10月7日（日） 2007 J1リーグ戦 第28節
横浜FC 0 - 1 川崎Ｆ　（14:01／国立／14,208人）
得点者：26' ジュニーニョ（川崎Ｆ）

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横浜ＦＣのサッカーが川崎Ｆの選手たちをあわてさせていたのは確かなようだ。『前半半ばに先制した川崎Ｆが、あとはペースを落とし、要所をおさえて逃げ切った』という見方もできないことはないが、「相手はウチのウラのスペースをうまく使ってきました。一度押し込んで、そこから上がってくる感じ」（森）、「（後半、相手に押し込まれることは）予想していたわけではありません」（寺田）などのコメントからもうかがえるように、『横浜ＦＣの戦い振りが、川崎Ｆにプレッシャーを与えていた』とするのがより正しい表現というものだろう。

試合は、立ち上がりやや優勢なゲーム運びを見せる川崎Ｆが26分に先制。ペナルティエリア左奥深くまで侵入した谷口が大橋へバックパス、これを受けた大橋が至近距離から強烈なシュートを放つ。横浜ＦＣ・ＧＫ菅野が素晴らしい反応でこれを弾くも、そのボールは完全にフリーのジュニーニョの元へ。あとは難なく押し込むだけだった。横浜ＦＣも、くさびに当てた落としからのサイドチェンジや、カウンターからのカタタウのドリブル突破などでチャンスをうかがう。前半は、シュート数こそ横浜ＦＣの３に対し川崎Ｆは７という結果だったが、獲得数ＣＫでは６：３とホームチームが上回った。

後半は、開始早々に横浜ＦＣにビッグチャンスが訪れる。左サイドで相手ＤＦ２人をドリブルで置き去りにした内田が中央へ、バックとキーパーの間に絶妙なクロスを配球。これに飛び込んだのは三浦知だが、この決定的なボールをとらえきれず、ゴールの枠を外してしまう。その後も横浜ＦＣが攻める時間帯が続いた。しかし、西山のゴール隅をねらった中央から鋭い一撃は川崎Ｆ・ＧＫ川島の好守に阻まれ、決まったかに見えたロスタイムの内田のＦＫはポストを直撃するなど、あと一歩及ばずタイムアップ。０−１で川崎ＦがＡＣＬを含み公式戦８試合振りの勝利をつかんだ。

川崎Ｆ・関塚監督の「選手が非常に…、重かった、というか固かった」という記者会見でのひとことは、疲労もさることながら、１点を先行したものの、長く勝ち星に見放されるなか、失点して追いつかれることを恐れた選手の状態を的確に言い表したものといえるだろう。後半だけなら、川崎Ｆはシュート２本、獲得ＣＫ数は０。ときおりジュニーニョがカウンターからのドリブルを試みるも、味方の飛び出しが少なく『パスと見せかけて突破』という選択肢がないためか、２人・３人と人数をかけて止めにくる横浜ＦＣ・ＤＦ陣の前に、ほとんど決定的な場面をつくりだすことはできなかった。

では、川崎Ｆの調子が悪すぎたので、相対的に横浜ＦＣの内容がよく見えただけなのだろうか。それも正しい評価とは思えない。「カタタウ選手を自由に動かしてあげようと考え、彼の動きを見て、彼のつくったスペースに顔を出したり、逆に自分がウラに抜けてカタタウが下がったり、という場面をつくるようにしました」と言い残した内田、中盤にタメができると果敢にオーバーラップを試みた太田、その太田をおとりにしてドリブルでの中央突破を見せた三浦淳、危険と見るや敵陣奥深くまで侵入し相手ボランチをチェックしにいったマルコスパウロなどなど、選手たちは、自ら判断しリスクを負って、監督の指示プラスαのプレーにトライしようとしていた。ここ数試合、「ポゼッション」「つなぐサッカー」という言葉に縛られ、不甲斐ない試合が続いていた感があったが、チームはわずかながら、また一歩成長の兆しを見せはじめている。このようなゲームを続ける限り、たとえ何があってもサポーターは熱い声援を惜しまないだろう。

また、この日笛を吹いた東城穣主審に称賛の言葉を送りたい。ファウルの基準をやや緩めに設定し、無闇に試合の流れを止めないように務めた見事なレフェリングは、試合の見どころの一つであったと言ってもいいだろう。はじめのうちは、ＦＫをもらえないことに不服そうな顔をしていた選手もいたが、時間とともに判定基準が理解されていくにつれ、ジャッジへの抗議などはほとんど見られなくなった。レフェリーを積極的に評価する姿勢も忘れたくないものだ。

以上