『TOP OF 北アルプス』第2試合目は試合前から独特の雰囲気が感じられていた。熱いくらいの好天に恵まれ、多くの富山サポーターも来松したことで“ダービーマッチ”の空気で満ちていた。しかし3-0という得点差で終了の笛の音を聞いた。
しかし、特に開始直後は90分後にそうなるとは想像出来ない内容だった。セカンドボールをしっかり拾い、ゴールへの熱意を燃やす富山が攻勢を強めるが、ここを抑えたのが今節の守備面のヒーローとなった、“守護神”野澤洋輔。好セーブを連発したことでチームは冷静さを思い出し、少しずつ流れを取り戻していくと、攻撃面のヒーローがゲームを動かす。31分、ペナルティエリア近くでボールがラインを割れそうな瞬間、岩沼俊介が身体で止める舩津徹也の一瞬の隙を突いてボールを奪うとゴール前にマイナスのパス。それを待っていた“エース”船山貴之が右足で流し込み先制に成功する。
その後もしばらく松本による攻勢が続くが、その中心にいたのが船山。ある時はサイドに流れ、またある時はラインの裏へ抜け出すなど、神出鬼没の動きで富山守備陣をかく乱。動きだけでなく、遠目からのシュートもしっかりと枠を捉えるなど、前半の45分間からこの日の好調さを感じさせていた。
1-0で折り返した後半も、ペースを握ったのはホームチーム。川鍋良祐・飯尾竜太朗、そしてパク カンイルがたびたび右サイドを起点にチャンスを作り、富山ゴールへと攻めかかる。受け身に回っていた富山・安間貴義監督は選手交替での活性化に活路を見出す。1トップの苔口卓也に替わり木本敬介を投入。ソ ヨンドクが1列上がり、西川優大と並ぶ2シャドー気味の3-4-2-1にフォーメーションもチェンジ。この木本が前線で縦横無尽に走り回ることで富山の攻撃に躍動感が生まれた。
しかし追加点のきっかけはまたも富山のミスから。舩津から國吉貴博へのパスが上手く繋がらなかったところからカウンターとなり、右サイドを駆け上がった船山が斜め45度の角度で右足を振り抜いて2点目。その6分後、「狙いに行った」船山があげたダメ押しの3点目も足助翔が塩沢勝吾との競り合いに負けてのもの。試合後、安間監督は2失点に絡んだ舩津に厳しい指摘をしたが、局面でのミスや競り負けがことごとく失点に繋がってしまった。逆を言えば松本は富山のミスから点を取った形とも言え、勝者となった反町康治監督が浮かない表情だったのもその点が理由だろう。ただ、集中を切らさずに耐えながら、ミスを逃すことなくゴールへと繋げたことも勝因。ゴールを割らせなかった野澤と2得点目の素晴らしいシュートで試合を決めた船山は攻守のヒーローとして、今季ホーム初勝利に貢献した。
もちろん輝きを放ったのはヒーローのみにあらず。前半終了間際の44分、パンチングで野澤が飛び出し、空になったゴールに朝日大輔がシュートを放つが、ここを飯田真輝が身体でシュートを止める。この1点が決まらなかったことは間違いなくゲームを動かした。また、56分にボールを右サイドで受けたパクが中央へ切り込みながら相手を切り返して左足を振り抜くまでの一連の流れは、ゴールこそ決まらなかったものの場内を熱くするのには十分すぎるプレーだった。
以上
2013.05.27 Reported by 多岐太宿
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