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【日本代表 vs イエメン代表】前日練習後のオシム監督コメント(06.09.06)

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●AFCアジアカップ2007予選大会 グループA
9月6日21:20キックオフ(日本時間)/イエメン・サナア
日本代表 対 イエメン代表
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●オシム監督:
Q:相手は守備的に来ると思うが、点を取るためのディテールの修正は?
「向こうが守備的に来るというのは監督にインタビューしたのですか?(質問者が「いえ、してません」と答えると)どうして守備的に来ると分かるのですか?(「力関係として日本が主導権を握ることが予想されるからです」と再び応じる)政治的な力関係についての話ですか(笑)?政治経済は難しいです(笑)

サッカーのことで言えば、力関係は接近している。特にホームだから向こうが守備的に来るとは思っていない。イエメンがサウジアラビアとホームでやった時には大変オフェンシブで、結果はサウジアラビアが勝ったわけだが、イエメンがリスクを冒して攻め、サウジアラビアがカウンターで得点を奪った。内容的にはイエメンが攻めていた。だから新潟での試合と違って、彼らも力を発揮しようと狙ってくると思う。もちろん、日本と試合をするわけだから、こちらの出方にも関わってくる。どういう戦い方になるかを想定して、どんなことにも対応できるように準備をしている。日本選手は幸いにしてクレバーな選手を連れてきたので、多分できることだろうと思っている。ご覧のようにピッチ状態がよくないので、利益を得るチーム、あるいは不利益の出るチームが出ると思う。つまり、運によって左右される確率が高いのではないか。現在のサッカーはダイレクトプレーや速いプレーが主流となっているが、こういうピッチではそれが通用しない。少なくとも日本の方がハンディキャップがあると言える。彼らはホームであり慣れている。

しかし、イエメンの側にも中盤で優れたテクニックを持っている選手が何人かいる。彼らにとってこういう状態は都合が悪いのではないか。予測できない事態が発生するかもしれないということを計算に入れて試合に臨まなくてはいけない。とりわけ、ミスが出るということがある。通常の試合では考えられないようなミスが出るということ。

とはいえ、このイエメンのサヌアに来て試合をするというのは、大変いい機会だと思っている。こういう状況にも適応しなくてはならないということを選手たちが学べるからだ。個人能力ではなくチームの力で適応できる、そういうことを望んでいる。今、話を長々としているのは、質問に対する答えということではなくて、ただ事実を淡々と述べているだけ。そこに全て解決しなければならない問題が含まれている。相手がホームでアグレッシブに来ると考えているし、リスクを冒してくるかもしれない。向こうは0−0でいいとは考えていない。そういう試合展開になるということを想定して準備をしているということだ。答えは明日の試合で出るでしょう」

Q:ピッチコンディションが悪いと言われたが、有効になると思われるセットプレーについては改善は期待できるのか?
「私はピッチコンディションが悪いと言う言葉で表現したわけではない。ピッチコンディションはこのような状態であると申し上げただけ。(通訳に対して)きちんと翻訳してください。私が例えばどこかの王国の王様や皇太子でここに来て、非常にいいグランドであると言えば、それはいいグランドであるという風になるわけですから(笑)。みなさんが見て『いい』と考えているのなら、そこから考えを明らかにしますが…。

この質問の回答を始めるが、セットプレーも大事ということは一般的には言えることだが、ただ理論上のことで、試合は始まってみなくては分からない。日本の思うようにイエメン側がファウルをしてくる。そこでFKを得られるとは限らないし、FKを上手く生かせるかということも試合が始まってみなくては分からないこと。ですから、あらゆる可能性をチャレンジして試合では全力を尽くすということだけ申し上げておく。負ける可能性もある。ボールがイレギュラーバウンドして試合に負けることもあるかもしれない。

ここで記者のみなさんに理解していただきたいのは、自分たちがどういう意図を持ってやったのか、それが上手くいったのかということ。誰も最初から負けようと思ってのぞむ選手はいませんし、負ければ残念だが。サウジアラビアに負けたのは個人としては大変残念だし、皆さんがどういう記事を書いたのかまだ読んでいないので分からないが、もしかしたら読まない方がいいかもしれない。負けることを臨んでいるわけではないけれども、どういうインテンションで目標で臨んでどういうプレーをしたか、どういう努力をしたか、そういうことを理解して頂きたいと思っている。

サウジアラビア戦のビデオを3回見たが、つくづく思ったのは、サウジアラビアのゴールに向かってのシュートはあの1回だけだった。それはこちら側のミスからのものだったし、得点シーンはチャンスらしいチャンスではなかったところから生まれた。それに対し、日本は少なくとも7回はあった。入ってもおかしくはないシーンばかりだった。ところが試合に勝つことはできなかった。試合の内容としてはチャンスの数では日本が多かった。しかし、結果は負けました。そういうことが実際に起きているわけし、イエメン戦でもそうなるかもしれません」

