平塚競技場のメインスタンドに、そこでしか見られない旗がある。クラブボランティアのひとたちが無償で貸し出している応援用のそれは、昨年7月の仙台戦以来、晴れた休日の試合やここぞの決戦で必ずお目見えし、スタジアムの一画を青く染めてきた。
発端は、「メインスタンドを盛り上げたい」というサポーターの思いだった。そうすることで、スタジアムの一体感はさらに高まるだろう。ただ、なかには応援に慣れていないひとや、応援したいけどやり方がわからないひともいるかもしれない。応援にはいろんな表現があるが、いちばん取っ付きやすいかたちはなんだろう…。
そこで浮かんだのが旗を振ることだった。とくにメインスタンドには子どもたちが多く、まずは旗を振るところから子どもたちに応援を楽しんでもらいたいと考えた。さらに、旗を貸し出すことにすれば、持ち運びの負担がなくなり、より手軽に応援を楽しめる。2007年末ごろに練り始めたプランはこうして、クラブとセッションを重ねながら実現に至った。
旗のデザインもクラブボランティアが主導した。「HEART&HARD」を掲げる湘南らしく、鮮やかな青と黄緑にハートがあしらわれており、軸に巻きつけると手元にもハートが浮かぶ。バックスタンドに現れる大きなハートと呼応するかのようだ。この旗をキックオフの1時間前を目安に配り始める。観客が多く入った試合では、10分あまりで「完配」したこともあるという。
ところで、貸し出すということはつまり、毎回返してもらわなければならない。目を引くのはその回収率である。いや、借りたものを返すのは道理なのだけれど、世の中なかなか道理どおりにはいきません。実際、「配った3分の1ほどは返ってこないかもしれない」「5、6試合でストックがなくなってしまうんじゃないか」と、当初は懸念していたそうだ。だがフタを開けてみると、おおよそ配布300本につき10本程度の紛失にとどまっているという。たとえば9月の神奈川ダービーでは266本配って261本を回収し、先日の東京V戦でも配布349本で336本が戻ってきた。当初は「返してください」と掛けていた声も、いまでは自然と所定の箱に戻されるようになったため必要がなくなった。きちんと軸に巻いた状態で返却されることも少なくないという。
スタッフのひとりは言う。
「私たちの提案を許可してくれたクラブの心の広さと、利用者の皆さんの協力に感謝しています。この旗を振ることをきっかけに、たくさんのひとたちが応援を楽しんで、リピーターになってくれたらうれしいですね」
いずれ、配った旗のすべてが回収される日も来るのではないだろうか。そんな光景もまた湘南らしい。ハートを掲げる湘南とハートを振る湘南サポーターの、ちょっとハートフルな話。
以上
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2009.11.17 Reported by 隈元大吾
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