9月4日(土) 2004 ヤマザキナビスコカップ 準々決勝
名古屋 2 - 1 鹿島 (19:02/瑞穂陸/6,068人)
得点者:'37 井川祐輔(名古屋)、'64 中島裕希(鹿島)、'70 マルケス(名古屋)
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激しく叩き付ける雨の音。スタンドから見るピッチが白く霞むほどの豪雨の中、キックオフの笛が鳴った。
いつもはピッチサイドギリギリの所まで出てきて、選手に大きなジェスチャーで指示を出すトニーニョ・セレーゾ監督(鹿島)だが、今日はいつもとは違いベンチの中で試合を見守る。反対にネルシーニョ監督(名古屋)はベンチを離れ、しきりに選手にポジションの修正を呼びかけていた。彼の左手にはタオルがしっかりと握られていたが、全く使おうとせず(というよりもタオルからしずくが流れている状態だったので)ただひたすら目線はピッチに注がれていた。
その両極端な監督の様子からも分かるように、前半は鹿島が試合を有利に進める時間帯が続いた。
1トップ気味に構えるバロンが名古屋DFをひきつけ、前線に空いたスペースに2列目以降の野沢・青木・新井場・フェルナンドが顔をだす。特に左サイドハーフに入った新井場が攻撃に積極的に絡み、サイドだけでなく中央に切り込んでのシュートなど、名古屋ゴールを脅かす。「前半は本当に素晴らしかった。ハーフタイムで選手にはいうことはなかった。特に何人かの選手は不慣れなポジションでいいパフォーマンスを表していたのですごく満足のいく前半だった」とトニーニョ・セレーゾ監督も選手を手放しで褒め称えるほど、前半の内容は満足のいくものだった。
反対にネルシーニョ監督は「前半は守備がよくなかった。チームは消極的で失点するのを怖がっていた。得点されないのが不思議なくらいだった」とDFのマークの受け渡しのズレによって、鹿島にチャンスを与える場面が多かったと振り返る。
しかし、得点から見ると井川の初ゴールによって名古屋が先制し、1-0で前半を折り返す形。内容的には鹿島が有利に進めてはいたものの、無得点に終わったことが後々鹿島に重くのしかかることとなる。
前半シュート数は鹿島が10に対し、名古屋は4。しかし後半に入るとその数字は逆転する。名古屋10に対し鹿島が4と、前半は消極的だった名古屋が後半は積極的にゴールを狙うようになった。
「前半は悪すぎたから、後半はしっかり切り替えてやった。前半が悪くても後半切り替えてやることが出来たというのは自分たちのサッカーに対して自信が出来た証」(秋田)。名古屋は攻守の切り替えが早く、中盤でボールを奪ってのカウンターからウェズレイ・マルケス選手がシュートに持ち込む。流れは一転して名古屋に傾き始めた。
その流れを変えるためにも鹿島ベンチが一気に動いた後半19分。ピッチに投入されたばかりの深井がDFを振り切って絶妙なクロスを上げると、そこに同じく途中出場の中島がドンピシャでヘッドであわせ同点打を叩き込む。ゴールの瞬間中島以上に喜びを表現する深井が印象的だった。まさにトニーニョ・セレーゾ監督の采配が功を奏した結果となった。しかし、今日の名古屋はそのまま黙ってはいなかった。
後半25分にウェズレイがハーフウェーラインを過ぎた辺りで倒される。すると名古屋は素早いリスタートから鹿島DFが体制を整える前に中村→吉村とつなぎ、最後はマルケスが鮮やかにゴールを決め2-1と再び名古屋がリード。「リスタートが早いのは事前にわかっていただけに、そこでやられてしまったのは悔しい」(青木)と事前にリスタートの早さに関して情報が入っていただけに鹿島の選手にとっては悔しい失点となってしまった。
その後も一進一退の攻防は続いた。そして大きなドラマはロスタイムに待っていた。試合終了間際、ペナルティエリアに抜け出した深井と川島が1対1に。体を張ってとめに入った川島に一発退場のレッドカードが出されると、スタジアムには大きなどよめきが起こった。ロスタイムでのPK。誰もが延長戦を考えた瞬間だった。しかし、フェルナンドが蹴ったボールはゴールポストの左に大きく反れ、落胆する鹿島サポーターの前に空しく転がっていった。
試合はそのまま2-1で名古屋の劇的な勝利で幕を閉じた。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、退場した川島は顔をしかめた。「PKまでは落ち着いて出来ていたし、ああいう形で終わりたくなかった。残り時間が少なかった分すごく悔しかった」とピッチを去る時、悔し涙が自然と流れていた。「相手のシュートが外れた瞬間は本当にホッとした」と試合後苦笑いを浮かべながら答えてくれた。
試合後の監督会見でトニーニョ・セレーゾ監督は「今日は選手に感謝の気持ちでいっぱいだし、選手たちを称えたいと思う。フルのメンバーがそろっているグランパスに対して、互角の戦いをしたということは選手たちにこの場を借りて感謝したいと思う」と勝利は逃したものの、戦う姿勢を含め選手のパフォーマンスに賞賛の意を示した。確かに鹿島は代表メンバーが欠けての試合だったが、若手がしっかり存在感を示した試合でもあった。
名古屋は準決勝に駒を進めることとなる。次の相手は絶好調の浦和だ。しかし、リーグ戦に続いてナビスコ杯でも強豪相手に勝利を飾った名古屋。「全員で苦しい戦いを勝った。そして最後は運も味方につけた」(マルケス)。運さえも味方につけてしまうほど、今日の名古屋には勢いがあった。また自分たちで流れを変えることが出来た自信が、今後さらにチームを押し上げていくに違いない。
以上
2004.09.05 Reported by 柴田愛子
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