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【J2:第43節 鳥栖 vs 岐阜】レポート:『勝利』にこだわる。『結果』にこだわる。様々なプレッシャーを跳ね除けて鳥栖が辛勝。『若さと勢い』を見せた岐阜は、終盤に力尽く。(09.10.05)

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10月4日(日) 2009 J2リーグ戦 第43節
鳥栖 1 - 0 岐阜 (16:03/佐賀/6,011人)
得点者:86' ハーフナーマイク(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch183 10/5(月)19:00〜(解説:乾眞寛、実況:南鉄平、リポーター:ヨンヘ)
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今節のレポートは、読者諸兄の立場によって非常に不愉快になるかもしれないことを冒頭でお詫びする。そして、文末での結びの言葉に、それぞれの立場があることを再認識して欲しい。第43節鳥栖対岐阜の一戦は、純粋にサッカーというボールゲームだけではない奥深さを感じた試合だった。

鳥栖は、今節を迎えるまでに3連勝を4回記録している。しかし、4連勝はいまだに成しえていなかった。5位につけているとはいえ、残り試合を考えると『勝利』が最低条件でもある。前節までの直近3試合は、今季未勝利のチームと連戦だった。そして、今節からの主戦場を使い慣れたベストアメニティスタジアムではなく、佐賀県総合運動場陸上競技場となった。永年夢見たものが目の前に迫ってきている。自らの手でつかめるところまで来ている。選手やスタッフだけでなく、サポーターもファンもかなわぬ夢ではないことを信じている。そんな中で、今節は岐阜を迎えての戦いだった。

受けるプレッシャーやそれぞれの思いが交錯したに違いない。得てして、集中力が途切れたり、自信喪失につながりかねない。緊張もあるだろう。あきらめや妥協もあるかもしれない。成しえなかった時の言い訳が、試合前に頭によぎったかもしれない。それでも、彼らは最高の結果を自らの手でつかみ、次節へと望みをつなげた。そして、我々応援する側にも期待と希望を与えてくれた。

互いに放ったシュートは14本ずつ。攻撃的な位置に入った選手が、その大半を放っているということは、ノーガードとは言わないが、激しいパンチの応酬を見せた内容だった。しかし、ゴールネットを揺らしたのは、86分のハーフナーマイクのヘディングシュートだけだった。
岐阜にもネットを揺らすチャンスはあった。69分には岐阜FW佐藤洸一が鳥栖GK室拓哉と1対1になるシーンもあった。前半にも幾度となく、鳥栖のゴールに迫るシーンがあっただけにハーフナーマイクが決めたゴールは鳥栖に最高の結果を呼びこみ、岐阜には悔やまれない失点となったに違いない。『勝利に対する執念』の差が出たゴールともいえる。

「サッカーは90分間を通して、自らの手で流れを引き寄せ、相手に元気を与えないこと」と常日頃から岸野靖之監督は選手たちに言っている。岸野監督は、今日の試合でそれを実践した。それを象徴するシーンが2つある。
一つ目は、前半終了のホイッスルが鳴った瞬間に、通訳の平良ウィルソンよしのぶ氏を呼んで、ボランチのホベルトに指示を与えたシーンである。「岐阜の激しいプレスをかわすために、後半はもっとボールを散らせ」とホベルトに伝えた。選手たちを慰労する前に、前半の課題をあげる前に、後半に『やるべきこと』を冷静に判断しホベルトに伝えていた。
二つ目は、86分の決勝ゴールが生まれた直後である。歓喜する選手たちとは別にここでも、ウィルソン通訳に「ホベルトには守備に専念すること、トジンにはもっと前からボールを追う」ことを伝えるように指示している。いつもの岸野監督ならば、派手なガッツポーズに雄たけびをあげていたに違いない。しかし、この日は、『勝利にこだわる』ためのプレーをあの状況で考えていた。ここにも、鳥栖の『勝利に対する執念』を見ることができる。当然のごとく、選手たちはそれに応え、勝点3をものにした。

岐阜の選手たちは、若さを前面に出して試合開始から鳥栖にプレッシャーをかけてきた。MF嶋田正吾は「前後半を通して、うちのサッカーができた」と胸を張った。しかし、結果は残念ながら伴うことはなかった。若さだけではない。左サイドDF秋田英義は最後まで前線をうかがう姿勢を見せた。菊池完も中盤で鳥栖の攻撃の芽を摘んだ。MF嶋田は、起点となるだけでなく果敢にFWを追い越してゴール前に顔を出した。その結果、FW西川優大と佐藤は、合計6本のシュートを放つことができた。「結果を得ることはできなかったが、下を向く内容ではない。これを続けること」と松永英機監督(岐阜)は、試合後に評価した。『若さと上手さ』を融合し、全員で『勝利に対する執念』を岐阜も見せてくれたことで、今節の試合は白熱した好ゲームとなった。

様々なプレッシャーと思いを背負い込んだ選手たちには、今節の硬いピッチではボールをコントロールすることが難しかっただろう。意図したように転がらないボールは、たびたび選手たちの判断を誤らせたかもしれない。
しかし、それもサッカー。ボールが思うように転がらなければ、浮いたボールを処理すればいい。この日のハーフナーマイクは、6本中4本がヘディングシュート。シンプルにボールを前線のターゲットに送った結果である。今節の鳥栖は、『奪ったボールをつないで相手を崩すサッカー』ではなかったかもしれない。「つなぐことよりも、シンプルにボールを送った方がつながると判断した」とDF柳沢将之は試合後に教えてくれた。ベンチでもピッチでも、同じ事を感じることができたのが、『勝利に対する執念』の表れであろう。今の鳥栖は、90分間を通して全員が、今は何を成すべきかを表現できる強さがある。
読者諸兄は、もう一度録画された試合を見て欲しい。86分の決勝ゴールが生まれるであろう予感がする66分のシーンを。そして、決勝ゴールにラストパスを通す直前に武岡優斗の横を全速力で駆け上がる柳沢の姿を。
これこそ、『勝利に対する執念』である。

サッカーは90分間の間に攻撃と守備が頻繁に入れ替わるスポーツである。ミスも起きれば、スーパープレーも起きるのが大前提で、起きた現象を瞬時に判断して対応しないといけないスポーツでもある。そこには、若さと勢いだけでは対応できないものがある。そこをどれだけ感じるのか、実践できるのかを問われるスポーツでもあり、『本能のまま』プレーしていては、個人は目立ってもチームとして機能せず結果を積み上げることは難しいであろう。わずか90分間の試合だが、そこにいたるまでには膨大な時間を費やして相手を分析し、戦術を立てて練習を繰り返している。1本のシュートで試合が決まることも多いが、そこまで積み上げられた過程を考えると、戦いが終わった選手たちには感謝と慰労の拍手を贈るしかない。90分間に色々な感動を与えてくれる選手たちは最高のアクターであり、それを観ることができる我々は幸せ者である。
サッカーは感動の坩堝(るつぼ)である。

以上


2009.10.05 Reported by サカクラゲン
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