10月28日(水) AFCチャンピオンズリーグ
名古屋 1 - 2 アルイテハド (19:00/瑞穂陸/11,046人)
得点者:43' サレハ・アルサクリ(アルイテハド)、59' アミン・シェルミッティ(アルイテハド)、67' 杉本恵太(名古屋)
■11/7開催、ACL決勝@国立のチケット情報
■決勝戦は アルイテハドvs浦項 に決定!
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「全員を代えるわけではないが、攻撃的な選手を使いたい」
前日会見でオフェンシブに戦うことを明言したストイコビッチ監督は、その言葉通りの布陣に決勝進出への望みを託した。アウェイでの第1戦で2−6の大敗を喫した名古屋に必要なのは最低でも4得点。普通に戦っていては埒があかない点数だが、それにしても思い切った11人のメンバーを、指揮官はピッチに送り出してきた。
フォーメーションはベーシックな4−4−2ながら、2トップはケネディと巻佑樹のツインタワーを選択。サイドハーフには玉田圭司とマギヌン、ボランチは本来アタッカーであるブルザノビッチと三都主アレサンドロが務めた。これだけでも中盤から前は全員が攻撃の選手となる。そしてさらに右サイドバックには小川佳純を起用し、11人中7人が攻撃的なプレーヤーとなる超攻撃的布陣が完成した。守備を度外視したメンバー構成には不安も残ったが、いずれにせよ4得点できなければ何も変わりはしない。明確なメッセージが込められたスタメンは、名古屋の置かれた立場を最も端的に示していた。
一方、0−3までは負けでも決勝進出が決まるアルイテハドだったが、試合4日前の24日に来日する念の入れ様。カルデロン監督も「守備には依存しない。第1戦が0−0のつもりで戦う」と油断と慢心を排除してきた。スタメンにはタカルが出場停止から復帰。イエローカードが累積しているアブシェルアンをベンチに置き、同じく決勝での累積警告が怖い左サイドバックのアルサクリをサイドハーフで起用する余裕すら見せつつ、アウェイでの決戦に臨んできた。
試合はキックオフから両チームの狙いがくっきりとピッチ上に映し出された。いきなり巻の空中戦で挑みかかり、その後も二の矢、三の矢とばかりに打って出た名古屋に対し、アルイテハドは明らかな時間稼ぎを前半から仕掛けてくる。ボールを奪ってものらりくらりとパスを回し、時にはカウンターのチャンスですらも、サイドでボールをキープする。俊足のFWシェルミッティは攻守に精力的に前線でのチェイシングを見せていたが、それも単発。序盤は名古屋がペースをつかみ、隙の多いアルイテハドDF陣に次々と襲い掛かっていった。
だが、前がかる名古屋の攻撃が実らない。サイド攻撃を中心にゴール前までボールは持っていけるものの、フィニッシュの精度が低く決定機となっていかない。逆にアルイテハドは徐々にペースを上げ、時間稼ぎの中にもカウンターの危険性をちらつかせ始める。21分にハリリが強烈なボレーシュートで名古屋ゴールを脅かすと、31分にはアルサクリが抜け出しシュート。どちらも得点にこそならなかったが、けん制には十分な威力があった。
そのまま前半が終了するかと思われた43分、名古屋にとって悪夢のような場面が訪れた。相手陣でスピードアップを図ったパスが乱れカウンターを食らうと、全員が前への意識を強めすぎていた選手の戻りが遅れる。一気に攻めに転じたアルイテハドがあっという間に3対5の数的優位を作ると、右からのセンタリングを最後はアルサクリに詰められてしまった。4得点のために背負ったリスクが裏目に出る悪循環。これでノルマは5得点に引き上げられてしまった。
名古屋は後半開始から巻に代えて中村直志を投入。ブルザノビッチを前線に上げ、よりバランスの取れた布陣で追い上げを狙った。しかし前半の失点時に起きたような攻撃と守備の分断化を押しとどめることができず、組織のつながりが見えてこない。すると59分にアルイテハドが追加点。今度はクリアボールを前線でキープされ、守備には十分な人数がいたにもかかわらず、ピンポイントでゴール前のシェルミッティの頭に合わされた。これで名古屋に必要なゴールは絶望的な6得点にまで膨れ上がった。
その後、玉田を杉本恵太に、三都主を吉村圭司に代えた名古屋は後半で相手の倍となる12本のシュートを放ったが、決まったのは杉本の芸術的なオーバーヘッドキックのみ。大会ベストゴールに挙げてもおかしくないアクロバティックなシュートだったが時すでに遅し。結果として捨て身の特攻が裏目に出た名古屋は、連敗で2試合合計3−8の大差をつけられ敗戦。国立での決勝に駒を進めることはできなかった。
この試合で際立ったのは、両チームの試合運びと個人能力における実力差だ。アルイテハドは序盤で時間稼ぎに走るように見せておいて、徐々にカウンターに鋭さを増していった。つまり、自分たちが攻めないフリをして名古屋を釣り出し、試合を決定付けるアウェイゴールのチャンスを倍増させていたわけだ。その戦い方を可能にしたのが、スローペースの中で2人、3人と囲まれてもボールをキープ、あるいは前線へクリアできてしまう個人能力だった。この試合でのアルイテハドはクリアの数こそ多いが、クリアするまでに数本のパスをつなぐだけの余裕があった。それは試合後に三都主が語った「マリーシア」( /jsgoal_archive/jsgoal/detail.php?press_code=00091750 )につながるものでもある。
その意味で、名古屋はまだまだ若い成長途上のチームだった。メンバーの平均年齢も低ければ、指揮官の指導者歴も浅い。過去にAFCチャンピオンズリーグを2度制覇し、各国代表選手を多く揃えるチームに対峙してみて、改めてそのことが浮き彫りになった。準決勝まで勝ち抜いてきた実力は本物だが、本当の大一番でその若さが敗因のひとつになったことは否めないだろう。悔しさだけが募る負け方で、名古屋の「新たな冒険」(ストイコビッチ監督)は終焉の時を迎えた。だが、チームの戦いはまだ終わってはいない。この経験を今後に活かしていくためにも、残るシーズンで成長した名古屋の姿を見せてほしいものだ。
以上
2009.10.29 Reported by 今井雄一朗
J’s GOALニュース
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