11月29日(土) 2008 J1リーグ戦 第33節
清水 3 - 2 千葉 (13:03/日本平/20,079人)
得点者:26' 兵働昭弘(清水)、32' 巻誠一郎(千葉)、38' オウンゴ−ル(清水)、76' 岡崎慎司(清水)、85' 巻誠一郎(千葉)
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「圧勝」ではないが、ほぼ思惑通りに「完勝」した清水。千葉も気迫と意地を見せたが、ホームで今季の成長ぶりを披露した清水の安定感を突き崩すことはできなかった。
カラッとした快晴で寒すぎず風も少なく、絶好のサッカー日和の中でスタートした日本平での今季最終戦。最近の試合と同様に中盤をボックス型にしてきた清水と、4-2-3-1でボランチを下村東美と斎藤大輔という新コンビにした千葉。清水のほうは、いつもと変わりなく試合に入り、崖っぷちの千葉が激しくプレッシャーをかけてくることに備えていたが、千葉の圧力はそれほどでもなく、立ち上がりからパスをつないでリズムを作ることができた。
千葉のアレックス ミラー監督は、後方からのストレートなロングボールではなく、「サイドにボールを散らして、サイドからアーリークロスを入れる」という狙いを指示していたが、実際には1トップの巻誠一郎を狙った単純なロングボールが多く、それらの多くは清水のセンターバックの高木和道と青山直晃に跳ね返されてあまり効果を発揮しない。
また中盤でのパス回しに関しては、ボールを持った選手に対して、周囲の選手がパスをもらえるポジションに動くという面で、清水と千葉で大きな差が見られた。清水の選手たちにはパスを出して動く、出して動くという形が徹底され、「周りが良い動きをしてくれるからパスコースを2つ3つ選択できる」(兵働昭弘)という状態になってスムーズにパスが回る。
それとは対照的に、千葉のほうは周囲のパスコースを作る動きが少なく、パスを連続させてボールを前に運ぶことがなかなかできなかった。その結果、当然のように清水が中盤を支配。また中盤にスペースがないときにはロングボールを織り交ぜ、それを2トップの岡崎慎司と西澤明訓、また左MFの枝村匠馬らがよくキープして、千葉のDFラインを押し下げた。そうして前半は清水が明らかにペースを握った。
千葉のほうは、左サイドの谷澤達也が、本来は守備の選手でない右サイドバックの高木純平に対して果敢に1対1を仕掛けていく形がある程度有効だったが、これも谷澤へのパスにミスが目立ち、単発になっていた。
そして先制点は、試合の流れ通りに清水が決めた。26分、清水が右サイドでパスをつないで押し込み、マイナスの折り返しから高木純がシュート。これがDFの足に当たって逆サイドに飛び、そこでフリーになっていた兵働が左足で豪快なボレーシュートを決めた。
だが、千葉もその6分後にワンチャンスを生かす。32分、中盤の右サイドでボールを受けたレイナウドが、坂本將貴のオーバーラップの動きをオトリにして低く速いアーリークロスを中央に送る。すると、ほぼペナルティエリアのライン上にいた巻が強いヘディングでゴール左隅に同点弾をゲット。清水のマークも少し甘かったが、それ以上に巻のヘディングが素晴らしかった。
しかし、前半はこれで終わらない。38分の清水の右CKの場面で、兵働がファーサイドにボールを送り、児玉新が角度のないところからヘディングシュート。GK岡本昌弘が反応したが止めきれず、こぼれたボールをクリアしようとした下村が押し込む形になってしまい、結果はオウンゴール。児玉のJ初ゴールとはならなかったが、清水が大きな勝ち越し点を奪った。
後半に入ると、千葉も動きを増やして中盤を作り始めたが、大きく流れを変えるには至らず、前半と同様に清水のほうが相手ゴールに迫る場面を多く作りながら時間が経過していく。だが、次の1点を千葉が取れば勝負がどう転ぶかわからない展開でもあり、ここで追加点を奪えるかどうかが、以前からの清水の課題でもあった。
その課題に答えを出したのは、エースの岡崎。31分、兵働の絶妙なパスで左サイドから裏に抜け出した岡崎は、そのままドリブルで中に切れ込み、対面するDFをかわし切る前に素早く足を振り抜き、GKの外を巻くようなシュートで逆サイドのゴールネットを揺らした。膠着した状況から試合を決定づける1点を決めたところは、まさにエースと呼ぶにふさわしい働き。岡崎にとっても、それは自身が目標としていた今季10ゴール目となった。
これで試合は決まったかに思えたが、千葉もまだあきらめない。最後は捨て身で攻めて、40分の右FKから根本裕一の正確なキックをニアサイドの巻が再び頭で決めて、1点差に追い上げる。ここでも巻の執念が、清水の堅守を突き破った。
その後も千葉がリスクを冒して攻め立てたが、清水が冷静に守って決定機を与えず、3-2のままタイムアップ。千葉にとっては非常に痛い敗戦となったが、残留争いの直接のライバルである磐田と東京Vがともに敗れたため、かろうじてJ1残留に望みを残した。
一方、清水のほうは、残留に必死な相手との難しいゲームで圧勝というわけにはいかなかったが、しっかりゲームをコントロールして勝ち切ったという意味では「強さの安定感」が感じられた。これでホーム6連勝(8試合負けなし)。最後は良い形で日本平での戦いを締めくくるとともに、個の力という面でも、連係の面でも、試合運びの面でも、昨年よりも着実に進化していることを地元サポーターの前で証明した。
以上
2008.11.29 Reported by 前島芳雄
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