5月21日（土） 2005 ヤマザキナビスコカップ 第3節
鹿島 1 - 3 Ｃ大阪　（15:00／カシマ／8,218人）
得点者：'24 西澤明訓（Ｃ大阪）、'56 森島寛晃（Ｃ大阪）、'61 増田誓志（鹿島）、'67 古橋達弥（Ｃ大阪）
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３週前のリーグ戦で顔をあわせたチーム同士の対戦は、試合開始から前回のリプレイを見ているような展開が繰り広げられた。ボランチに入った新井場のパスを基点に深井、中島が前線へ飛びだしていく。C大阪・小林監督が「またしても前半の入り方が悪かった」と悔やんだ立ちあがり、16分に久藤がペナルティエリアで深井を倒しPKを与えてしまう。ゴール右隅をねらった深井のキックはGK吉田にストップされ、C大阪は最大のピンチを守護神の踏んばりでしのいだ。試合後、鹿島の深井が「PKを決めていれば、その後の流れが違った」と悔しさを覗かせれば、C大阪の森島、古橋、下村が口をそろえて「あのPKを止めてくれたことが大きかった」と安堵の表情を見せたように、11ｍの攻防を制したC大阪が試合の流れをつかみ始める。

PKから５分後の24分、久藤のパスを受けた森島がGK曽ヶ端の鼻先でパスを出し、ボールはゴール正面の西澤の元へ。西澤が得意のボレーで合わせ、先制点はC大阪に転がりこんだ。鹿島のトニーニョ　セレーゾ監督が「セレッソは９人で守っていた」と表したとおり、１点を奪ってからのC大阪は素早い帰陣とリスクを犯さないシンプルな攻め―――西澤にクサビを入れ、落としたボールをしっかりキープ、サイドを変え、鹿島守備陣の薄いところを突く―――を展開し、鹿島の勢いを削いだ。

後半に入ると鹿島が深井、阿部、石川とレフティを３人並べた左サイドを中心に攻勢に出る。50分、左サイドからのクロスに深井がダイレクトで合わせる。54分には増田の空けたスペースに石川が進入、クロスをあげる。新井場の頭には合わなかったが、サイドで数的優位を作り、素早くゴール前にクロスを入れるというC大阪のお株を奪うような攻めを見せた。

しかし56分、前掛りになった鹿島に落とし穴が待っていた。リスタートのボールをC大阪・久藤に奪われ、前線に展開。スルーパスを受けた森島がGKをドリブルで交わし、左足でゴールへ叩き込んだ。鹿島は61分に増田のヘッドで１点を返すが、67分にまたもカウンターを受け、古橋にゴールを決められてしまう。２点のビハインドを追いかけるため、70分に中島に変えて羽田を投入。岩政を最前線に上げるパワープレーに出たが「ラストパスや崩し方、クサビで落としたボールなど少しずつズレていた部分があった」（深井）と連携不足は否めず、崩しきれない場面がつづいた。73分には山本、中後と新人２人を投入したものの最後までC大阪の守りを崩すことができず、タイムアップの笛を聞いた。

今季のリーグ戦、ナビスコカップを含め１敗しかしていない鹿島に対し、C大阪は２戦連続で勝利を収めた。攻守のキーマン、ボランチの下村は好調の要因をこう分析する。「1トップ2シャドーの形が浸透してきたことがいい流れにつながっていると思います。まずはアキ（西澤）さんに当てて、そこがダメだったらモリシ（森島）さん、無理ならフル（古橋）とクサビをねらって、受け手が無理だと思ったら、どんどんスペースを空ける動きをするんです。前線でタメを作ってくれるので、僕らボランチも前に絡んでいける。結果的に最終ラインを押し上げる時間も稼げる。前の３人ががんばってくれているのが大きいですよ」。C大阪はボールを持った選手のプレーに迷いがなく、チーム全体がビジョンを共有していた。一方、敗れた鹿島は代表選手不在でケガ人が多く、慣れないメンバーで戦うというエクスキューズはあるものの、C大阪とは対照的な「ズレていた部分があった」（深井）との言葉に今日の試合を集約することができる。セレーゾ監督は「C大阪は今年の頭から同じフォーメーション、同じやりかたでコンビネーションを高めている。その差が出たのではないか」と苦しい胸のうちを吐いた。代表選手を多数抱える強豪ゆえの悩みといえばそれまでだが、そこを解消していかない限り、同じような言葉を今後も聞くことになるだろう。

以上

2005.05.21 Reported by 鈴木智之