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【FCWC特集】南米代表チャンピオンとなったリガ・デ・キト(エクアドル)の快挙までの軌跡を追う!(08.12.05)

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数々の名門クラブを撃破し、南米チャンピオンに輝いたリガ・デ・キト。ブラジル、アルゼンチンなどのクラブに比べれば日本での知名度は低いが、エクアドル随一の人気クラブだ。そして今年のFCWCではマンチェスター・ユナイテッドを倒すべく入念な準備をしている。そんなリガ・デ・キトの南米王者になるまでの軌跡を紹介する!

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●躍進
2008年5月22日、リーガ・ウニベルシタリア・デ・キト(Liga Universitaria de Quito)、通称リガ・デ・キトは、メキシコのクラブ・アメリカを抑え、90、98年のバルセロナSC以来、エクアドル勢としては、3回目のコパ・リベルタドーレス決勝進出を決めた。
これだけでもエクアドル中が、国を挙げてのお祭り騒ぎとなったが、全国民の胸内には優勝への期待が膨らんだ。まるで、エクアドルが2002年のW杯初出場を決めた瞬間に似た現象が起こり、「si se puede!(シ・セ・プエデ!=成せば成る!)」の合言葉が、キト市内でこだました。その一方で、サンパウロFC、ボカ・ジュニアーズを制し勝ち上がったフルミネンセは、まるで優勝パレードしか眼中にないような盛り上がりを、リオ・デ・ジャネイロで繰り広げていた。

リガ・デ・キトのコパ・リベルタドーレス(南米選手権)優勝までの道のりは、過酷な戦いの連続であった。絶対的な強さで勝ち上がったのではなく、総合的なバランスの良さによる勝利というべき結果である。14試合で5勝4敗5引き分けといった、決して、優秀な成績を収めたわけではない。

振り返ると、2008年コパ・リベタドーレスのドラマは、6月20日のグループリーグ1節、リガ・デ・キト対フルミネンセとの対戦から始まった。ファースト・レグは、0−0の引き分け、6節目のセカンド・レグは1−0でフルミネンセが勝利している。他の対戦相手のリベルタ(パラグアイ)とは、ホーム戦で2−0の勝利を、アウェー戦では、1−3で敗れ、薄氷を踏むような戦いを見せた。ところがコパ・スダメリカーナのチャンピオン、アルゼンチンのアルセナルとのアウェー戦で、1−0の勝利を勝ち取る。過去に、アルゼンチン領土で一度も勝利を治めたことのなかったリガ・デ・キトにとって、アルセナルとのこの一戦は、大きな自信につながり、アルセナルを迎えたホーム戦での6−1の大勝利につながった。グループリーグでは、フルミネンセが1位通過、LDUは2位通過しているが、このときの勝利により、リガ・デ・キトは早々に予選通過を決めたのである。

しかし、この時点で、まさか、最初の対戦相手と、その数ヵ月後に決勝の舞台で再会するとは、誰もが予想しなかったことであろう。ベスト16が揃った決勝トーナメントの一回戦は、68年、69年、70年と、コパ・リベルタドーレスで3年連続優勝を飾った名門、アルゼンチンのエストゥディアンテス。リガ・デ・キトはファースト・レグで、ゲロンとマンソが、セカンド・レグではボラーニョの活躍により、なんとかベスト8(準々決勝)へ進んだ。ところが、次に待っていたのは、またもアルゼンチンのクラブ、サン・ロレンソ・デ・アルマグロだった。グループリーグのアルセナルを含め、アルゼンチン勢との3度目の戦いに、リガ・デ・キトの選手間の中で、アルゼンチン人であるバウサ監督が、奇妙な因縁を呼び寄せているのだと、皮肉なジョークを飛ばす者が出てくるほどであった。そして、南米一、攻撃的サッカーを仕掛けてくるアルゼンチン勢との戦いは、守備的なサッカーを信条とするリガ・デ・キトにとっては過酷な試合展開となる。アウェー戦においても、ホーム戦においても、両者譲らずの1−1の死闘の末、PK戦となった。ただ、サッカーの神様に恵まれたのか、ホームでPK戦を5−3で勝利した。この試合は、リガ・デ・キトが南米王者になるうえで、最も泣かされた試合のひとつであった。

次なる、準決勝の相手は、メキシコのクラブ・アメリカ。これも激烈な戦いではあったものの、リガ・デ・キトが確固たる守備システムを確立していたことと、守護神セバージョスの徹底したセーブ、ジョフェル・ゲロンの中盤の圧倒的なスピードある献身的なプレーにより、アウェー戦では1−1の引き分け、ホーム戦ではメキシコ・サッカー特有のゴール際のしつこい攻めを凌いで、0−0で戦いの幕が閉じた。スタジアムは、「elei….li…eli…ga…lili…gaga…universitaria!.....si se puede!/エレイ…リ…エリ…ガ…リリ…ウニベルシタリア!…シ・セ・プエデ!」の歓喜一色に包まれ、悲願の決勝進出を決めたのだ。

