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【J2日記】福岡:帰ってきた男(09.04.17)

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(C)中倉一志

ボールを捕らえる鋭い視線。心身ともに黒部は最高のコンディションを維持し続けている。

(C)中倉一志

非の打ちどころのないバランスのとれたフォームは、磨きこまれた技術の高さの証明。

 第8節の愛媛戦、69分に黒部光昭の交代が告げられると、レベルファイブスタジアムに、ひと際大きな拍手が起こった。
 前半1分の先制ゴールのシーンを除けば、終始、愛媛に押し込まれる展開。黒部がゴールを奪うには難しい状況だった。それでも、黒部は前線で存在感を発揮し続けた。自らのポストプレーで先制ゴールのきっかけを作り、苦しい状況の中、前線でボールを捌いてカウンターの起点になった。相手の一瞬の隙をついて放った約30メートルのロングシュート。献身的な前線からの守備。大きな拍手は黒部に対する賞賛の拍手だった。

「去年のことを考えたら自分はマイナスからのスタート。監督が『こんなに調子がいいんだったら使わざるを得ないだろう』と思うところまで自分が見せなくてはいけないし、ファン・サポーターの皆さんが『なんで黒部を出さないの?』と言ってくれる状況を自分で作り出せるように頑張りたい。やれる自信はある」
 シーズン前に黒部はそう話していた。高橋泰、岡本英也 が新たに加わったFWのポジション争いを勝ち抜くのは簡単なことではなかったはず。しかし、黒部は島原キャンプでコンディションの良さをアピールすると、その後も高い位置で状態をキープ。自分がレギュラー争いの中心にいることを示し続けた。印象的なのは彼の柔らかな表情。それは自分とチームの目標のために、やるべきことを整理し、それを100%の力で実践している自信のように見えた。

 それでも心配事がなかったわけではない。島原キャンプでは仲間との接触プレーで怪我をし、宮崎キャンプでも徳島とのトレーニングマッチで悪質なファールを受けて負傷。別メニューで調整することになった。人生には運気がある。本人の意志や努力と関係のないところで、思わぬ方向へ物事が転がっていくこともあるからだ。
 だが、黒部は自分の力で流れを引き戻す。宮崎キャンプ最終日のHonda FCとの練習試合に照準を合わせると公言した黒部は、言葉どおりにHonda FC戦に60分から出場。その直後にゴールを挙げただけではなく、ポジション争いのライバルたちを上回るプレーを見せたのだ。
「最後のゲームに調整するといって準備をし、きちんとコンディションを整え、結果も出した。プロとしての姿勢を見せてくれた」。黒部の姿勢に篠田善之監督も評価を口にした。

 さて、今シーズンの黒部は、ここまで同じことを言い続けている。
「僕たち選手は言わば駒。誰を、どこで、どう使うかは監督が決めることで、自分ができるのはコンディションを維持することだけ。そのためにできるだけの準備をすることに専念して、監督の選択肢を増やすことが選手としてやるべきこと。そして、自分が常にその中に入っていたい」
 そして、それを実践してきた。黒部が登場するのは、いつも難しい局面。その中で、何を求められているのかを理解し、100%の力を発揮し、試合が終われば、自分が求められる存在であり続けるための準備を重ねた。まさに有言実行。篠田監督の黒部への信頼はさらに高まり、サポーターからも黒部の登場を待ち望む声が上がり始めた。

 そして迎えた第8節の愛媛戦。黒部は昨年の8月16日以来、242日ぶりの先発出場を果たす。そのプレーに気負いはなく、いつものように冷静。しかし、ひとつ、ひとつのプレーから熱い気持ちが伝わってくる。狙うのはゴールだけではない。高い位置からボールを追って守備でもチームに貢献。いつものように、求められた役割に全力で取り組んだ。
「あの拍手が、黒部さんのプレーに対するみんなの答えだったんじゃないですか」。そう話しかけると、「疲れましたよ」と答えて笑みを浮かべた。

「最初は交代出場でスタートして、今日、こうやってチャンスがもらえた。その試合で、チームにとって大事な勝利という結果が得られ、自分が入ってもやれるというところを見せられた。課題はあるけれど大事なのは勝つこと。本当に勝ちで終われてよかった」
 そう話す黒部に「次も先発で?」と尋ねると、こう話した。
「先発の回数が増えれば嬉しい。でも先発じゃなくても、1分でも、2分でもチームに貢献するということを意識してチームにかかわりたいと思います」。

 黒部の視線がとらえるのはJ1へ続く扉。チームの一員として、その扉を開けた時、黒部は、この日以上の会心の笑顔を見せてくれることだろう。

以上

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2009.04.17 Reported by 中倉一志
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