6月のオランダで開催されたFIFAワールドユース選手権では、予選リーグと決勝トーナメント1回戦の計4試合を戦いながら、1勝も挙げることなく大会を去ることになったU-20日本代表。
決勝トーナメント1回戦（ラウンド16）のモロッコ戦は、ロスタイムでの失点で0-1の敗戦。ピッチ上で、そしてロッカールームで、選手によっては取材対応中に、これまでの試合とは比較にならないほどの涙を流した。流した涙の分だけ強くなる…などということはなく、あくまで実力・努力・経験…様々な蓄積の上で強くなるのがサッカー選手。そういう意味では、かけがえのない経験を積んだU-20日本代表の21選手。それぞれがこの経験を持ち帰り、日々のサッカーに活かすに違いない。
ここではそんな中からこの経験を早速Jリーグの舞台で活かしてくれそうな3選手をご紹介したい。J1再開後は、彼等にご注目を！


○水野晃樹（千葉）
「俺、絶対メンバーには入りませんから」
FIFAワールドユース選手権の最終登録メンバーが発表されるまで、自信たっぷりにこんなネガティブな宣言をしていたのが水野。兵藤、梶山らユース代表常連組にひきかえ、昨年12月に行われたAFCユース選手権終了後初の合宿で代表候補となり、そこからは定着。今大会の活躍に至る。
173cm58kgとは思えないスタミナと、名門・清水商高仕込みのテクニックの高さと戦術眼を持つ。千葉ではオシム監督の下でルーキーイヤーの昨年から試合に出場。今季も右サイドでレギュラーを張る。攻撃力を誇り、高い位置取りから始まるプレーヤーだけに、その裏を狙われることもしばしば。千葉での練習中にも先輩たちやオシム監督から本人が凹むほどに注意されることもあり、そこから這い上がろうとしている最中だ。
FIFAワールドユース選手権では、予選リーグ第2戦のベナン戦で直接フリーキックを決めて見せた。キックの精度、仕掛けのうまさ、クロスのタイミング、スタミナ。安定した技術とスタミナさえあれば、世界に通用することを証明してくれた。次はそれをJリーグで見せてほしい。


○家長昭博（G大阪）
技術レベルの高さこそが世界に通用するカギだということを、今回のFIFAワールドユース選手権で示してくれた家長。左サイドを難なく突破。相手選手2人に挟まれても、その間からするりと抜け出す間合い・うまさには、ため息が出た。加えて今大会では守備力も向上。中央で、時には逆サイドで、技術さえあればノーファウルで止められることも彼が見せつけてくれた。
どの試合も、前半の早い段階から攻撃的に機能していたのは彼のいた左サイドだけと言っても過言ではない。チームの戦い方についても、「全体に消極的」と攻撃陣らしく強気なコメントを試合後に残してみせたのも魅力だ。貴重なレフティーであること含め、今後面白い存在になっていくことは間違いない。
ただ、今季G大阪では試合終盤のワンポイントでの起用しかない。タレントひしめくG大阪の中盤でレギュラーを取ることはたしかに簡単ではない。しかし、世界の舞台でフィジカルで勝る相手にできたことがJリーグできないはずはない。まずはレギュラー奪取から。そこからすべてが始まる。


○前田俊介（広島）
確固たる技術、メンタルを持っていれば確実に輝くところがあると示してくれた前田。潰されても潰されても何度も仕掛ける。自分の形を持っているから、どの角度からでもゴールを視野に入れながらドリブルができる。予選リーグ最後のオーストラリア戦のゴールは、梶山がシュートを打つと思ってゴール前に詰めていた彼の嗅覚から生まれた。全体が消極的になってしまった時にも、自分がやることをわかっているので、プレーにブレがない、実に前田らしいシュートだった。
Jリーグではスタメン出場も経験。FIFAワールドユース選手権の出発前に行われたは第12節（5/14・大宮戦）では、左後方からのパスを右足で美しいシュートも決めている。
彼もチームに戻った後のレギュラー奪取がまずは必要。スーパーサブなどという言葉に満足することなく、スタメンに定着すること。それなしには次の舞台はやってこない。

以上3選手に共通することだが、一定レベルより上の、しかも安定した技術さえあればフィジカル（特にサイズ）が劣っても世界で通用することがわかった。そのほかに、選手たちがそれぞれに得た手応えもあるはずだ。それを胸に秘めてそれぞれのチームに戻る。Jリーグ再開とともに、彼等の活躍が見られる日ももうすぐだ。


以上

Reported by 了戒美子