10月28日(日) 2007 J2リーグ戦 第48節
鳥栖 3 - 0 京都 (13:03/佐賀/4,084人)
得点者:25' 藤田祥史(鳥栖)、30' 金信泳(鳥栖)、33' 加藤秀典(鳥栖)
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チーム力を推し量るには、「プレーの連係」を見る必要がある。ボールを中心とした「争点での連係」も必要であるが、ボールが無いところでの「準備の連係」も重要である。ベンチとピッチ上での連係は強い信頼関係のうえで成り立ち、審判と選手たちは「フェアプレーとマナー」の関係で成り立つ。個の力の連係は、90分間の戦いの中で組織プレーとして表現され、チームは思い通りに試合を運ぼうと汗を流す。
今節は、昇格を狙う京都が勝点3を得るべく、アウェーの地に乗り込んできた。今節を迎えるまでは、「攻守の連係」を生かして3位につけていた。残り試合も5試合となり、取りこぼしは許されない状況であった。試合前の選手たちの表情は、一様に厳しいものがあったし、キックオフ直後から鳥栖陣内に積極的に攻め込んできたことでも、今節にかける意気込みは計り知れた。しかし、その表情はわずか8分間の間に一変し、焦りと戸惑いの表情がチームを包んだ。
25分、鳥栖FW金信泳が左サイドに抜け出しボールを得た。京都左サイドDF平島が攻撃参加した後のスペースを上手く突いた格好だった。当然のごとく、京都CB森岡がチェックに入る。ここまでは、京都守備陣の想定内の対応だった。しかし、ここから京都の「連係」にほころびが出始める。第43節(9/29 対湘南戦)以来の出場となるチアゴが2列目から飛び出してきた鳥栖MF高橋のマークに入るのが遅れた。金信泳からのボールをヒールで中央に待ち受けるFW藤田に流すと、左足で先制点を生んだ。藤田へのマークも遅れてしまい、ここまで攻め続けていた京都の労力を一気に無に帰させてしまった。
京都の本来の力を持ってすれば、この先制点を取り返すだけの時間は充分にあった。前節の愛媛戦でもすぐに取り返し、終わってみれば3−1と完勝していた。あわてる必要は無かったはずだが、30分に不用意に左サイドでFKを与えてしまう。このFKから追加点を許し、一気に鳥栖が優位に試合を進めることになる。33分には、左CKから鳥栖DF加藤にヘディングシュートを決められ、わずか8分の間に鳥栖に絶対的な優位に立たれてしまった。3失点の直後に加藤監督は交代カードを3枚切って流れを呼び戻そうとしたが、この日の鳥栖の集中力は最後まで切れなかった。
鳥栖は、立ち上がりこそ押し込まれはしたが、前線からの連動した守備で徐々にペースをつかんでいった。25分の先制点では、インターセプトしたボールを素早く左サイドに流れた金信泳に送って先制点をあげた。2点目のFKでは、高橋のタイミングを計った助走に金信泳と加藤が合わせて飛び込んだ。3点目のCKでも、マークをはずした加藤の頭にピンポイントで合わせることが出来た。いずれの得点も、鳥栖の選手たちの「争点での連係」と「準備の連係」で生まれたもので、京都に修正する時間を与えることなく、一気に突け込んだ成果だった。
後半に入っても京都はボールを支配することは出来ても、トップに位置する田原に合わせることは出来なかった。鳥栖は、しっかりと全員で守り、ボールを奪うと素早くゴールに向かうことが出来ていた。終わってみると、シュート数は鳥栖13本に対し京都12本とさほど変わらない結果となった。CKでは京都が鳥栖を6本も上回っていた。それでも得点は鳥栖が8分間にあげた3得点のみで、勝点も鳥栖だけに加算された。
「鳥栖は、みんなが一緒になって動いていたので、あわてる必要が無かった」と鳥栖の司令塔 尹晶煥は鳥栖の試合を総括した。「先制点の直後から、試合の中で落ち着きを取り戻すことが出来なかった」と京都の主将 森岡は京都を総括した。勝者は「連係の良さ」を褒め、敗者は「連係の課題」を残してしまった。
昇格の目標は失せてしまったが、鳥栖の目指すサッカーがここに来て出来始めたといえ、この勝利は次節以降につながるだろう。昇格争いからは一歩後退した京都だが、まだ上位と直接対決を残している。自力で今節取り損ねた勝点を縮めることが出来る。鳥栖は今節の勝利で存在感を示すことができ、京都は修正すべき課題を見つけることが出来た試合だった。
サッカーの試合でボールに触れる時間はわずかしかない。単純計算しても、90分間で22人の選手がいれば5分に届かない。ましてや、ボールが移動している間は誰も触れていない時間である。その触れる時間が少ないボールの処理で、一瞬のうちに攻守が入れ替わる。いつ攻守が入れ替わっても良いように、ボールが無い状態でも準備をしておかないといけない。この準備こそが「連係」であり、サッカーの面白さでもある。ボールだけを目で追わないで欲しい。ゴールだけを見るだけで一喜一憂しないで欲しい。それはサッカーの一部でしかないからだ。サッカーには、見るべきところが多く、90分間を見続けると神経もすり減ることだろう。それでもサッカー観戦はやめられない。
以上
2007.10.28 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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