8月29日（土）J2 第36節 福岡 vs 湘南（19:00KICK OFF/レベスタ）
スカパー！生中継 Ch160 18:50〜（解説：布部陽功、実況：南鉄平、リポーター：森田みき）
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　第３クールの初戦となった栃木戦で、福岡は課題を残しながらも少ないチャンスを確実に決めて３−１で勝利を掴んだ。内容を見れば、決して全面的に肯定できるものではない。むしろ、抱える課題の深刻さを窺わせるものであったとも言える。
　しかし、その中でも我慢を重ねて掴んだ勝利。それが単なる結果に終わるのか、それとも、これからの福岡にとって意味のある勝利になるのか。それは迎える湘南戦の内容と結果にかかっている。目先の勝利のために戦うのではない。目先の順位のために戦うのでもない。サッカーにかける思い、サポーターの思い、そして自分たちが何を求めているのかを再確認して戦う試合。いわば原点回帰こそが、「プロとして何を伝えられるかが問われている」（篠田善之監督）という問いに対する答えだ。

　そして、J1昇格争いの真っただ中にいる湘南も、原点に戻って最後の直線を走り抜ける構えを見せる。第28節の福岡との戦いに敗れてから４連敗を喫した後、システムを３バックに変更したが、第３クールの初戦の仙台戦に本来の４−３−３の布陣で臨んだのは、その気持ちの表れ。反町康治監督も「要するに原点回帰。もう一度ここで見直して、自分たちの良さを全面的に強い相手にも出していこうということ」と話す。
　結果は引き分けに終わったが、「ここからみんなで闘っていくという気持ちを出しながら戦った。今日の気持ちと今日の動きを残り16試合で出せれば十分やっていけると感じた」と坂本紘司が振り返ったように、その手応えは十分。強い気持ちでレベルファイブスタジアムに乗り込んでくる。

　その湘南が目指す戦いは攻撃的なサッカー。ボールホルダーに対する高い位置からのプレッシャーと、攻守の切り替えの速さをベースにしたショートカウンターが最大の武器で、ここまで積み重ねた62ゴールはJ2では２位に当たる数字。その中心となるアジエルの出場停止は少なからず影響があるが、それでも組織としての成熟度は高く、大きく崩れることはないだろう。中央でボールを収めるリンコン。２列目から長い距離を入って前線に飛び込んでくる坂本、寺川能人の両ＭＦ。そして高い位置を取って攻撃への意識を高める両ＳＢ。そこから繰り出される攻撃は常に相手に脅威を与え続けている。
　そして、バイタルエリアを献身的に掃除する田村雄三と、ジャーン、村松大輔の３人で守る守備は堅固そのもの。その守備が湘南の攻撃を支えている。

　そんな湘南に対し、福岡は、いつものようにまずは守備から入ることになる。「守備から入って、まずは前半を０で終えること。いま安定した戦いが出来ている要因はそこだと思っている。相手にボールを持たれる時間が多くなるかもしれないが、相手にボールを回させている感覚でやれれば問題はない」とは丹羽大輝。そして、FWながら守備に多大なる貢献をする大久保哲哉も、「抑えるところはしっかり我慢して抑えて、そうすればチャンスは必ず来る」と話す。
　ポイントとなるのはリンコンに自由にボールを治めさせないこと。そして、２列目から飛び出してくる寺川、坂本のマークをボランチと上手く受け渡すこと。田中誠、丹羽、そして阿部嵩のプレーが鍵を握る。

　そして攻撃面で期待がかかるのは田中佑昌だ。Ｃ大阪戦でのゴール、そして栃木戦での２ゴールは、彼のスピードを余すことなく活かしたもの。そのスピードに対応できるDFを探すことは難しく、たった１本のパスでゴールを奪うプレーは湘南といえども警戒せざるを得ないだろう。
　また、マンマーク気味に、激しく、しつこく体を寄せてくるのが湘南の守備の特長だが、そこから逃げずに相手をはがすことが出来れば、バイタルエリア、そして両サイドには福岡が使えるスペースが大きく空いている。そのスペースをどう使うかが、福岡の攻撃面での鍵を握る。守備に回る時間帯が多くなることが予想されるが、チャンスには躊躇せずに前へ仕掛ける気持ちが必要だ。

　さて、レベルファイブスタジアムでは夏休み最後の試合。多くの子どもたちや、ファン・サポーターが足を運んでくれるはずだ。そんなスタジアムを歓声の渦で包みたい。必要なものは勝利。そのためにも、福岡の誇りを胸に戦う姿を見せてほしい。

以上

2009.08.28 Reported by 中倉一志