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【AFCアジアカップ2011カタール 予選Aグループ第1戦 日本代表 vs イエメン代表】レポート:チームとしての経験のなさもあって、プレーの選択に課題を残す。ただしその中での勝利は、今後につながるものだった。(09.01.21)

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1月20日(火) AFCアジアカップ2011カタール 予選Aグループ第1戦
日本代表 2 - 1 イエメン代表 (19:20/熊本/30,654人)
得点者:7' 岡崎慎司(日本代表)、47' ザヘル・ファリド(イエメン代表)、66' 田中達也(日本代表)
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 鹿屋体育大学との練習試合を踏まえ、チームがイエメン戦に向けての課題として挙げていたのが「テンポ」だった。シュートに至る最後の局面。ペナルティエリアの手前10mほどの位置からのパスワークをいかにシンプルに、テンポよくやれるのか。そしてそれはこのイエメン戦に限らず、世界との戦いを見据えたときの日本の生命線の一つなのではないかと思われる。技術的に高いレベルの選手を擁する日本の良さを生かし、世界との体格差を埋める方法を考えたとき、素早いパスワークは世界と対決する上で大きな武器になりうるのである。

 ところが事前の予想通りというか、それ以上にというか、イエメンは守備的な布陣を敷いていた。「一生懸命ゴールを守ろうとした。守備に2人を追加して、できるだけ日本の攻撃を防ごうとした」とサミ・ハサン・サレハ・アルナシュ監督が説明した通り、イエメンは興梠慎三、田中達也の2トップに対してマンツーマンで選手を付け、さらにセンターバックが2枚余るという布陣を敷いていた。そうしたイエメンの布陣を受け、興梠は「その(最終ラインのCBの)2枚につこうと思った」という。ところがそうすることでイエメンはさらに「引いてきた」(興梠)。もちろん、7分に決まった岡崎慎司の先制ゴールもその傾向に拍車をかけるきっかけとなっていた。

 相手ゴール前に極端にスペースがない状況に陥った日本代表は、引いた相手との戦いでのセオリー通りにミドルシュートを連発させる。15分の内田篤人のミドルシュートに続き、16分には中村憲剛のシュートがGKを襲った。ところがイエメンは、中盤のスペースを埋めようとはしなかった。「ミドルから打っても出てこない。これは難しいと思った」と中村は守備を固めたイエメンとの戦いを振り返っていた。

 鹿屋体大との練習試合では、相手が前からプレスに来たこと。そして最終ラインの裏にスペースがあった事を利用して、選手たちは彼らの判断で裏のスペースを狙うパスを織り交ぜていた。こうしたピッチ上の選手の判断については「ぼくらは(相手が)プレスをかけた(前に出てきた)ら裏を取りにいく。サッカーですから相手(鹿屋体大)に応じて対応してくれた」と岡田監督も指示しており、この試合でもそうした状況に応じた戦い方を期待していたものと思われる。実際、内田篤人は試合前日に試合の流れを見極めた上で「(場合によっては)蹴ってもいいと思いますし、蹴るときは蹴ります」と口にしていた。
 相手との兼ね合いで試合展開や戦い方が変化するサッカーは、ピッチ上の変化に対してピッチ上の選手たちが自主性を持って対応すべきスポーツである。そうした適応力が欠けていた事が最も強く悪い方向に出たのが、06年のドイツW杯でのオーストラリア戦だった。あの悔しさを払拭すべく日本サッカー界は取り組んでおり、その一環として昨年には田嶋幸三氏の著作による『「言語技術」が日本のサッカーを変える』という提案がなされている。そしてそうした日本サッカー界の目指す流れに沿ったチーム作りがフル代表でも進んでいる事が各選手の言葉から伝わってくるのである。

 ちなみにこの試合に関して中村は「相手が引くとパスを出しにくくなる。そこを工夫してやればよかった」と反省の弁を述べ、その具体例として「ダイレクトが入ると相手も剥がれてくる。ただ、ダイレクトばかりだとミスが出る。そこはスピードとのメリハリが必要になる」と試合展開に応じたプレーの選択の必要性を口にしていた。

 そうした中、後半開始早々の47分に同点に追いつかれてしまう。岡田監督は、1失点を喫した後であっても「正直あまり策を打ちたくはなかった」のだとその場面を振り返る。しかし「自分(選手)たちで解決できそうになかった」事もあり「中盤を厚くする形」へとシステムを変更するのである。

 これによってたとえばサイドからのクロスが増える。前半13本のシュートのうち興梠、田中達也の2人のFWが放ったシュートがわずかに2本だったのに対し、後半は14本のシュートのうち、途中交代の巻誠一郎を含めた3選手で、7本のシュートを放つまでに状況が好転する。

 チーム最多の5本のシュートを放った岡崎のポストを叩いたボールが一つでも決まっていれば、もっと楽な展開になっていたとは思うが、結果的に66分に田中が勝ち越しゴールを決めて2-1で日本が逃げ切る事となった。

「指宿からやってきたこのメンバーで勝つのが大事だった」と口にしたのはキャプテンマークを巻いていた中村である。この試合は日本にとっての今季初戦であったり、アジア杯予選初戦だったりという意味を持つものだが、それらの事と同等の重みを持って中村は指宿合宿での仲間たちにファミリーとしての意識を感じていたようである。まだまだ足りていない連携や、自分たちで試合を考え、戦い方を変えるといった要素について改善の余地はある。しかし、まずはこのメンバーで勝てたことを大事にしたいと、そう口にする中村の真意は、代表という集団の存在を考えたときに深みを持つものであろう。

 最後になるが、満員のスタジアムの雰囲気は素晴らしいものがあった。そして地元熊本出身の巻に対するアップ中からの声援と、交代出場時の場内の大歓声。その地方にスタジアムがあり、出身選手がフル代表の一員としてプレーする事の意味について、考えさせられる試合でもあった。熊本出身の大スター、水前寺清子さんの君が代斉唱と合わせて、地方開催の可能性を感じさせてくれる試合だったのではないかと思う。

以上

2009.01.21 Reported by 江藤高志
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