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初の栄冠を手にしたシーズンで、有終の美を飾ることができるか。ホームでリーグ最終節を戦う名古屋のテーマはこれしかない。優勝直後のホームゲームを落としてしまい、凱旋を勝利で報告することができなかったリーグ王者にとって、ホームで迎える今季最終戦は勝利あるのみ。相手の広島には4月にアウェイで苦い敗戦を喫しているだけに、リベンジも含めて気持ちは高ぶっていることだろう。試合終了間際に佐藤寿人のゴールで勝利をかっさらわれた８ヵ月前の試合を、今も悔やむ選手は多いからだ。
必勝を期する名古屋は、それを実践するだけの役者も揃いつつある。優勝を決めた31節で負傷し、その後の試合を欠場していた中盤の要・ダニルソンは今週の練習に復帰。同じく負傷で欠場が続いていた金崎夢生の状態も上がってきており、膝の手術で帰国したブルザノビッチを除けば、ベストの18人をピッチに登場させることもできそうだ。また、フォーメーションに新たな改良が加えられる可能性もある。前節の磐田戦で、ストイコビッチ監督は玉田圭司をトップ下に入れる４−２−３−１をテスト。これには指揮官も選手も上々の手応えを感じており、昨季４−４−２から４−３−３に変えた時のように、新フォーメーションをシーズン終盤から“慣らし運転”することも十分に考えられるのである。早くも2011年版名古屋のお披露目なるか、という視点でも、興味深い一戦となる。
広島もまた、ベストの布陣で臨むことができそうだ。こちらも高柳一誠の負傷による長期離脱が決定しているが、それ以外はほぼベストのメンバーを揃えられるはず。前節でも仙台を相手の持ち前のポゼッション力を存分に発揮しており、連係面での不安はない。特に23節からスタメン定着した李忠成の好調ぶりは際立っており、11試合で10得点と、ようやく本領発揮の感がある。先月に負傷から復帰したエース・佐藤とのコンビネーションも問題はなく、名古屋との前回対戦で見せた決勝ゴールの再現も期待できるところだ。
ともに美しいサッカーを基本コンセプトに置くチームだが、今季の戦いぶりを振り返るに、その言葉通りの展開を作り出すのは広島と思われる。名古屋も連係面の充実は感じ取れるが、より手数が少ない印象で、それはより実効的な攻撃を繰り出していることの裏返しでもある。端的に言えば、名古屋はシンプルであり、広島は崩しの局面でもっとボールタッチが多いということだ。それゆえ、名古屋の攻撃はスピーディーに、広島はゆったりとした印象を受けるかもしれない。
それでも、ひとたびスイッチが入れば緩急の差が大きいことは両チームに共通すること。役割は違えど、FWの下に位置するMFたちが、ペナルティエリア内の脅威になることも共通している。名古屋でいえば、玉田や小川佳純、中村直志といった面々が、広島は李忠成や高萩洋次郎といった選手たちがそうだ。双方ポジションの流動性が攻撃の欠かせぬスパイスとなっているチームだけに、彼らの動きはチームの浮沈を握ることになる。ケネディ、佐藤というJを代表する強力なエースの陰から飛び出す、シャドーストライカーたちに注目だ。
もうひとつ楽しみにしておきたいのが、セットプレーだ。名古屋はケネディ、田中マルクス闘莉王、増川隆洋らによるCKや直接FKもそうだが、前節で見事な直接FKを決めた小川などフリーキッカーも多彩に揃っている。右の小川、左の玉田、そして長距離砲のダニルソン。合わせる場合はマギヌンがキッカーを務めるなど、場面に応じて蹴り分ける七色のセットプレーは今一度注目しておいていい。広島は無回転のブレ球もマスターし、ヤマザキナビスコカップ決勝でも得点を決めた槙野智章のキックが必見である。
ゲームがアグレッシブな、動きのある打ち合いになることは必至。オープンな展開が予想される中で、2010年のリーグ王者としてはその貫禄を見せつける試合にしていきたいところだ。32節でできなかった凱旋勝利をやり直すことができるか。最高のシーズンを最高に締めくくるべく、名古屋はモチベーション十分に最終戦へと臨む。
以上
2010.12.02 Reported by 今井雄一朗
