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【J1:第33節 鹿島 vs 磐田】レポート:ロスタイムの最後に、鹿島が劇的な勝利。磐田の粘りを振り切り、優勝に王手をかける(08.11.29)

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11月29日(土) 2008 J1リーグ戦 第33節
鹿島 1 - 0 磐田 (14:04/カシマ/29,820人)
得点者:89' 岩政大樹(鹿島)
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ロスタイムは4分。マルキーニョスが左サイド奥深くで倒される。時計はすでに後半49分に入っていた。これが、この試合最後のプレーとなることをスタジアムの誰もがわかっていた。鹿島のサポーターのボルテージも最高潮に達する。
「自分の中に入っていた」
野沢拓也も中後雅喜も途中交代で退いたため、試合終盤からキッカーを務めていたのは増田誓志。集中力が高まった増田に周囲の音は聞こえていなかった。
「1本目を蹴ったとき、あのあたりを狙えと言われた。マサさん(岩政)を意識できたのは良かった」
狙いを定めてというより、あっさり蹴ったように見えたFK。岩政大樹が渾身のヘディングで合わせるとボールはゴールに吸い込まれ、スタジアム全体で歓喜が爆発した。選手たちが次々とゴールを決めた岩政に折り重なる。オリヴェイラ監督は何度も何度も拳を突き上げベンチの前を走り回った。鹿島がロスタイムに劇的な勝利を上げ、優勝に王手をかけた。

前半序盤、鹿島がペースを掴む。右サイドから内田篤人と野沢拓也が崩し、左サイドは新井場徹が駒野友一との1対1からクロスをあげ、ゴール前に迫った。セカンドボールも支配し、磐田に攻撃の端緒をつくらせなかった。しかし、磐田も徐々にペースを掴む。15分過ぎからファウルで試合が途切れるようになると、鹿島が圧倒的に支配していた試合も五分五分の流れになっていった。

まず、決定機を迎えたのは鹿島。29分、左サイドの深い位置で小さな円を描きながらドリブルしマークをずらした本山雅志が前を向く。タイミングを合わせてDFラインの裏に野沢が抜け出ると、絶妙のスルーパスが通った。しかし、野沢のシュートはゴール左へ惜しくも外れる。
磐田も応戦。37分に、右サイドから駒野がクロス。岩政がクリアし損ねたボールを前田遼一がボレーで合わせるもジャストミートせず、シュートは真上に打ち上がってしまった。
42分、鹿島陣内からのFKが前線の興梠慎三へ。ヘディングで落とした先に野沢がうまく走り込み、ゴール右前からフリーでシュート。ファーサイドを狙ったシュートはボール1個分外。前半2度の決定機を野沢が外してしまい、鹿島に嫌な雰囲気が漂い後半を迎えることになった。

後半もなかなか試合が動かない。鹿島は多くのチャンスを迎えるものの、ゴールを生む決定打に欠けた。50分、野沢のクロスが磐田ゴール前を横切るも、川口能活が気になったのかマルキーニョスの足が出ない。触ればゴールだった状況をみすみす逃してしまう。この状況を変えるため、オリヴェイラ監督は60分に野沢を下げて田代有三を投入。3トップで得点を奪いに行った。
「相手も動いてきたところで、こちらも動いた方がいいかなという僕の感覚で動きました」
これに先立つ56分。磐田は山本康裕に代えて大井健太郎を投入し、大井が3バックの一角に入り左サイドハーフに岡田隆が上がっていた。そこを突いての交代だった。
田代が前線に入ったことで起点が出来た鹿島だったが、それでもゴールが遠い。69分には興梠のクロスに田代とマルキーニョスが交錯。磐田のディフェンスも要所要所で粘りを見せ、鹿島の選手がフリーでシュートを打つようなシーンをつくらせなかった。さらに、名波浩、中山雅史を入れ、ゴールを奪いに行った。
しかし、ロスタイム。遂に力尽き、鹿島が決勝点を奪ったのである。
川崎Fが勝利したことにより、今節での鹿島の優勝はすでにない。しかし、苦しんだ末の勝点3は優勝に向けて大きな前進となった。最終節はアウェイでの札幌戦(12/6@札幌ド)。磐田にとっては悔しい敗戦。集中力の高さを見せ、鹿島を封じていただけに勝点1を逃してしまった。ただ、千葉、東京Vが敗れたため順位に変動はない。残留争いも最終節までもつれ込むことになった。

試合後、今季ホーム最終戦ということでオリヴェイラ監督が挨拶に立った。
「正直、言葉が出ないです。年間の苦しさを乗り越えてきたという意味で、そのがんばりを評価してもらうためにはタイトルしかないと思います。去年、最終節で感動的な優勝を遂げたことと思います。今年ももっと苦しい状況を乗り越えてきて、もう一度チャンスをものにすることができるかもしれません。それはもしかして神さまが、この鹿島アントラーズに、僕がもう一度大きなものを手にするために、与えた試練じゃないかと思います。ありがとうございました」

監督は劇的な勝利に感極まっていた。それを祝福するかのように、試合後のスタジアムから空を見上げる、そこには大きな虹がかかっていた。

以上

2008.11.29 Reported by 田中滋
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