●AFCアジアカップ2007予選大会 グループA
9月3日20:30キックオフ(現地時間)サウジアラビア・ジェッダ
日本代表 0-1 サウジアラビア代表
得点者:73' アルドサリ(サウジアラビア代表)
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「この厳しいコンディションの中、それぞれが頑張り、クオリティの高さも発揮されたが、それを美しいハーモニーにする段階に至っていない。チームにとって深刻なのは、選手があまり考えずにプレーしたこと。子供のようなサッカーをしてしまったことだ」
たった1つのゴールを失い、アジアのタイトルを争う宿敵・サウジアラビアに敗れた直後のテレビインタビューで、オシム監督はやや興奮気味にこう言った。
確かに今回の日本代表は、強行日程と猛烈な暑さを強いられる中、頭を使ったパス回しをしようという努力の跡を見せた。が、特に前半はミスパスが多く、カウンターを食らうなど主導権が握れない。巻誠一郎(千葉)と田中達也(浦和)のFW陣も孤立。そんな中で田中が2度3度決定機に直面するが、それもゴールに結びつかない。後半になると、今度はミスからサウジアラビアに失点。終わってみれば、90年アジア大会(北京)以来16年ぶりのサウジアラビア戦敗戦を喫してしまった。チーム発足後初の黒星に指揮官は「負けたことで学ぶこともある」と前向きだったが、やはり負けは負け。この悔しさをバネに課題を修正していくしかない。
2007年アジアカップ(ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア共催)予選A組の大一番・サウジアラビア戦が行われた3日のジェッダは相変わらずの高温多湿だった。20時30分のプリンス・アブドゥラ、アルファイサル・スタジアムは気温33度、湿度45%。じっとしているだけで汗が滴り落ちる低温サウナのような状態だ。3日間の準備期間で適応するのは難しいと思われた。
そんな中、指揮官が送り出したスタメンは予想通り、8月16日のイエメン戦(新潟)と全く同じ顔ぶれだった。毎回可能性のある選手を呼んで自身の哲学を植えつけているオシム監督だが、勝負のかかった場面で起用するのは「ある程度、計算できる人間」ということだろう。一方のサウジアラビアはドイツワールドカップを率いたブラジル人のパケタ監督が続投。DFアルドキとトゥカル、ボランチのオマル、ハリリ、2列目のアブドゥルガニらも大会を経験した選手たちだ。
チーム発足直後の日本と違い、サウジアラビアはポゼッションしながら攻撃を組み立てるスタイルが定着していた。守備の寄せも早く、日本の2トップは簡単にボールを持たせてもらえない。サウジアラビアの2トップを見て日本は阿部勇樹(千葉)が下がって3バックに布陣変更するも、逆に中盤が開いてしまってバランスが悪くなった。結果として開始15分間はサウジアラビアに主導権を握られる。その時間帯を何とか乗り切り、ボールを回し始めた日本。30分過ぎには決定機が立て続けにめぐってくる。しかし31分に田中達也が胸でプッシュしたシュートがGK正面に飛んでしまったのを皮切りに、遠藤保仁(G大阪)のミドルシュート、田中達也が再びフリーになった場面など、絶好のチャンスがあったが、これを決められない。指揮官が変わっても、以前からの日本サッカー界の問題である決定力不足は簡単に解消できないのだ。
スコアレスのまま折り返した後半、再びサウジアラビアにペースを握られる。川口能活(磐田)がアブドゥルガニにミスパスし、いきなり強引なシュートを打たれるなど、自ら苦境を招くようなシーンも目立った。
それでも後半はサウジアラビアも疲れてきて中盤が間延びするようになった。日本はようやくボールポゼッションができるようになり、遠藤から加地亮(G大阪)が絡んで右サイドを崩す形も増える。「加地のクロスにあと一歩で巻や田中が飛び込んでいれば」というシーンもあり、連携不足が如実に出た。
そんないい流れを一瞬にして覆したのが後半28分のアルドサリの先制弾だった。遠藤のミスパスからボールを拾ったサウジアラビアは中盤のアミンが強引にシュートを放つ。これが田中マルクス闘莉王(浦和)の足に当たって、不運にもフリーのアルドサリの前に転がってしまった。彼は難なくゴールを射止める。その瞬間、白装束で埋まったスタジアムのバックスタンドから割れんばかりの大歓声が起きた。オシム監督は失点直前に我那覇和樹(川崎F)を交代要員として送り出していたが、その目の前で失点を食らうという皮肉な展開になった。
ここから1点を返そうと羽生直剛(千葉)を投入するも、攻撃がかみ合わない。闘莉王が前線に上がったところでボールを取られたり、クロスを上げるべきところで最終ラインにパスを返したりと、最後までギクシャクしたまま日本は終了の笛を聞くことになった。
暑さと疲れ、アウェーという環境を考えれば、新生ジャパンは善戦したといえるだろう。指揮官も「内容はよかった」と連発しており、イエメン戦よりはボール回しからの組み立てができた印象だった。しかし細かいディテールにはまだまだ問題がある。1点を取られたら何をしなければいけないか、どう畳み掛ける攻撃を組み立てるのか…といった意思統一を持たないと、いつまでたっても相手を脅かすような怒涛の攻めにはならない。オシム監督のいう「子供のようなサッカー」とはこういった部分を指摘しているのだろう。オシムジャパンにはまだ時間が足りないけれども、このサウジアラビア戦は正直、勝てる試合だった。それだけにこの結果が悔しい。
理想のサッカーを作り上げる道は長く険しい。その難しさを選手たちもこのサウジアラビア戦で改めて痛感したのではないか。次のイエメン戦は中2日でより一層過酷な条件下だが、さらなる前進と勝利という結果がほしい。
以上
2006.09.04 Reported by 元川悦子
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【今後の試合スケジュール】
9月6日15:20キックオフ(現地時間)イエメン・サナア
AFCアジアカップ2007予選大会 グループA
日本代表 対 イエメン代表
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