11月14日(土) 第89回天皇杯4回戦
鳥栖 1 - 3 G大阪 (13:01/広島ビ/2,045人)
得点者:9' ルーカス(G大阪)、40' ペドロ・ジュニオール(G大阪)、47' ハーフナー マイク(鳥栖)、50' 明神 智和(G大阪)
☆天皇杯特集
★スカパー!×ELGOLAZO×J's GOAL J2シーズン表彰2009★
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誰でも、想定どおりにことが進まなかった場合、その対応能力の差が結果に大きく影響する。事前にあらゆる現象を想定し、シミュレートしておけばある程度の結果を得ることができ、最悪の状態を回避できる場合もある。しかし、相手のあるサッカーでは、そうならないから面白さもあるし、現実の実力差を痛感することもある。第89回天皇杯全日本サッカー選手権(以下、天皇杯)4回戦の鳥栖対G大阪戦では、想定どおりにことが進まなくても得た結果に違いが生まれ、その実力差を知らしめた内容だった。
G大阪のキックオフで始まったこの試合、両チームとも4−4−2のシステムで臨み、主導権を握るべく激しくボールを動かした。サッカーは、ボールを保持しているのか、していないのかで攻守が分かれるスポーツである。ボールを保持すれば、得点を得るために相手ゴールに近いところでボールを動かし、スキを突いて攻め込むことになる。このボールを保持した際に、回す位置がG大阪はハーフウェイライン近くであり、鳥栖は自陣ゴール近くであった。相手ゴールに近ければ近いほど、得点の可能性が高くなるのは周知の事実。3分には、G大阪が最初のCKを得て、試合を優位に進めていた。特にFWのルーカスは、自身がゴールに向かうだけでなく、起点となっては中盤の選手の攻撃参加を誘っていた。それが、結果と出たのが9分である。ルーカスからのボールをMF橋本英郎が仕掛けて鳥栖ペナルティエリア内でPKを得た。これで俄然、G大阪が優位に試合を運ぶことになる。
鳥栖はルーカスの起点となるプレーも橋本英郎の攻撃参加も想定していたに違いない。しかし、ここで橋本英郎の勢いを止めるためにPKを与えることは想定外である。そして、この時間帯に先制点を奪われることもそうであった。しかし、試合時間はまだ十分にあるのであわてる時間帯ではない。落ち着いて相手の攻撃の芽を摘み、反撃のチャンスを伺えばいいのである。しかし、G大阪は鳥栖にそうはさせず、鳥栖がつなぐボールをインターセプトしては、流れを手放すことはなかった。25分には、鳥栖CKからのDF飯尾和也のヘディングシュートがクロスバーに当たるシーンもあったが、高い位置でボールを回し、鳥栖のプレスをいなしては度々鳥栖のゴールを脅かした。40分には、ハーフウェイライン近くで鳥栖DFのパスをインターセプトしたMF佐々木勇人が、ルーカスに渡してペドロ・ジュニオールの追加点をお膳立てした。
鳥栖は失点をせずに、先制点で勝つサッカーを身上としている。「PKで奪われ、自分たちのミスで追加点を奪われたら、取り返すことはとてもきつい」(MF島田裕介/鳥栖)ことを想定しているはずがない。勝者となるために、鳥栖は後半に入って反撃に転じた。47分にG大阪陣内の深い位置でこぼれ球を拾ったMF高地系治がFW山瀬幸宏と細かなパスをつなぎ、島田裕介のセンタリングからFWハーフナー マイクの得点を生んだ。追いかける側の得点はチームに勢いを与えるもので、前半の劣勢を一気に取り返すのではないかと期待を持たせたが、この期待を7分後にMF明神智和が右足一蹴で打ち砕いてしまった。この3点目のアシストはルーカスがポストプレーで落としたもので、鳥栖の中盤のスキを突いたものだった。「もともと、力のあるチームに余裕を持たれてしまった」(岸野靖之監督/鳥栖)のでは、3回戦で広島を破った鳥栖とはいえ、試合をひっくり返すことは難しい。終わってみると、G大阪の試合運びのうまさと鳥栖のミスが目立つ内容となり、得点差以上に実力の差を見せたものだった。
「勝ったから良かったものの、この内容ではリーグ戦では危ない」とDF山口智は試合後に自分たちのサッカーをこう評した。勝利した西野朗監督も「ガンバらしいリズムが見られず、次節(J1第32節清水戦)につながるものではない」と内容に満足してはいなかった。天皇杯の連覇を目指すチームならではの、高い意識とモチベーションを見せてくれた。これも、想定していた内容ではなかったための戦評であり、その証拠に「彼本来の動きではなかった」と佐々木勇人を後半開始から交代させている。相手がどこであれ、目指すものが高いチームのうまさと厳しさを見せた試合であった。
西野朗監督は、試合後に「ガンバのスタイルは攻撃的と思われるかもしれないが、その一歩は守備から」と語ってくれた。鳥栖の選手は、異口同音に「自分たちのミスで苦しくなった」と振り返ったが、そう思わせたところにG大阪のうまさがあったのではないだろうか?鳥栖にミスを起こさせる守備。鳥栖の選手がボールを持つと、パスコースを限定させ、パススピードが遅ければインターセプトを狙い、パスが通されても危険を回避できるように守備をしていた。そして、苦し紛れにロングフィードをさせては、セカンドボールを拾う準備をしておくことができるブロック形勢で待ち受ける。目指すものが高いチームは、うまさと厳しさをあわせ持つ必要も見せてくれた。G大阪の監督と選手たちにとっては、内容は不満足だったかもしれないが、筆者には十分にサッカーの奥深さを見せてくれた試合だった。
置かれている立場が違えば、目標も過程も違うものとなる。それは、至極当然なことで、価値観などの違いにも通じる。勝者にも敗者にも、得たものがあるに違いない。そして、勝利の経験は自信となり、敗れた経験は新たな目標を見出す。サッカーを知れば知るほど、その魅力が見えてくる。
以上
2009.11.15 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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