鹿島が4月7日（アウェイ）と4月22日（ホーム）に戦う、シンガポール・アームド・フォーシズFC。シンガポールリーグのクラブとして初めてACLに出場をする。リーグ関係者は、この出場を機に、国内リーグの盛り上げを狙っている。日本ではなかなか知られていないシンガポールリーグに迫った。

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圧倒的に知られていないことではあるが、シンガポールおいてサッカーは「国技」である。ある程度の成績をとらないと（大学など）先に進めないという制約があり、とかく学業優先の若者が増えている中、シンガポール人の体力不足は深刻になっている。「スポーツの活性化」が一つの国策となっているシンガポールで、サッカーは重要な役割を持っている。わずか東京23区ほどの面積の中に人口約430万人（人口密度世界第二位）がひしめき合って生活をしているのだが、観客席が備え付けられた芝生の陸上競技場の数は、20はくだらない。広い芝生の広場やスポーツセンターも充実しており、ことサッカーができる環境という意味においては、日本よりも整っているように感じる。

Sリーグが始まる前、シンガポール代表チームはマレーシアリーグに参加していた。これはシンガポールがマレーシアから独立したという歴史的背景もあったため、大いに盛り上がった。試合が開催されるナショナルスタジアムは満員となり、無数のシンガポールの国旗が振られ、国家が大音量で流された。サッカーという競技が、多種多様の人種が集まった、歴史の浅いシンガポールの国民としてのアイデンティティを刺激する広い意味での国威発揚手段になっていたのだ。それだけに留まらず、参加最終年には優勝を果たすなど、強化面でも努力が実ってきた。ただし、その優勝に八百長疑惑がかかり、シンガポール代表チームはマレーシアリーグを去ることになった。

この八百長疑惑に関しては諸説あるのだが、いずれにしても戦う場所を失ったシンガポールサッカー関係者たちの中に、自分たちの手でプロリーグを立ち上げる機運が高まる契機にはなった。そして、Jリーグの運営をお手本にしたシンガポールプロサッカーリーグ、「Sリーグ」が始まった。Sリーグ関係者たちは「あのマレーシアリーグの盛り上がりをもう一度」と、海外からクラブを誘致してリーグ内に「国vs国」の構図を作り出した。そして、アルビレックス新潟シンガポールができあがった。ただし、リーグ全体を見渡した際に、どの試合の入場者数も2,000人程度という現在の「盛り上がり」は、彼らの計算通りではないかもしれない。

現在、そもそも英国領だったということが影響しているのか、シンガポールで最も耳目を集めるスポーツは、シンガポールプロサッカーリーグ、「Sリーグ」でもなく、2008年に初のナイトトレースとして開催された「F1」でもなく、英国で開催されている「プレミアリーグ」である。街を歩けばマンチェスター・ユナイテッドやリバプールといったユニフォームに身を包んだ若者たちと5分に1回はすれ違い、週末にはTV放送のあるパブにシンガポール人たちが大挙して押し寄せる。Sリーグにしてもプレミアリーグの開催日時をなるべく避けるようにして開催される。サッカー熱は高いのだが、残念ながらその全てが自国リーグに集約されてはいないのが現状だ。

そんな中、予備予選を勝ち上がってACLに初めて参加するのが、シンガポール・アームド・フォーシズＦＣ （Singapore Armed Forces（SAF））である。ご存知のようにシンガポールのチームとしては初参加となる。その意味もあって注目度は高い。何よりSリーグ関係者たちにとって最も魅力的に映るのが、ACLは「国vs国」の構図が鮮明だということ。この効果によってプレミアリーグに傾倒しがちだったシンガポール国内のサッカー熱を、一気にSリーグに持ってくることができるのではないか、とSリーグ関係者たちは目論んでいる。

Reported by　Albirex Niigata Singapore

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