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【J2日記】福岡:ヒーローになりそこねた男(09.03.24)

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桜の花も7分咲き。桜が満開に近づくように福岡も調子を上げないものかと思っていたが、願いは届かずに敗戦。3戦を終えて1分2敗と厳しいスタートになった。例年以上に混戦が予想されるJ2の戦いは、シーズンを通して我慢と辛抱が必要だろうと思っていたが、さすがに3試合を終えて勝利がないとは考えていなかった。試合後に記者室で第一報を整理する各紙の担当記者たちの口も重い。しかし、戻れない過去を悔むだけでは何も生まれない。現実を正面から受け止めた上で前に進むしかない。


さて、第3節の水戸戦では3人の選手に注目していた。水戸ではボランチのキム・テヨン。スカパー!を録画して水戸の試合をチェックした際に、要所に顔を出してチャンスの芽を潰していくプレーが印象に残ったから。個人的には好きなタイプの選手だ。そして、福岡ではボランチで出場した鈴木惇とセンターバックの丹羽大輝。中盤のバランスの悪さと、ロングボールの対応の拙さが福岡の最大の課題。2人の投入で、チームがどう変わるかがポイントだったからだ。

結果的に3人とも大活躍。キム・テヨンは自身リーグ戦初ゴールとなる貴重な先制ゴールを挙げ、鈴木は積極的に高い位置でボールを引き出して攻撃の起点となり、丹羽は90分間にわたって最終ラインの制空権を握り続けた。中でも出色の活躍を見せたのが鈴木。プロ入り2年目の19歳ながらチームを牽引。自らタクトを振るってチームを動かした。この日は両チーム合わせて27人の選手がピッチに立ったが、その中でも最も光り輝いていた。


実は、試合前日、鈴木をアクシデントが襲った。水戸戦に備えての最後の練習メニューである紅白戦で、ボールの奪い合いから右足首に打撲を負ったのだ。すぐにピッチの外に出ると、練習が終わるのを待たずにロッカールームへ。軽傷ではないことはすぐに分かった。レベルファイブスタジアムで熱い応援を続けてくれるサポーターに、自分のプレーで勝利をプレゼントするために準備を積んできた2週間。「なんでこんな時に」。ビブスを投げ捨てるように脱いだ姿は、そう言っているようにも見えた。

しかし、この日の先発メンバーに鈴木の名前が記されていた。試合前には痛みが残っていて、どこまでできるか分からない状態だったという。「けれど、(医者に)試合はできると言われた以上、ダウンはしたくなかった。やってよかった。普段通りのプレーができた」(鈴木)。試合ができる喜び。自分のプレーを見せる責任感。それが痛みを超えた。
「試合に出るだけで満足する段階は過ぎた」と言って臨んだ今シーズン。けれど開幕戦では何もできず、第2節はベンチから外され、その悔しさは計り知れない。それをプレーで晴らした鈴木。まさにプロとしての準備の仕方だった。


勝利を手にすることができれば、この日のMVPは間違いなかっただろう。それはチームにとってはもちろん、彼にとってもさらに大きくなるきっかけになったかもしれない。だが、敗れた責任は全選手にある。素晴らしいプレーを見せた彼も例外ではない。
「次は勝ちます」。そう言ってスタジアムを引き上げた鈴木。その時、彼は本当の意味でヒーローになる。

以上

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2009.03.24 Reported by 中倉一志
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