8月5日（水） 2009 J2リーグ戦 第32節
徳島 1 - 2 富山　（19:04／鳴門大塚／2,537人）
得点者：51' 西野誠（富山）、76' 石田祐樹（徳島）、89' 朝日大輔（富山）
スカパー！再放送 Ch186 8/6（木）19:00〜（解説：西村昭宏、実況：寺西裕一、リポーター：藤原美佳）
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3つ勝利を続けることがどれだけ難しいか。徳島にとってはそれを改めて痛感させられたゲームであった。前々節で上位・湘南を撃破、続く前節では四国ダービーに圧勝し、J参戦以降5シーズンにもわたり引きずっている呪縛から抜け出すための助走は過去最高と言えるほど十分だったはずなのに…。しかも逆に勝利した富山はこれで今季2度目の3連勝。もちろんリーグ在籍年数などそれに全く関係ないのは分かっているが、とは言え加入1年目の富山がすでにそうした結果を残していることは徳島にとって何とも皮肉だ。
いずれにしても徳島は今回もクラブ史上初の3連勝を逃してしまった。

ただ、チームを想うが故に敢えて厳しい書き方をさせてもらえば、この一戦での敗北は喫すべくして喫したものと言えよう。試合を通して徳島から勝利の雰囲気が漂ってくることはほとんどなく、石田祐樹の同点弾によって上がると思われたチームのギアも上がらないまま。ほぼ終始に渡って富山の気迫溢れる球際と落ち着いた組み立てに押された内容であったと言わざるを得ない。そのことから考えればやはり徳島が突きつけられた結果は残念ながら当然のものだ。

それでも徳島も立ち上がりに限ってはリズムを見せた。両翼の藤田泰成と三田光が高い位置で攻撃に絡めば、徳重隆明も中盤深くで一度ボールに触れてから前へ出て行くなど動きに変化を付ける。さらにはトップの羽地登志晃も積極的に左右へ流れ、起点となって富山の守備をこじ開けようと試みた。また徳島は13分にビッグチャンスも作り出す。藤田が入れたサイドからのクサビを羽地が落とし、それを走り込んできた柿谷曜一朗が狙い済ましてフィニッシュ。そのシュートは富山GK中川雄二のファインセーブに阻まれたが、それでもその一連のプレーをキッカケとしてチームの猛攻スイッチが入るのではとさえ思われた惜しいシーンであった。

しかし、その直後あたりから、徳島は急激にパフォーマンスを高めてきた富山に流れを奪われていく。野嶋良、長山一也のボランチに朝日大輔も加わった富山の中盤の落ち着いたボール回しに手を焼くようになると、両サイドも西野誠と舩津徹也の侵攻を許し、徳島の藤田と三田は見る見るうちに自陣へ押し込まれていった。するとそこからは明らかな富山ペース。そして、前半こそ何とか決定機までは作らせず凌いだ徳島であったが、迎えた後半開始間もない51分ついに失点することに。右サイドを深くえぐられ折り返されると、長い距離を走って大外を上がり切りペナルティエリアへ侵入していた西野にネットを揺らされたのだ。

加えて徳島は前記の通り、76分の石田のゴールで追いつきながらそれでも勢いが出てこない。「攻撃する時の前に出るスピードとか運動量がなかったし、ボールは後ろでだけ回しているというイメージ」という美濃部直彦監督の弁が表すように、チームは攻めに切り替わってもほとんどが遅攻。堅守を誇る富山を攻略するためには「奪ったボールを早く攻めたかった」（美濃部監督）のに多くが足元への繋ぎを選択してしまっていた。結果、最後勝負どころの時間帯で再び長い距離を走った西野に仕事をされ、詰めが遅れたところを朝日に見抜かれて決勝点を決められてしまったが、それもチーム全体の勢いと積極性のなさが招いた結末だったと言えるのではないだろうか。失点場面でDF陣にポジショニングや寄せの甘さは確かにあったものの、決してそれが敗れるに至った根本的な原因ではないはずだ。

「情けないゲームをしてしまった」と美濃部監督は振り返ったが、分析力に長けた指揮官は次節に向けてどのようにチームを立て直してくるのであろうか。大きな注目が集まる。また選手たち自身もどこまでこの敗戦と向き合い、ここで得た教訓や経験をどれだけ今後の糧とできるかが問われる。次節までの4日間を徳島は一瞬たりとも無駄に過ごしてはならない。

対して富山は確実に強い組織への階段を駆け上がっていると言えるだろう。楚輪博監督も「最後の最後まで自分たちのサッカーを粘り強く出来た末に逆転でき、本当に選手たちが素晴らしく頑張っていたという印象を受けた」とチームに最大級の賛辞を送ったが、お世辞抜きにその進化は本物。チャレンジャーとしての気持ちを継続しつつ自信も積み重なってきた彼らなら今季のJ2において大きなサプライズを起こせる可能性は大きい。

以上

2009.08.06 Reported by 松下英樹