北関東から遠方の北九州へ籍を移しても、心の距離が遠ざかることはなかった。
3−0から3−2に追い上げるも一歩及ばず。今季から北九州のゴールマウスを預かるGK武田博行は、古巣の栃木に敗れた悔しさはあったものの、無事に“グリスタ”に戻って来られたことを素直に喜んだ。
「お客さんの雰囲気が良かったし拍手もいただいて、僕自身は『ホームに帰って来られた』という思いが湧きました。凄く温かいサポーターが多かったし、やりやすかったですよ。僕等としては点を入れられてはいけなかったけど、点がたくさん入った試合だったので、観ている人は楽しめたのかなと。お互いにベストを出し切ったと思いますし」
長年、苦しめられている持病の腰痛とも上手く付き合えるようになったと言う武田。そう話す表情は、晴れ晴れとしていた。ただ、栃木の財務状況に話題が及ぶと、一転して真剣な表情になり、クラブの行く末を案じた。
「自分が在籍していたクラブだし、(動向を)ずっと気にしていたので、そういうこと(債務超過と今季の赤字など)を聞くと、寂しいというか……。支援していただける企業などがあれば、支援してもらいたいなと。クラブとして残って欲しいし、頑張ってここで踏ん張って欲しいですよね。サポーターもこんなに(この日は6671人が来場)来てくれるわけですし、こんな状況だからこそサポーターは助けてくれると思う。だからこそ、残さないといけないクラブですし、是非とも残して欲しい」
古巣が消滅する。そんな事態は考えられないし、考えたくもないはずだ。いくら戻って来たいと願っても、その場所が無くなってしまっては戻りようがない。在籍している選手が活躍できる場を確保することはもちろん、栃木を離れた選手が再び戻って来られるように、クラブを存続させなくてはならない。そのために今、やるべきこと、できることに全力を注ぐ必要がある。栃木の底力が、問われている。
以上
2013.11.15 Reported by 大塚秀毅
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