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【J1:第30節 川崎F vs 広島】レポート:スタイルを持つチーム同士の対戦は大量7得点で川崎Fに軍配。大敗にもベクトルの揺らぎが見られない広島の結束も印象に残った。(09.10.26)

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10月25日(日) 2009 J1リーグ戦 第30節
川崎F 7 - 0 広島 (18:03/等々力/18,946人)
得点者:18' ジュニーニョ(川崎F)、61' 鄭大世(川崎F)、70' 田坂祐介(川崎F)、74' レナチーニョ(川崎F)、85' 中村憲剛(川崎F)、86' 登里享平(川崎F)、89' ジュニーニョ(川崎F)
スカパー!再放送 Ch183 10/26(月)17:00〜(解説:川勝良一、実況:西岡明彦、プレーヤー解説:名波浩、リポーター:高木聖佳)
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リーグタイトルを狙う川崎Fにとっては非常に大事な一戦だった。前節終了時点で川崎Fは、06年以来3シーズンぶりに首位に。リーグ戦の残り5試合を勝ち続ければ優勝できるという位置にたどり着いていた。ただ、当然の事ながら現時点での首位という順位が、リーグタイトルを保障しているわけでもない。一つでも負ければ首位陥落の可能性は高く、実際に土曜日の試合結果により、この広島戦を落とせば2位転落が現実のものとなっていた。そうした状況にある川崎Fにとってこの広島戦は、優勝に向けた「一つのヤマ」(鄭大世)となる試合だった。

攻撃力の川崎Fに対し、広島は連動性と流動性を運動量によって紡ぎ出すチームである。打ち合いを覚悟する中で始まった試合は、意外な軌跡をたどる事となる。

川崎Fは開始7分の森勇介のポスト直撃のミドルシュートを皮切りに立ち上がりから攻撃に打って出る。首位の立場を守ろうという姿勢ではなく、首位の座を掴み取ろうとする姿勢が如実に出ていた。対する広島も得意のパスワークと2列目以降の選手が絡む攻撃を展開。10分には佐藤寿人をターゲットにしたロングフィードのこぼれを、高萩洋次郎がフォローし、あわやという場面を作り出していた。お互いに決定機を作り出していたという点で緊張感のある序盤となる。

攻守のメリハリの付いた殴り合いは、ワンプレーで局面が変化する一進一退の様相を見せていた。そんな中、川崎Fは前半18分に森勇介からのスルーパスにジュニーニョが鋭く反応し先制ゴールを手にする。1点リードの優位性の中で波に乗りたい川崎Fに追い風が吹くと思われたのが前半25分の事。広島の森脇良太がこの日2枚目の警告を受けて退場したのである。ところが広島は、その後も数的不利を感じさせない攻撃を展開するのである。関塚隆監督はそうした広島の攻撃について次のように述べている。

「15番(高萩)のところと、10番(柏木)、6番(青山)。ここのところが横山と田坂とで3対2になっていた」

つまり数的不利を機動力でカバーし、1点を返すべく広島は攻撃に枚数を割いたのである。対応を迫られた川崎Fはたまらず中村憲剛のポジションをピッチ中央部へと移し、中盤で最低限数的同数を保とうとした。そして実際に川崎Fの中盤は局所的には安定感を取り戻す事となる。ただしその影響はチーム全体へと波及しており、時折見せる広島の大きな展開にひやりとさせられる場面が続くのである。その点について関塚監督は「全体的なポジションを指示するにはちょっとまだ時間がかかった」と指摘。今後の課題であると言葉を付け加えていた。

一気に得点を畳み掛けたかった川崎Fにしてみれば、前半25分からの20分間あまりは難しい時間帯だった。チャンスはあるのだが決めきれない。そして広島は大胆に枚数をかけて反撃を試みる。そんな展開の中、選手たちの脳裏には7節のアウェイでの広島戦、川崎Fが先制し広島に退場者が出ながら同点に追いつかれた、が浮かんでいたのだという。

たとえばジュニーニョは「退場者が出た後に、(伊藤)ヒロキと(中村)ケンゴと話をして同じ集中力で戦おう」と声をかけていたのだという。ペース自体は川崎Fが手にしつつあったが、時折見られる広島の鋭い攻撃をいかにしのぐのか。結果的に、前半25分からの20分間を川崎Fがうまく乗り切れたことがこの試合の流れを決める一つのポイントとなった。

ハーフタイムを境に落ち着いた後半は川崎Fのペースに。立ち上がりから猛攻を仕掛けるが、広島も堅守でこれに対応。ゴール前にブロックを作る事で川崎Fに付け入るスペースを与えなかった。川崎Fにとって焦れる展開は、しかし61分に広島のミスによって解消される事となる。試合の流れを決定付けた2点目は、パスをつなぎながら崩して行くという広島のポリシーが裏目にでた得点だった。その点について質問されたペトロヴィッチ監督は「後ろからしっかりとつないで行くというのが我々のスタイル」であるとし、ミスになったショートパスを肯定。さらに自説を続けた。少々長いが、この試合のポイントであり、広島の哲学が良く出た言葉だったので監督会見を多少整えながら引用したい。

「GKがポゼッションに参加する事により、後ろから良い形で崩せる場面があります。ですからミスもあると思いますが、引き続き我々のスタイルを続けたいと思います。
私の意見ですが、モダンなサッカーではGKもつなぎに参加できなければならない。それがモダンなサッカーだと思います。もしかしたら私自身が間違っているのかもしれませんが、私はそう思います」

1点のビハインド、かつ退場者が出る。そして明らかに川崎Fから狙われていた自陣からのパス回しを奪われて失点。しかしそれでも愚直にそのスタイルを追求したいと発言するペトロヴィッチ監督。パスを根拠に広島のサッカーが醸成されてきた事を考えれば、パスサッカーは絶対に曲げてはならない精神的支柱なのだろう。

我慢していた広島が、彼らのミスで1点を失った事で試合はパワーバランスを崩す。反撃を試みる広島は勇敢に前線に人数を割いて得点を狙い、川崎Fはカウンターで応戦する。61分に川崎Fが2点目を決め、そこから試合終了までの30分あまりの時間帯で川崎Fは5得点しており、鄭大世が決めた2点目がこの試合の流れを決定付けたと言っていいだろう。

川崎Fは81分に投入された18歳の登里享平が85分にキャリア初のアシストをマーク。さらにその1分後の86分にプロ初ゴールをマークするなどして大量7得点。山場の一つと目されていた広島戦で大勝し、首位の座を守った。ACL敗退後、精神的に立ち直った川崎Fがリーグタイトルへの歩みをまた一歩進めた。

一方敗れた広島は、それでも彼らが続けてきたサッカーを追及するのだと指揮官が表明し、結束に揺らぎは見られない。大量失点にも声援をやめなかったサポーターに対し柏木陽介は「サポーターも最後まで応援してくれていましたし、彼らのために1点が必要でした。自分たちのサッカーを貫いてやりぬきたかった」と肩を落としていた。良いサッカーと勝てるサッカーとが融合するのは難しいのかもしれない。ただ、そのスタイルの完成を目指そうとする広島というチームの、その姿勢が印象的な試合後だった。

以上


2009.10.26 Reported by 江藤高志
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