東京V 1 - 2 磐田 (15:03:味スタ) 入場者数 33,597人

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　９月下旬を思わせるような暖かい陽気、そして勝ったチームが首位という好カードに誘われ、３万３５９７人の大観衆で埋まった味の素スタジアムがもっとも沸いたのは後半35分のこと。ケガのため長期離脱していた中山が、５月24日の名古屋戦以来、およそ半年ぶりにピッチに帰って来た瞬間だ。それからわずか６分の間に、磐田は２ゴールを奪って東京Vに逆転勝ちした。

　サイドを起点に攻撃を展開する磐田に対して、米山とロペスのセンターバックコンビを中心にゴール前に強固なディフェンス網を張る東京V。攻める磐田と守る東京Vという構図になったが、先制したのは東京Vだった。17分、左サイドを駆け上がり、エムボマからの絶妙なラストパスを受けた平本が思い切りよく左足を振り抜くと、ボールはゴールネットに突き刺さった。

　対する磐田は攻撃の勢いをさらに強め、失点直後に福西の縦パスに反応したグラウがフリーでシュートを放ったが、これは惜しくもオフサイド。グラウは24分にもディフェンスを振り切って強烈なシュートを放つが、GK高木に弾かれてゴールならず。前半は、「我々が目指す展開は、しっかり守ってカウンター攻撃」とアルディレス監督が目論んだ通りの展開となった。

　磐田は後半に入り、さらに人数をかけてゴールを狙う。中盤を完全に支配してサイドから前線に次々とクロスを放り込むのだが、ロペスと米山にことごとく弾き返され、ジリジリと時間だけが過ぎていく。後半31分には名波を下げて長身フォワード西野を投入し、パワープレーで東京Vを押し込むものの、ゴールを割ることができない。このまま東京Vが逃げ切るのだろうか…。

　しかし、磐田にはこの男がいた。中山雅史。ウォームアップをしていた中山がベンチに呼ばれると、交代の気配を感じたスタンドがざわめき始める。そして35分、中山がリーグ戦では176日ぶりにピッチに立つと、アウェー席に陣取る磐田サポーターのボルテージは最高潮に達した。流れが変わった。

　直後のCKをグラウが頭で合わせて同点にすると、その６分後には右サイドからペナルティエリアに侵入した西野のクロスが、東京Vの三浦の足に当たってゴールに吸い込まれていく。それまで苦しんだのが嘘のように、中山が入ってわずか６分で２点をもぎ取って試合をひっくり返した。

「(中山が入ってスタジアムの雰囲気が)変わった。ゴンが入って(選手たちも)エネルギーが体の中から出てきたのだろう」(柳下監督)、「中山魂。今日はそれでしょう」(名波)、「中山さんが入って空気が変わった。(東京Vは)あの雰囲気に呑まれ、隙が生まれた」(田中)─。試合後、磐田の監督・選手たちは口々に中山の存在の大きさを口にした。

　出場10分で中山が放ったシュートはゼロだったし、動きも決して本調子ではなかった。本人も「もたついている部分があった」と、久しぶりの実践に戸惑いを見せた。それでも、ピッチに立つだけで味方に力と勇気を与え、その場の雰囲気をガラリと変えてしまう。それこそがスーパースターたる所以なのだろう。そういう選手がいるか否か、雌雄を決する大事なゲームで勝敗を分けたのは、その１点に尽きると言っても過言ではない。

　しかしながら、東京Vのパフォーマンスも素晴らしかった。中盤の要である小林慶をケガで欠き、ラモンと平野も決して万全の状態ではない。結果として決定機は得点シーンの１回だけだったが、磐田の攻撃を必死に耐える守備陣の気迫のこもったプレーには感動すら覚えた。アルディレス監督も、「(選手に)これ以上求めることはできない。彼らを自分の選手として持てたことを誇りに思う」と最大級の賛辞を送った。

　勝った磐田はセカンドステージ初の首位に浮上し、敗れた東京Vは６位に後退した。明暗分かれる結果となったが、首位決戦にふさわしい白熱したゲームを演じた両チームの選手たちに、観戦したすべてのファンが感謝しているに違いない。

2003.11.17 Reported By スポマガWORLD SOCCER

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