5勝2分5敗、2位の広島とは勝ち点3差の8位。「残留」をノルマに挑んだJ1元年の大宮にとって、ここまでの成績は高く評価されるべきであろう。象徴的だったのがG大阪との開幕戦だ。
優勝候補を相手に持ち前の堅守で前半をしのぎ切り、シフトアップしたG大阪の裏を狙う鮮やかなカウンターで先制。終盤にも代わって入った森田が加点し、完璧な試合運びでJ1初戦を勝利で飾った。成長著しいマーカスら若手に加えて、GK荒谷を含む昇格の原動力となったディフェンスラインは、J1で戦える能力を実証した。局面の打開を期待されて加入した新戦力の藤本や桜井も、攻撃にバリエーションを加えるなどハイパフォーマンスを発揮した。
だが、第5節の鹿島戦では力の差を見せ付けられ、この試合を含めて4~6節では3連敗を喫する。相手のミドルシュートに手を焼くなど、課題を浮き彫りにした。それでも、第7節で昨年の王者・横浜FMを2-1で下すと、再び上昇機運に乗り出す。ナビスコカップでは最終節の神戸戦に快勝し、決勝トーナメント進出を決めた。ナビスコカップが現行のレギュレーションとなった2002年以来、J1昇格1年目のチームが8強に残ったのは初めてである。
4-3-3の攻撃的なシフトにもトライした。3ボランチで中盤の守備を厚くするなど試行錯誤は続くが、三浦監督とチームの指針にブレはない。リーグ終盤にかけて上位陣を脅かす存在となれるか。正念場を迎える7月の6連戦で、ひとつの答えが明らかになりそうだ。
◆再開後の展望・見どころ
中断開けから名古屋(7/2)、磐田(7/6)、浦和(7/9)と、上位との対戦が続く。特に浦和にはナビスコカップで連敗、鹿島には第5節で完敗。さらに名古屋、磐田、千葉(7/18)と、大宮にとっては未知数の対戦が続くだけに、7月の6連戦はシーズンを占う意味でも重要な1ヶ月となりそうだ。
三浦監督はキャンプでの明確なテーマこそ明言は避けたものの、ナビスコカップ最終節の後にこう話している。
「今の状況を考えると紙一重の中に13から15チームがいるという印象があるので、まだ残留安定圏ではない。過去のJ1の試合で出た問題を洗い直して選手にフィードバックし、それを改善していきたい」
攻撃ではバリエーションの増加。4-3-1-2で挑んだナビスコカップの新潟戦(5/28)では藤本をトップ下に配し、1.5列目から果敢に飛び出すことで先制点を生み出した。4-4-2に戻した神戸戦(6/11)では中盤から前線にかけて豊富な運動量で相手ディフェンスラインの裏を突き、前半で2点を奪って3-0で快勝した。セットプレーから片岡がJ初得点を決めるなど、着実に手ごたえをつかんでいる。
守備ではミドルシュートからの失点が目立ったものの、バランサーの西村をボランチに回すなどして徐々にではあるが改善されてきた。大宮の特徴である守備力を維持したまま、より攻撃的なサッカーへのシフトチェンジを図れるか。攻撃力の高いチームを相手に、いよいよJ1仕様の大宮が本当に試されるときである。
◆HOT6の注目選手
攻撃的なサッカーへと転換する大宮にとって、カギを握るのはやはり藤本だ。開幕当初はサイドでのプレーが多かったが、360度見渡せるセンターに主戦場を移したナビスコカップ第4節(5/28)の新潟戦では、鮮やかなループシュートで今シーズン2点目を決めた。サイドに戻った神戸戦(6/11)でも、抜群の運動量で選手とボールを動かし、自らスペースに飛び込むことで何度もチャンスを演出。精力的に守備にも回り、中盤で相手のボールの出どころをことごとく封じた。ゲームの流れを読む能力にも長けており、膠着した場面では自らタメやくさびになって積極的にボールを動かす。藤本の投入で勢いを増したリーグ戦第11節F東京戦(5/8)、また、藤本の途中交代によってリズムを失ったナビスコカップ第4節・新潟戦(5/28)を見ても、もはや攻守に不可欠な存在であることに間違いはない。
守備では中盤から最終ラインのバランスを司る、西村の存在が欠かせない。3-0で快勝したナビスコカップ第6節・神戸戦は、相手のスペースを突くマーカスの動きが光ったが、その影でダブルボランチのパートナーである西村が中盤のバランスを的確に保っていた。昨年はサイドバックとして不動の位置を築いたが、今年はボランチとしての出場も増え、そのユーティリティ性を遺憾なく発揮している。ミドルシュートからの失点という課題をクリアするためにも、今後のシーズンに向けて大きな役割を担いそうだ。
◆再開後のフォーメーション予想
以上
Reported by 岩本勝暁