応としては、トップに裏を突かせず、DFラインと中盤が連動して挟み込む、という流れを継続できるか、というのが仙台の狙いだが、細かいことはまあ置いておこう。「こう言っちゃなんですが、うちは失うものが何もない。川崎Fは攻撃が売り、うちは守備で勝ってきた。どっちが上だか確認したい。今季うちは3失点以上はしていない。そういったところにもこだわってやっていきたい。100パーセントの力で勝てないのなら、120、130パーセントを出して勝ちたい」(渡辺)、「J1に行ったらどこにでも、そういうスターや代表はたくさんいる。いろんなフィニッシュのパターンを持っている攻撃陣に対しては、とにかく集中力を持って挑むこと。(失点を)0に抑えるのが一番だし、0−0が続いたら、焦るのは向こうの方だと思うから」(林)と、まるで川崎Fとやれてよかったとでも言わんばかりのコメントが、守備陣からは発せられている。
ただ個人の思いだけでなく、チームとしてもその気持ちは同じだろう。自分たちの長所である守備が、J1で最も恐ろしい攻撃に対しても通用したら、来季に向けて大きな自信になる。もしも万が一、悔しさを味わう結果となったら、それはそれで今のままではダメだという糧にすればよい。手倉森監督はこの試合を「重要な一戦だ」と選手に伝えたというが、今季の結末に対してでなく、新たな世界での戦いとなる来季に向けても、今回の一戦は大きな意味を持つ。

他にもこの対決において興味は尽きず。川崎F・中村と仙台・梁勇基という、今季戦った両リーグを席捲した稀代のゲームメーカー対決からも目が離せない。梁は2004年にテスト生として仙台にやってくる前、川崎Fのテストを受けたものの契約に至らなかったという過去が。その川崎Fで1年早くプロキャリアをスタートさせていたのが中村だった。彼らの6年越しとなる邂逅は、ユアスタのピッチにどのような「アート」を生み出すか。
川崎Fの左サイドバック村上和弘は、かつて2006年まで、仙台で昇格を目指して闘っていた。その村上とタッチライン上で相まみえる仙台の右サイドバックは菅井直樹。今季は守備でのバランスも身につけ、サイドバックとしての総合力が格段に増した。この2人、元をたどれば共に中盤の選手で、2004年、ズデンコ・ベルデニック監督下の仙台ではダブルボランチとして、飛び出しとカバーの連携に秀でた素晴らしいコンビを見せていたこともあるが、その後共にサイドバックとなり今に至る。今でも電話で話すことがあるというかつての盟友が、3年ぶりに揃ってユアスタに立つ。しかし、敵同士として、向かい合った形で。
他にも、上記の2人と逆サイドで展開される、こちらも元仙台・森勇介に、朴柱成という、超攻撃的サイドバックの激突…など、まだまだ触れるべきポイントはあるが、いかんせん文字数が足りないのでこの辺にしよう。
少なくとも(天皇杯である以上中立が基本なので、ホームとはせずにあえてこう表記させていただくが)この準々決勝の「ホスト」である宮城の地は、勝ちえたJ1の世界が少しばかり早くやってきたかのような、期待と興奮に包まれている。

以上
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/10/10(木) 00:00 ハイライト:横浜FMvs名古屋【ルヴァンカップ 準決勝 第1戦】