名古屋がダニルソンのうなりを上げる弾丸ミドルで先制した直後、心配された雨が落ち始めた。雨は次第に激しさを増し、試合前から吹き荒れた強風と相まって、屋根の付いている記者席まで大粒の雨にたたかれた。55分の大宮の同点ゴールを最後に筆者のメモも止まっているが、激しい戦いは続いていた。
前半から不穏な空気が漂っていた。強風とはいえ、一定ではない。上空では舞っているようで、落下点の予測が非常につきにくく、風下はもちろん風上でもロングボールは使いづらい。ゆえにグラウンダーのパスでつなぎたいが、それでも軌道とスピードがぶれ、互いにミスを連発してはカウンターからピンチを招いた。
その最大のものが、41分の場面。風下の名古屋は、田中マルクス闘莉王が右タッチライン近くに大きく戻したボールを楢崎正剛が処理しようと飛び出すが、思ったよりボールが流れずラファエルに奪われる。ラファエルがゴール前に走り込んだ青木拓矢にプレゼントパスを送るが、青木は直前に足をすべらせてシュートを大きく枠の上へ外してしまう。
ただし決定機は名古屋のほうが多かった。東 慶悟を前節の捻挫で欠く大宮は、カルリーニョスをトップ下に入れて上田康太を今季初のスタメン起用。上田とカルリーニョスはポジションチェンジをくり返し、青木がバランスを取る中盤は「名古屋がそれほど厳しくこなかったのもあってボールを動かせた」(上田)。しかしポゼッションはできたが、トップ下に裏をねらう意識が希薄なため、名古屋の守備にギャップを作ることができず、サイドも飛び出すことができなかった。
一方の名古屋はケネディが相変わらずの絶不調。その代わり、「ケネディ対策はどこもやってくるから、僕がバイタルでボールを受けようと意識していた」という玉田圭司が意図通りのプレーで攻撃を牽引。金崎夢生、永井謙佑らサイドを使い、前半だけで4つは決定機を迎えたが、シュートはいずれも北野貴之の正面を突いた。
今にも動きだしそうだった試合が、後半ようやく動く。48分、中盤右でカルリーニョスのコントロールミスからボールをさらった田中マルクス闘莉王が、必死に寄せる青木を引きずりながらドリブルし、中央の玉田へ。玉田の引きつけてからの落としを、ダニルソンが「ドスコーン!」と記者席まで音が聞こえた弾丸ミドルを叩き込んだ。
大宮も反撃に出る。55分、下平 匠が高い位置でインターセプトのあと、「僕からヨンチョルに直接パスをつけるより、ボランチから早い段階でヨンチョルを使いたかった」(下平)という通り、上田を経由してボールを受けたチョ ヨンチョルが右足を振り抜くと、DFの足に当たったボールがファーサイドに抜け、金久保 順が気迫のボレーで名古屋ゴールにねじ込んだ。
本格的な嵐の様相を呈してきたピッチで、両チームの選手たちは激しくぶつかり合った。気温が急激に下がり、「体が思うように動かなかった」(玉田)中で、一進一退の攻防が続く。両チームとも間延びしてカウンターの撃ち合いとなり、名古屋はフィジカルの強さと前線のスピードで大宮ゴールに迫り、大宮も切り替えの速さとカルリーニョスの展開力で応酬する。終盤、名古屋はダニエルを入れ、闘莉王を前線に上げて得意のパワープレーに出るが、大宮も深谷友基を投入してしのぎきり、試合は1‐1の引き分けで終わった。
ストイコビッチ監督が試合後、「今日のマンオブザマッチは大宮のGK」と語った通り、決定機で見れば8回:3回で名古屋の試合だった。後半の足を止めての殴り合いも、名古屋にとっては願ってもない展開。ただ互いに、すべるピッチと流れるボールからミスが多く、ミスを恐れて攻撃に100%の迫力を出せなかったことが大宮には幸いだった。
それでもこのタフな試合で勝点1を手にしたことは、大宮にとって大きな収穫だったといっていい。ここ2試合、気持ちの部分で下向きな試合を続けてきただけに、全員が戦う姿勢を見せて同点に追いつき、撃ち合い、猛攻をしのぎきったことは、勝点1以上の価値がある。
ACLを控えて消耗戦を演じたくはなかっただろう名古屋には御愁傷様というしかないが、荒れ狂う雨と風の中、ずぶ濡れになりながらスタジアムで時間を共有した選手、スタッフ、観客すべてにとって忘れ難い試合になったのは確かだ。ただ試合中は、それどころではなかったが。
以上
2012.04.01 Reported by 芥川和久
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