11月29日（日） 2009 J2リーグ戦 第50節
札幌 3 - 1 横浜FC　（13:04／札幌ド／21,463人）
得点者：23' ハファエル（札幌）、25' キリノ（札幌）、60' 三浦淳宏（横浜FC）、89' 曽田雄志（札幌）
スカパー！再放送 Ch185 11/30（月）20:00〜（解説：野々村芳和、実況：宮永真幸、プレーヤー解説：大森健作、リポーター：藤井孝太郎）
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両チームの特徴がしっかりと表れた試合だったと言っていいだろう。札幌は、守備では高い位置からハードにプレスを仕掛け、奪ったボールを素早く前線に当ててそこから展開していくという、今シーズン目指してきたスタイルが立ち上がりから充分に表現されていた。一方の横浜ＦＣも４−４−２のシステムで全員がバランスよくブロックを形成する守備戦術で、攻撃でも「今シーズン、ブレずにやってきた形で何回かチャンスを作ることができた」と樋口靖洋監督も、敗れはしたもののある程度の満足感は得られた様子だった。

そうした展開のなかで要所を押さえたのが札幌だった。横浜ＦＣのようにバランス良く守備網を張るチームを崩すのはそう簡単ではない。しかし、札幌は１トップのキリノにクサビのパスを当てて相手の守備ラインにギャップを生み出す、あるいは素早いパス回しで左右に揺さぶりをかけることでサイドにある僅かなスペースを広げていくという作業を丹念に繰り返すことで相手守備を攻略してみせたのだ。得点シーンだけを見ればハファエルの豪快なミドルにキリノの独力による突破、そしてＰＫによるものだったが、ハファエルの得点はキリノが上手くボールをさばいて演出したものだったし、キリノのダイナミックなゴールもチームとしての「攻守の切り替え」が生きてのものだ。

総括的に言えば、最終スコアである３−１という数字は力の差が表れたものである。ただし、横浜ＦＣの方に勝つチャンスがなかったわけではない。６０分に三浦淳宏がスーパーな直接ＦＫを叩き込み、０−２という２点差を追う状況から１点差へと詰め寄っている。その後は札幌がハファエルのシュートがバーに嫌われる、ＣＫをキリノが頭で合わせるも横浜ＦＣのＧＫ大久保択生のファインセーブに防がれるなど、決定機をなかなか決めきれずにいたため、横浜ＦＣがどこかのタイミングで効果的なチャンスを生み出し、同点にすることができていれば結果はどうなっていたかわからない。

ただし、残念ながらそういう流れに持ち込めそうな展開にならなかったことも事実として捉えるべきだろう。後半立ち上がりにＦＷ安孝錬が投入されているが、この交代について樋口監督は「正直、彼のコンディションはまだ上がりきっていませんでした。私のなかではもう少し遅くてもよかったかな、と考えていました」としているが、ビハインドを負った試合展開のなかで、ベンチにいるＦＷをすんなり投入、というわけにはいかないというのがこの日の横浜ＦＣの現実的なチーム状況だったということだ。樋口監督としてはシステムを変更して勝負を仕掛ける、という策も頭にはあったかしれないが、それも難しい状況だったのだろう。

後半ロスタイム、今シーズン限りでの現役引退を表明している札幌のＤＦ曽田雄志が自ら得たＰＫを、蹴り直しという判定がありながらもしっかりと決めて札幌での選手としての最後のホームゲームを得点で締めくくった。そして曽田はこのＰＫを蹴る際に、対戦相手である三浦知良、三浦淳宏から「ちゃんと決めろよ」とエールを贈られたという。

プロサッカーというのは厳しい勝負の世界。でも、時にはこういうシーンだってある。こうしたシーンの善し悪しを議論することは何の意味も持たない。グラウンドで戦っている男たちにしかわからない感覚や領域というもあるのだろうから。ちなみに、議論の意味を否定しておきながらこういうことを言うのも何だが、筆者は「善し」だと思っている。いろんな出来事があるからこそサッカーは面白いのだし、大人が本気で泣いたり笑ったり、時には怒ったりできるんだと思う。

あと１節を残すのみとなったリーグ戦。石崎信弘監督が口にしたように、「長いようで、早かった」。

以上

2009.11.30 Reported by 斉藤宏則