10月31日(土)第89回天皇杯3回戦 広島 vs 鳥栖(15:00KICK OFF/コカ広島)
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鳥栖・岸野靖之監督の退任が決まったことが、天皇杯の戦いにどう影響するか。そんな質問をペトロヴィッチ監督にぶつけてみた。
「こういう場合は、ポジティブにもネガティブにもチームが揺れる場合がある」とペトロヴィッチ監督が言う。「ただ、岸野監督と鳥栖の選手たちとの間の関係は良好なように感じられる。選手たちは『監督のために』と燃えてくるはずだ」
ただでさえ、J2のチームはJ1との対決に闘志を燃やすもの。昨年の広島がまさにそれ。東京V・川崎Fと自分たちのパスサッカーを披露して撃破し、柏をあと一歩まで追いつめた激闘は、今もサポーターの記憶に残っている。当然、鳥栖の選手たちの対広島戦に対するモチベーションも高いはず。さらに「勝ち続けて、監督と少しでも長くサッカーをやりたい」という想いでまとまっているとすれば、広島にとって脅威だろう。
強い気持ちをベースとした運動量と球際での戦いで上回ることで、クオリティの差を埋めることができるのがサッカーというスポーツ。まして広島と鳥栖の間に、日本代表とブラジル代表ほどの差があるはずもない。少しでも広島が受け身になれば、鳥栖の闘志と運動量に試合を制される恐れもある。
だからこそ、ペトロヴィッチ監督は今週の練習で選手たちを何度か集め、この試合の難しさを説いた。それはもちろん、リーグ戦での0-7という歴史的大敗(前節・川崎F戦)の後だから、でもある。多くの選手たちが「これまでのサッカー人生で記憶にない」という0-7というスコア。「切り替えているように見えても、心のどこかに敗戦の痛みが残っているものだ」とペトロヴィッチ監督は言う。そのネガティブなムードをひきずってしまっては、難敵・鳥栖に勝つことは難しい。まして週末の試合に負傷のストヤノフは間に合わず、ほかにもコンディション不良のため出場が微妙な選手たちも数人。ベストメンバーが組めない悩みも、チームを苦しめる。
しかし、指揮官は「プレーできる選手たちで最善を尽くす。優勝すればACLの出場資格を得られる大事なタイトルマッチなんだ」と語る。そのための手段として、鳥栖戦では森崎和幸をリベロに下げ、中島浩司をボランチで起用する予定だ。
もちろん、復帰間もない森崎和のコンディションに配慮する意味もあるが、戦術的にはよりバランス感覚に長けパスの精度も高い森崎和を最後尾に配置してチーム全体に安定感を生み出し、より攻撃的な中島をボランチに置くことで前への推進力を高めようという意図。「もう一度、攻撃的なサッカーのスイッチを入れ、いい時の自分たちのプレーを思い出したい」と槙野智章は言う。広島の広島らしさたる由縁を現状のメンバーで最大限に活かそうという意思で、チームはまとまっている。
一方、鳥栖の現状も、広島同様に厳しい。J2リーグ戦では、3位甲府との勝点差が11ポイントに広がり、残り4試合での逆転昇格が難しくなった。高地系治や高橋義希ら主力選手たちの怪我による離脱が相次ぎ、リーグ戦47試合を戦ったことで蓄積した疲労も半端ではない。逆転を期した仙台・湘南・甲府との上位直接対決3連戦で1分2敗と結果を残せず、精神的なショックも少なくないはず。昨年のJ2リーグ戦で、鳥栖は広島に3連敗。苦手意識も少なからずあるかもしれない。
しかし、「今年の鳥栖は昨年のチームよりもクオリティが高い。特にハーフナー・マイクの高さに、トジンや山瀬幸宏、島田裕介らが絡んでくる攻撃は要注意だ」とペトロヴィッチ監督は評価。槙野も「岸野監督の熱いキャラクターがそのまま選手に反映されているチームで、自分にとっては嫌なスタイル。簡単に勝てる相手ではない」と警戒を口にする。ただ一方で、広島が誇る超攻撃的ストッパーは、こんな言葉も口にした。
「相手のことばかり気にしても仕方がない。自分たちのサッカーを貫いて、元旦にはロイヤルボックスで天皇杯を掲げたい」
前節・川崎F戦での広島の若者たちは、打たれても打たれてもなお立ち上がり、一人少ない状態をも顧みず得点を奪うために走り続けた。
「リスクを恐れて、サッカーはできない」
2006年、ペトロヴィッチ監督が就任して最初に言い放ったこの言葉を胸に、選手たちは再び、前へと走る。鳥栖の選手たちもまた、J1への挑戦精神と去り行く名将・岸野靖之への想いを、天皇杯での広島戦にぶつけてくるだろう。熱い、とにかく熱い闘いになることは、疑いない。
以上
2009.10.30 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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