首位から勝ち点差13の9位。もちろん2年連続Jリーグ王者の横浜FMにとって満足のいくものではない。しかし44日間で13試合を強いられた4〜5月のハードスケジュールでの激闘を考えれば、止むを得ない成績ではなかったか。
ただ、神戸戦(第4節)のロスタイムで追いつかれたドロー、第7〜8節の大宮、川崎F戦での連敗は痛かった。この3ゲームで全勝とはいかないまでも勝ち点6を獲得していれば中断前を単独2位で終えられたはずで、合格ラインをクリアできていたといえる。あくまで結果的にだが…。
原因は連戦での疲労よりも戦術練習が出来なかったこと。相手によってシステムを変えたり、新たな得点パターンを開発するようなことは通常でもないだろう。が、対戦相手を分析して注意点を見出し、対応策として攻守にちょっとしたバリエーションを準備する。そのためのトライ、トレーニングがほとんど出来なかった。久保の故障が長引いたこと、正GK榎本達のスランプ、働けなかったアデマール。計算どおりに進むなど考えている岡田監督ではない。いくらかの誤算は折り込み済みでシーズンに臨んでいる。過密日程を考えれば、リーグ戦の前半は苦しむだろうということも…。得点力不足、耐えるべき時間帯での失点。攻守の問題点は、実は表裏一体でサッカーの質がワンラックアップする途上であったことに由来している。相手が引いて守備的に来たときに、仕掛けて崩してゴールをもぎ取る迫力がなかったといえる。
◆再開後の展望・見どころ
『横浜FMの反攻』
これは再開後のJリーグのメインテーマのひとつではないか。実力、選手層の厚さには定評のあるところ。とくにアメリカ遠征のLAギャラクシー戦(0-2での勝利)の充実ぶりは、今季前半に比べて攻守両面での進化を感じさせた。象徴的なのがドゥトラ。来日以来、拮抗したゲームでは最初の突破口を開き、勝敗の分岐点となる良質なクロスを配給し、粘り強いマッチアップがサイドでの優位をもたらしてきた。ところが前半戦では高い位置を取られて、複数のマークに詰まってしまうシーンが目に付いた。だが現在は復調。全力プレーの背番号5は、囲まれても止まらずに仕掛けられるだけのキレと強さを蘇らせた。彼が機能すれば右サイドの田中隼磨はもっと活きてくる。
また、システムを3バックから、4バックに変更。両サイドがアタッカータイプだから、より攻撃的になるだろう。反面、リスクも大きくなり、ディフェンス間でより精度の高い連係が要求されるが、チーム全体として寄せるスピード、パスを奪うダッシュ力が戻ってきただけに、十分機能するのではないか。
心配なのがFWの駒で、安貞桓が契約満了でチームを去り、久保が復活するまでにはまだ時間がかかりそうだから、坂田と大島はフル活動を余儀なくされる。さらにゴール数を補う役目を負うのが奥。昨シーズン、2ケタ得点をあげたゴールへの意識とフリーキックのカーブのコントロールが求められるだろう。再開2戦目のホームでの鹿島戦(7/6・水)、さらに名古屋(7/9・土)、千葉(7/13・水)と続く3試合が大きなヤマ。ここで白星を重ねて勢いをつければ、首位の背中が見える時間は一気に短縮される。
◆HOT6の注目選手
○松田直樹
ポテンシャルは言うまでもない。精神的な部分を発信地とする好不調の波の荒さがあり、神戸戦で相手の挑発に乗るような形でイエローカードをもらったときは「28歳のチームリーダーとしての自覚のなさ」に落胆させられたファンも多かっただろう。しかし5月中旬からの沈着さには、一転感心させられることが多い。そして、6月1日に行われたプレシーズンマッチ・ユベントス戦での闘志と運動量にも…。
横浜FMのチームカラーの原色でもある松田の影響力、これはやはり大きいと言わざるを得ない。
○上野良治
2003シーズンに失ったレギュラーを再び奪い返した。自分の個性を多分かなりコントロールして、岡田イズムとチームのリズムを優先している。
横浜FMがここから盛り返して3年連続の覇権に到達するには、さらなるプラスアルファが必要ではないか。それが上野のゴール、およびゴールに直結するチャンスの数。ミドルシュート、スルーパスもまだまだ輝きを秘めている。根っからのF・マリノスファンは、ベールを脱いだ天性に期待している。
◆再開後のフォーメーション予想
以上
Reported by 池田博人(インサイド)