この仕事をしていて、うれしいことがある。その一つが、取材しているチームを去った選手や現役を引退した選手とサッカーの現場で再会することだ。特に志半ばでユニフォームを脱いだ選手がしっかりと第二の人生を踏み出し、充実した表情で仕事に取り組んでいる姿を見るとうれしい気持ちでいっぱいになってしまう。
10月15日、水戸は江戸川大学と練習試合を行った。その場に現れたのが、椎原拓也であった。06年から3年間水戸の中盤を支えたMF。今年からは江戸川大学でコーチをしており、部員を引き連れての登場となった。指導者に転進した椎原の表情は現役時代よりも大人びた感じがした。本人は「少し太っただけですよ」と謙遜したが、顔つきは生き方によって変わるものなんだなということを痛感させられた。
しかし、現役時代と変わってないものもあった。それは優しい笑顔だ。現役時代から誰からも愛される温和な性格をしていた椎原。それがゆえに、プレーのいやらしさみたいなものがないことがネックとなってしまったのは事実だが、それでも椎原の実直な性格は彼にとっての最高の財産と言えよう。「シイ!」。練習試合前、かつて一緒にプレーをした水戸の選手や木山隆之監督らが次々と椎原のもとに駆け寄ってきて、談笑を交わしていた。誰の顔にも浮かび上がっていたのは笑顔であった。そこに椎原拓也という男の人となりが表れていた。
今もそんな感じで選手たちから親しまれるコーチとして活躍をしているのは容易に想像がつく。本人は「選手とコーチではまったく違いますよね。本当に難しいです」と頭を悩ませているようだが、コーチとして歩き始めてまだ約半年。これから様々な経験をしてコーチとしてさらなる成長を遂げていくに違いない。彼は優しいだけではなく、アマチュアからプロの道に這い上がってきたガッツもある。現役時代さながらの不屈の闘志を持って、熱い指導をしていくことだろう。
「まずはJリーガーを1人でも出したいですね」と椎原は語る。まだ江戸川大学からJリーガーは輩出していない。さらにチームも千葉県1部リーグを勝ち抜けず、関東リーグには手が届かない状況で、大学サッカー界においてまだ「強豪」にはなりえていない。しかし、今年3月にバイエルン・ミュンヘンの練習場と同じ人工芝を使ったグラウンドを作るなど大学側も本格的な強化に乗り始めており、今は変革の時期にある。今後の飛躍が期待されているのだ。そこに元Jリーガーとして椎原の力は欠かすことができないのである。プロの世界で培った貴重な経験とサッカーの知識を還元して、部員に成長をうながしていくことが求められている。
椎原拓也の新たな挑戦。いつか椎原が手塩にかけた選手が水戸のピッチを駆け回る日が来るかもしれない――椎原の笑顔に、僕はそんな夢を抱いている。
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2009.10.16 Reported by 佐藤拓也
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