●AFCアジアカップ2007予選大会 グループA
9月6日21:20キックオフ(日本時間)/イエメン・サナア
日本代表 対 イエメン代表
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サウジアラビア戦の悔しい敗戦から一夜明けた4日午前。日本代表はチャーター機でジェッダからイエメンの首都・サナアへ移動した。約1時間半のフライトを経て、現地時間正午ごろにサナアへ到着。ゲームから丸1日も経過していない夕方16時半から、現地のアル・ドラフィ・スタジアムでいきなりトレーニングに臨んだ。
その練習を始める前にちょっとしたハプニングが起きた。日本代表のトレーニングが行われることをどこで聞きつけたのか分からないが、地元の人々が市街地のど真ん中にあるアル・ドラフィ・スタジアムの前に集結。大変な騒ぎになったのだ。そこに地元警察がやってきて強引に選手をガード。全てのチームスタッフが中に入ったところで門を閉めてカギをかけてしまったのだ。外に締め出されたメディア関係者が抗議してもなかなか中に入れてもらえない。しばらくひと悶着があった末、問題なく取材ができたが、中東で最も貧しく治安の悪い国といわれるイエメンだけに、何が起こるか分からない不気味さがいきなり感じられた。
選手たちを驚かせたのは地元の雰囲気だけではなかった。サウジアラビアから、信じられないほど急激に気候が変化したのだ。
高温多湿のジェッダは連日、気温33〜34度で湿度も80%を超える勢いだった。しかし標高2300mの高地・サナアは非常に爽やかな空気が流れる。日中の最高気温が27度、最低気温が16度と非常に過ごしやすいコンディションだ。ただし高地とあって酸素は薄い。サナアは周囲の山々との関係もあり、酸素濃度は標高3000mのところと同じレベル。「空気が薄い。息を吸ったときの薄さが違うし、すぐ息が上がってしまう感じ」と佐藤寿人(広島)もコメントしており、これは日本を阻む要素になりそうだ。
そんな中、トレーニングがスタート。この日は前日の試合出場組とそうでないグループとに分かれてメニューが進んだ。
まず試合出場組だが、右ひざネンザの巻誠一郎(千葉)とGK練習に参加した川口能活(磐田)を除く9人がゆっくりとウォーキングを開始。ランニングへと移行した。ジーコジャパン時代は軽くクールダウンをするだけで彼らの練習は終わっていたが、オシム監督は違う。走りの後、彼らに6対3、4対4+フリーマン+GKなどボールをつかったトレーニングも消化させたのだ。普段よりはスピードと運動量を落とし、負荷を軽めにはしたものの、攻守の切り替えへの要求は依然として高い。90分間過酷な試合をこなした翌日とは思えないほど緊張感ある練習だ。時間も75分程度とやはり長かった。指揮官は「代表チームには限られた時間しかないのだから、1日もムダにはしたくない」と考え、このようなメニューを課しているのだろう。
一方の控え組の方は、いつも通りのハードな練習だった。左足つけ根に痛みを訴えた小林大悟(大宮)を除く10人の選手たちは、5色のビブスに分かれて4対1から練習を始める。続いてオールコートの8分の1のスペースを使った6対4、サイドでは2対1・ペナルティエリア内では2対2というのを組みあわせた練習など、トレーニングが進むにつれて指揮官の指示が細かくなっていった。いいプレーが出れば「ブラボー」を繰り返し、問題があればフリーズして1つ1つ丁寧に説明する。やっていることは基本的なことなのだが、オシム監督の手にかかると1つの練習に2つも3つも意味があるように思えてくる。それが名将の手腕なのかもしれない。
最後はジーコジャパン時代によく行われていたシュート練習。それも決めた者から順番に上がるという形式だった。しかし、ただ単に決めればいいわけではない。オシム監督はアウトサイドとインサイドのシュートを蹴らせ、「GKの位置を見ながら蹴る種類を変えるように」とアドバイスを送ったのだ。シュートは状況判断が最も難しいプレー。そこで正しい決断力を身につけさせるために、指揮官は工夫をしたようだ。
終わってみれば、時計の針は18時を少し過ぎたところを指していた。この日も90分間みっちりとトレーニングを消化し、指揮官はオシムイズムを植えつけた。「控えの選手にもこれだけ熱心に教えてくれるのは、僕らにもメッセージがあるということ」と佐藤は前向きに捉えた。こうして控え組の選手にさらなる意欲が生まれれば、チームも活性化される。1つの練習がもたらすものを軽視はできないのだ。
2日後のイエメン戦では、巻の負傷もあり、何人かのメンバーが入れ替えられる可能性もある。控え組の選手たちもチャンスを得ようと必死。この競争意識が内容ある勝利につながればいい。
以上
2006.09.04 Reported by 元川悦子
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