そして、運命の決勝。

6月25日、予選リーグ第一節の対戦相手、ブラジルのフルミネンセが、またもキトの地を踏んだ。リガ・デ・キトのホームスタジアム、カサ・ブランカは4万人の観衆で埋め尽くされた。リガ・デ・キトは、緊張でリズムを崩すどころか、決勝という舞台で、これまでにないほどの洗練された、精密なサッカーを披露。派手さはないものの、個々の選手が基本に忠実なプレーをミスなくこなし、最終的には、4−2でフルミネンセを倒し、カサブランカを歓喜が包んだ。セカンド・レグを迎えるにはゆとりあるスコアだったものの、「残り一試合、我々を負かすには、抹殺する以外にありませんよ」試合後のバウサ監督のコメントが、後の世紀の優勝をさらに予感させていた。

2008年7月2日は、エクアドルと南米のサッカー史を変えた。

リガ・デ・キトは、聖なるサッカーの神殿、マラカナンスタジアムにおいて、決勝のセカンド・レグを迎えた。フルミネンセの方が不利な立場にありながらも、ブラジル全土はフルミネンセの勝利を1ミリも疑っていなかった。いや、全世界のサッカーファンが疑っていなかっただろう。リオ・デ・ジャネイロに乗り込んだリガ・デ・キトとそのサポーターは、優勝パレードの準備一色に染まっているリオの街に圧倒された。しかし、思いは揺るぐことはなかった。キックオフの笛がスタジアム中に鳴り響いてからは、それまでの試合から一転、リガ・デ・キトは攻撃に徹した。前半6分、LDUのボラーニョスによる先制点に、マラカナンが静まり返る。しかし、先制後、守備的布陣にシフトすると、リガ・デ・キトは押され始めた。

フルミネンセは、怒涛のプレーでリガ・デ・キトを襲撃。前半26分までに2点を奪われ、後半13分には3点目を奪われた。この時点で、ホーム&アウェーの合計得点上で、リガ・デ・キトの“貯金”はゼロ。しかし、ここからGKセバージョスを中心に守備陣が奮起した。残り時間を凌ぎ、試合は延長戦に突入したが、結局、両者譲らずのPK戦となった。PK戦では、セバージョスが2人目のチアゴ・ネーヴィス(元仙台)が蹴る直前、主審に中断を求める駆け引きを繰り出した。相手のリズムを崩して失敗に追い込むと、最後は元浦和のワシントンのPKを止めるなど4本中3本を止め、勝利した。それは、セバージョスが、エクアドルのヒーローとなった瞬間だった。

フルミネンセの勝利を信じる8万6000人の観客で埋まったマラカナンは、まさかの敗北でまるで無人のスタジアムのように静まり返った。その一方で、リオに駆けつけた3000人のリガ・デ・キトサポーターが歓喜の涙を流しながら…「elei….li…eli…ga…lili…gaga…universitaria!…los albos!.....si se puede!/エレイ…リ…エリ…ガ…リリ…ウニベルシタリア!…ロス・アルボス!シ・セ・プエデ!」と歌い続けた。そして、歓喜したのは、エクアドル国内だけではなかった。準決勝でブラジルのフルミネンセに屈辱の敗北を喫したボカ・ジュニアーズを応援する、アルゼンチンのサポーターもリガ・デ・キトの勝利を喜んだ。

アルゼンチン人であるバウサ監督が率い、多数のアルゼンチン人選手が活躍するリガ・デ・キトに、ボカの、アルゼンチン全土の、ブラジルへの復讐を託していたのである。スペイン人監督であるラファ・ベニテスが、スペイン人選手を多数起用し、イングランドのリバプールをUEFAチャンピオンズリーグ制覇まで導き、「スパニッシュ・リバプールの快挙」とスペイン国内が沸いた現象と似ていたのである。

フルミネンセには、Jリーグで活躍した選手が在籍することから、日本のサッカーファンにとっては、フルミネンセが今大会に出場した方が、観戦しやすかったのかもしれない。しかし、ブラジルやアルゼンチンだけではない、南米サッカーの進化形、融合形を体現するリガ・デ・キトの戦い方に、実は欧州優位の世界サッカーの勢力図を、大きく揺るがすヒントがあるのかもしれない。

リガ・デ・キトの詳細なクラブの紹介記事はこちらから!

文:ロベルト・オマル・マチャド
& 中谷綾子・アレキサンダー

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