9月17日(日) 2006 J2リーグ戦 第40節
山形 1 - 1 湘南 (18:04/山形県/3,514人)
得点者:'21 氏原良二(山形)、'54 アジエル(湘南)
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「今日はアウェイだが、最初からホームのつもりで戦え」
意味するところは、高い位置で奪い積極的な仕掛けを挑むこと。菅野監督のそうした指示にもかかわらず、湘南は立ち上がりから「勇気のない戦い方」(菅野監督)を強いられ、前半には先制点まで許してしまうのだから、サッカーは難しい。
顕著だったのが両SB。特に左の尾亦が初めて高い位置で絡んだのが、北島のスルーパスに飛び出した前半44分。それまではハーフウェイラインをまたぐこともままならなかった。理由のひとつは、山形の戦術にある。この日、山形は湘南の積極プレスに対処するため、ポゼッション時には両SBを高い位置に浮かせていた。自然、両SHも高い位置で張ることが可能となり、湘南のSBに入るボールに素早く蓋をすることに成功。さらに、山形がボールをサイドに逃がすようなプレスを前線から展開し中央で起点をつくらせなかったことも、湘南がSBの攻め上がりを引き出せない背景にあった。
中盤では、ボランチの北島が「前から積極的に」を忠実にこなしていたが、ボランチの相方ニヴァウドとの連携の拙さからDFライン前のスペースを使われていた。そのスペースを積極的に突いた山形の選手が宮沢だった。2年前に同じユニフォームを着ている(04年途中から山形に在籍)とは言え、チーム合流わずか5日目にして「左サイドに張るだけじゃなく、相手のラインとラインの間に入ってきてポイントになり、サイドバックを引き出す動き、そしてそこからのスルーパス」(山形・樋口監督)をこなしていた。得点にはつながらなかったが、スルーパスは相手にとってじつに嫌なタイミングでライン裏を突いていた。
その宮沢のアシストで山形に先制点が生まれたのが前半21分。高い位置で起点となった根本が左の宮沢へ渡し、自らは相手DFをラインごと引き連れてゴール前へ走り込む。宮沢のグラウンダークロスの行く先は、その根本ではなく、時間差で走り込んできた氏原の足元。ノーマークの氏原がボックスの淵で左足を振り抜くと、ボールは壁の間を抜けてゴールネットを揺らした。レアンドロ不在で決定力が不安視されるなか、04年の新潟でチームメイトだった2人のホットラインでまずは打開した。
先制した山形は、ここでほんの少し安全重視に舵を切る。先制までの時間帯でも然したる決定機はつくれていなかったが、前方が詰まってもプレッシャーのない後方まで戻し、相手を引き出してから再度組み立てる余裕を、1点リードのアドバンテージがつくってくれた。ただし、紙一重の難しい駆け引きではあるが、前線で勝負する積極性が減退したことも否めない。一方、先制された湘南も、前半残り10分ほどとなったあたりから修正を図っていた。「途中からちょっとリトリートしようという話になった」(北島)とボランチがDFライン前のスペースを埋める意識を高め、両SHは中央でのプレーを増やしていく。中盤をボックス型にして選手間の距離を近くすることで前線で起点ができるようになり、SBも前方のスペースを利して、将棋の駒の香車のように縦に動ける環境がしだいに整っていった。
山形のセーフティさを求めるベクトルと湘南の攻撃性を求めるベクトルがついに交わったのは後半9分。左サイドから放たれた永里の縦パスが裏のスペースを突く。これにひと足早く追いついた尾亦がゴールライン手前から上げたクロスを、マークを外したアジエルがファーサイドでヘディング。同点のゴールマウスをとらえた。
2つのベクトルの軌道はその後もしばらくは変わることがなかった。山形は後半13分に林を、30分には原を投入して2トップを入れ替えたが、ラインのコンパクトさを取り戻した湘南の隙間に潜り込んだところで、食いつきの素早さにボールをゴールに近づけるパスが出せず、比較的手薄な左右のサイドから仕掛ける場面も少なくはなかったが、ドリブルを開始したのはほとんどが低い位置。ゴール前の守備を固める時間的な猶予を与えた状態でのクロスは、跳ね返されるのがオチだった。湘南もニヴァウドを中町に代えて攻撃の起点を増やし、永里に代えて起用された加藤が前線でがむしゃらにボールを追うなど効果的な手を打つ。しかし、山形の後半のシュート数をわずか1本に抑えることはできても、勝ち点3をつかむ決勝のゴールを生むことができず、ドローで試合終了のホイッスルは鳴った。
前日に上位3チームが勝ち点3を積み上げたことを受け、離されないためになんとしても勝ちたかった試合で、結果は山形が3試合、湘南は2試合続けてのドロー。両チームを取り巻く環境はさらに厳しいものとなった。「前線のポイントができてサイドの選手は初めて追い越していけるが、今日はほとんどボールが収まらなかったのが前に行けなかった最大の要因」(山形・樋口監督)、「後半立ち上がりから修正ができたとは思っているが、それ(前半のようなプレー)を繰り返しているようじゃダメ」(湘南・菅野監督)と、それぞれが容易には改善されない課題を抱えて残すは11試合。選手一人ひとりがピッチ上で表現するものは、土壇場のなかの土壇場をともに戦うサポーターの胸を揺さぶるものでなければならない。
以上
2006.09.18 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
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