3年ぶりに1万人を超える観客が詰めかけたニンジニアスタジアム。この試合の後、日本代表に合流する遠藤保仁と今野泰幸もニンスタにやってくるとあって彼らに対する注目度も高かった一戦だったが、結果としてはその2人の役者がそろってゴールを決めて存在感を示した。特に、直接コーナーキックをゴールにねじ込み、勝負を決めた遠藤の逆転ゴールは見事というほかない。試合中に愛媛のGK秋元陽太の動きをしっかりと確認した上で、狙い通りニアサイドを破った。秋元は自らのポジショニングのミスを反省しつつ「狙ってくる遠藤選手はさすが」と脱帽。その正確な技術と駆け引きに「もっとサッカーを知らなければならない」と秋元は続けた。

ただ、先制したのは愛媛だった。序盤から、前線の選手たちはしっかりと前からプレッシャーをかけ、ボールを持たれるとブロックを作ってＧ大阪のスペースを消していった。その中で、前半11分にはＧ大阪のバックパスを加藤大が奪い、そのままドリブルでペナルティエリアまで持ち込みシュート。早い時間帯に愛媛はリードを奪う試合展開に持ち込んだ。その後もＧ大阪のゴールを目指し、愛媛は追加点を狙った。前半だけでコーナーキック7本を奪い、押し込む時間帯も作った。逆に守備面ではＧ大阪にサイドを突かれるシーンも目立ったが、最後はGK秋元を中心に体を張って守り抜いた。前半は、愛媛にとっては手ごたえを感じられた45分間。逆に前半終了時には、Ｇ大阪サポーターからブーイングも起こる展開だった。

それでも愛媛のボランチ村上巧が「Ｇ大阪は点を取られても焦っていなかった」と振り返ったように、後半に入ると完全にＧ大阪が試合の主導権を奪い返した。後半開始から投入された家長昭博が前線でボールを受けてリズムを作ると、同点ゴールが生まれたのは62分。遠藤のコーナーキックを西野貴治が頭で落とすと、今野が押し込みＧ大阪が追いついた。さらに81分には冒頭で触れたように、遠藤がコーナーキックを決めて決着がついた。その結果、Ｇ大阪は神戸を追い越しJ2では初めて首位に立った。試合後、倉田秋は「これからは2位を突き放す勢いでやりたい。（遠藤と今野には）安心して代表に行って欲しい」と語ったが、Ｇ大阪はこの試合で改めて大きな存在感を見せた2人の穴を埋められるか。その点において上位対決となる次節のホーム栃木戦（6/1＠万博）がシーズン中盤戦を占う上で重要な一戦になる。

一方の愛媛は前節の神戸戦に続いて上位相手に力の差を感じさせられる敗戦を喫してしまったが、流れの中ではミスがあってもカバーをしあい、神戸戦からチームが改善した部分も見せた。ホームでＧ大阪から先制点を奪い、接戦を演じた試合展開についてもニンスタに詰めかけた大勢の観客が評価。客席では、帰りの渋滞が気になる試合終盤、そしてアディショナルタイムになっても席を立つ姿はほとんど見られず最後までスタジアムに大きな歓声が響いていた。ただ、石丸清隆監督が「後半はやっぱり腰が引けた部分があり、まだまだやらなきゃいけないところはある」と振り返ったように、最終ラインを上げられずに失点を重ねた後半の戦い方には悔いが残る。それでも愛媛は神戸、Ｇ大阪戦の貴重な経験を糧に前に進むしかない。愛媛は次が東京Ｖ戦（6/1＠味スタ）そして札幌、京都と今後もJ1経験チームとの対戦が続くが、その1試合1試合で今度は内容とともに結果としてサポーターにその成長の跡を示していきたい。

以上

2013.05.27 Reported by 近藤義博