Q:高地と酸素濃度については?
「到着してから何も変わったことは感じていない。しかもそれは私だけではなく、選手も相手側も同じ条件。やってみれば分かります。ボリビアやペルーやエクアドルなんかは3000mでやっています。メキシコも2000m級だし、イエメンが、もしそういう地の利を生かして勝とうとしているのならば、それが自然な最もなこと。これはヨーロッパでもそう。例えばスカンジナビア諸国がスペインと対戦する、それに勝ちたいと思う時には、ノルウェーのフィヨルドまで連れて行って過酷な条件で試合をするわけです。それはサッカーでは当然のこと。サナアで試合をするという条件は変えられない。ここの酸素の薄さや標高の高さを変えることもできない。もしかして対応するということを最優先で考えるのであれば、日本サッカー協会が日程を調整して1ヶ月前に現地に来て高地トレーニングをして、準備をするということが理論的には可能ですよね。それがよかったかもしれませんが(苦笑)。まあ、その条件でやっていくしかないと思うが。ここの人にとっては個々の空気や環境は当たり前のことだから、現地の人にとって当たり前のところで当たり前に試合をして、できれば勝つということ。酸素は幸いにして生きていくには十分の量があるようなので(笑)」

Q:先ほどクレバーな選手たちを連れてきたといわれたが、、今日の練習を見てクレバーだと感じたか?
「日本に残っている選手がクレバーでないというわけではないですよね?代表に入った選手が特別に優れているというわけではない。その意味では。サッカーというのは大学などの学校とは違うわけで、もっとクレバーな選手であれば、大学に行ってお医者さんや政治家になっていると思う(笑)。選手たちのトレーニングのプレーには満足はしていない。が、クレバーでないとも言えない。毎日新しい要素を入れてトレーニングをしているし、こちらも試すトレーニングもある。選手たちがついてくるのは容易ではないと思う。もちろん代表選手というのは代表チームだけではなく、各クラブでもプレーしているわけだから、人生を2倍生きているようなもの。Jクラブという人生それから代表チームという人生、2つ生きているわけです。

例えばヨーロッパの各クラブのリーグと代表チームの戦い方が似ているというところまで行っていないし、代表チームが1つの強いチームを軸にして作られているわけでもないから、各クラブと代表のやり方、トレーニングも違ってくる。しかしそれは悪いことではない。というのは、各クラブで自然と頭を使っているし、それがいいと思ってやっているわけで、同じくらい代表に来て頭を使えば無理なく対応できると思う。全部が同じやり方ででできればいいし、一番楽なのだが、こういう違うコンディションのところに来て適応力があるかはまた別の話になってしまう」

Q:フォーメーション練習で外れていた加地、駒野、鈴木啓の3名について、明日はサブか?
「がっかりしたのは確かだ。が、まだ変えるとは決めてはいない。普段の力を発揮していなかったのはご指摘の通りだ。その中の何人かは、はるかにいいプレーができたはず。駒野と加地の2人はディフェンス面では問題ない。私が望んでいたのは、相手にとってもっともっと危険な地域に侵入するプレーだ。彼ら2人のメリットは足が速いこと、守備がしっかりしていること。それが基本になるクオリティーです。それを生かしつつ、スピードを生かして攻めることや守ること、そういう能力があるか、もしあるとすればオフェンスでその能力を使いたいと考えていた。鈴木啓については大きな問題があったとは思っていない。相手のいいところをつぶす、そういうプレーを忠実にやっていた。日本のマケレレです。これはマケレレにとって褒め言葉だが(笑)。鈴木啓の方がボールを持って攻めるときに力を発揮することができる選手だと思う。それは私が今、発見したことではなく、みなさんがご存知のことだが。サッカーは10人でやるものではなく、もう1人いる。これまでの日本の試合では、阿部、加地、駒野、闘莉王、坪井といった選手が守備のベースになっていたが、それらの選手もつねに使えるというわけではなく、時にコンディションや対戦相手によって変えるということだ。

例えばこういうピッチコンディションで、もっと相手のケアをしなくてはいけない場合、あるいはクリエイティブな選手を投入しなくてはならない場合、いろんな場合が考えられますが、それは柔軟に対応するということ。サッカーのルールが変われば、違った戦い方をしなくてはならない。鈴木啓の調子が悪ければ、中村直、羽生、山瀬、長谷部などの選手が代わりをすることは大いにあるわけです。ただし、現在の日本には守備もできる、攻撃も素晴らしいという両方をできるMFがいないのも事実だ。

ブラジルを例に挙げると、ロナウジーニョ、カカ、ジュニーニョと3人の優れた選手がいる。しかもすごく優れている選手だ。でもフランス戦ではどうだったか?オフェンシブの3人を併用するのではなく、1人引っ込めてディフェンシブな選手を1人増やした方が良かったのかもしれません。そういうことです。そして前線にはそのほかにロナウドとアドリアーノがいる。合わせて5人の世界的な大スターが揃っていたわけです。スター選手ですから派手に扱われますが、実際に試合が始まってみてディフェンスはどうだったのか?
明日同じメンバーで試合をしてどうなんだ?というのはまた違う。守備がしっかり組織されたチームに勝つのはブラジルであっても難しいということです」

Q:昨日練習をしていたが、日本人のシュートの精度についてどう思うか?
「よくなかったということ?あるいは下手だったということ?それはご指摘の通りだと思う。何かが欠けているところがある。それはシュートだけでなくて、スキル全体の問題が含まれている。体のあらゆる場所でボールコントロール、しかもそれがいろいろな種類のボールを止める、蹴る、あるいは切り返すそういうことができる能力があればいいわけです。そういうことが日本ではリフティングなどレクリエーションの1部として扱われているが、実際のプレーに生かされていない。あとはメンタルの問題がある。楽しんでやっている時の集中力に問題があるのかもしれない。昨日の練習で残念だったのは、GKがシュートを防いでしまったので、夕食時間が遅れた選手がいたことだ(笑)」

以上
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